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スクラム

2015-10-18 07:40:07 | 編集手帳

10月14日 編集手帳

 

 無心になれば、
余計な力が抜ける。
これがむずかしい。
鎌倉時代の説話集『沙石集』に歌がある。
〈言ハザルト見ザルト聞カザル世ニハアリ思ハザルヲバイマダ見ヌカナ〉

言わない、
見ない、
聞かない、
は口と目を閉じ、
耳をふさげば何とかなる。
「思わない」のは至難の業である、
と。
「考えるな」と言われて逆に考え込み、
「力を抜け」と言われて力み返った経験は誰にもあるだろう。

尻を突き出し、
印を結ぶ忍者のように合掌する。
その人がキックの前にする儀式は精神統一の効験あらたかであったらしい。
五郎丸歩選手(29)である。

ラグ ビーのワールドカップ・イングランド大会で世界の強豪と互角に渡り合い、
日本代表が帰国した。
余計な力を抜くにはまず有り余る力が要ると言われるが、
五郎丸選手に限らない。
猛練習を通じて“思ハザル”無心の栄光を手にした面々である。

合掌する人の心模様をうたった高田敏子さんの詩を思い出す。
〈右の手の悲 しみを/左の手がささえ/左の手の決意を/右の手がうけとめる〉(『浅草観音』)。
祈りの合掌はなるほど、
仲間と組むスクラムにどこか似ている。


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