世界

たとえツイッターが大炎上しても

たとえＡＩが人間を超えても

愛しい人よ信じてほしい

世界が変わっても

ぼくは変わらないと



たとえ暴言王が大統領になっても

たとえ難民が世界中にあふれても

愛しい人よ信じてほしい

世界が変わっても

ぼくは変わらないと



たとえ心臓のない子が生まれても

たとえ海水温が２度上がっても

愛しい人よ信じてほしい

世界が変わっても

ぼくは変わらないと



たとえ最悪のことが起こっても

たとえ太陽さえも死ぬのだとしても

愛しい人よ信じてほしい

世界が変わっても

ぼくは変わらないと

彼

そのひとはさまざまな名で呼ばれている。

仙人、じいさん、大将、先生……

本当は鈴木さんと呼ぶのが正しいらしいが、

すこしの畏敬と親しみをこめて、

僕は「彼」と呼んでいる。



彼は今日もキャンバスに向かい、

創造神の織りなす色と形を叩きつける。

彼にしか見えない、彼にしかわからないものを、

白髪を振り乱し、一心不乱に描きつづける。

それはまるで彼の血のように、

生命のほとばしりのように、

僕には見えるのだ。



そして力を出し尽くして一日が終わり、

鈴木さん消灯ですと職員が告げると、

彼は車椅子で寝床へと帰ってゆく。

なぜかはわからないが、

疲れはて、うなだれたその姿に、

僕は神々しいものすら感じるのだった。

この海も空も

この海も空も

君のすむ国へ通じているんだね

いまのところ

君と共有できるのはそれだけ



おなかいっぱい食べるのが夢だという君

勉強して医者になりたいという君は

その幼い腕で貧しい家族を支えている



やせ細った身体と美しい瞳

茶色がかった髪がよく似合うと思ったら

それは栄養不足で色が抜けているのだね



心ない人が君の匂いをかいで顔をしかめ

君に手をさしのべる者を偽善者とあざける



それでも僕は君とともにありたい

不公平きわまりないこの世界で

人生の天秤が少しでも君にかたむくのなら



僕の思いはもうすぐ届くはず

この海も空も

君と君の家族へと

つながっているのだから

きみ

すぐにわかったよ

覚えていたよ

口を尖らせうつむいて

通り過ぎたきみを確かに



そういえばこのへんに

住んでいたね

いまは名字が違うのかい？

服の好みは変わってないね



年月はきみの心も

変えたのだろうか

でも優しかったきみを

思い出さない日はなかったよ



あの頃に戻りたいとは

思わないけれど

願わくばきみの笑顔が

今もだれかを癒していることを