昨日の話と通じるところがありますが、絵画の評価も難しいものがあります。ゴッホの例を持ち出すまでもなく、生前に評価されず、死後有名になった人もたくさんいれば、逆に人気画家だったのに死後忘れ去られてしまう人もいます。
以前のブログにも書いた覚えがありますが、画廊に行くとよく“blue-chip”という表現が使われます。将来値上がり間違いのない堅実な画家や作品に対して使われる言葉です。もちろん投資目的で買う場合はそういった考え方が参考になるでしょうが、本来絵は好きかどうか、買うとすれば家に合うかどうか、といった判断が必要なはずです。音楽に置き換えても、好きでもないアーティストのレコードやメモラビリアを、投資目的で買う人はそうはいないでしょう。
そういう意味で日本では(いや、イギリスでも)殆ど知られていない画家だと思いますが、この人の絵が僕は大好きです。Vilhelm Hammershoi(Oは右上から斜線が入る独特の文字ですが表記できません)というデンマークの画家で、日本ではヴィルヘルム・ハンマースホイと表記されるようですので、以下それに倣います。ちなみに、英語の発音を無理やりカタカナにすれば、前にアクセントをつけて“ハマスォイ”と聞こえます。
ハンマースホイは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて活躍し、デンマークの画家としては唯一生前にヨーロッパ全土で認められた画家なのですが、死後はその静謐なトーンが慌ただしい時代と同調しなかったのか、忘れられた存在となってしまいます。しかし、1997年から1998年にかけて行われた、パリのオルセー美術館とNYのグッゲンハイム美術館の回顧展をきっかけとして再び注目を浴びるようになるのです。一般の人が知るようになったのはおそらくこの頃が最初でしょう。
先月末からロンドンのロイヤル・アカデミーで“THE POETRY OF SILENCE”と題された、彼の個展が始まりました。会場では作品がほぼ年代順に展示され、最初の部屋には僕の最も好きな作品のひとつ、彼の妹をモデルにした『Portrait of a Young Woman』があります。グウェン・ジョンの作品を髣髴とさせる21歳の時のこの作品で、彼は一躍脚光を浴びました。
しかし、何と言っても彼の作品を特徴付けるのは、自宅の部屋にいながら様々な角度から内部を描いた作品群でしょう。窓から射す光の繊細さや、その中に静かに佇む女性(彼の妻であるイーダです)の絵を見てフェルメールを連想する人もきっと多いと思います。展覧会のタイトルの“THE POETRY OF SILENCE”を改めて感じるのはきっとこれらの作品を見た時でしょう。
この絵の中のイーダの姿が大抵は後ろ向きで、実際に彼女が何をやっているのか分からないものが多いのですが、そこがまたミステリアスで不思議な雰囲気を醸し出します。70点足らずの作品群でしたが魅入られてしまい、たっぷり2時間近くかけての鑑賞になりました。久々に満足した展覧会でした。
日本人にも絶対受ける画風なのにと思っていたら、なんとこの展覧会自体が上野の国立西洋美術館とのコラボで実現したもので、ロンドンの後に日本に行くらしいのです。タイトルの“THE POETRY OF SILENCE”は“静かなる詩情”と訳されていました。なるほどね。
9月30日から12月7日までの開催らしいです。興味のある方は是非一度行ってみて下さい。
以前のブログにも書いた覚えがありますが、画廊に行くとよく“blue-chip”という表現が使われます。将来値上がり間違いのない堅実な画家や作品に対して使われる言葉です。もちろん投資目的で買う場合はそういった考え方が参考になるでしょうが、本来絵は好きかどうか、買うとすれば家に合うかどうか、といった判断が必要なはずです。音楽に置き換えても、好きでもないアーティストのレコードやメモラビリアを、投資目的で買う人はそうはいないでしょう。
そういう意味で日本では(いや、イギリスでも)殆ど知られていない画家だと思いますが、この人の絵が僕は大好きです。Vilhelm Hammershoi(Oは右上から斜線が入る独特の文字ですが表記できません)というデンマークの画家で、日本ではヴィルヘルム・ハンマースホイと表記されるようですので、以下それに倣います。ちなみに、英語の発音を無理やりカタカナにすれば、前にアクセントをつけて“ハマスォイ”と聞こえます。
ハンマースホイは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて活躍し、デンマークの画家としては唯一生前にヨーロッパ全土で認められた画家なのですが、死後はその静謐なトーンが慌ただしい時代と同調しなかったのか、忘れられた存在となってしまいます。しかし、1997年から1998年にかけて行われた、パリのオルセー美術館とNYのグッゲンハイム美術館の回顧展をきっかけとして再び注目を浴びるようになるのです。一般の人が知るようになったのはおそらくこの頃が最初でしょう。
先月末からロンドンのロイヤル・アカデミーで“THE POETRY OF SILENCE”と題された、彼の個展が始まりました。会場では作品がほぼ年代順に展示され、最初の部屋には僕の最も好きな作品のひとつ、彼の妹をモデルにした『Portrait of a Young Woman』があります。グウェン・ジョンの作品を髣髴とさせる21歳の時のこの作品で、彼は一躍脚光を浴びました。
しかし、何と言っても彼の作品を特徴付けるのは、自宅の部屋にいながら様々な角度から内部を描いた作品群でしょう。窓から射す光の繊細さや、その中に静かに佇む女性(彼の妻であるイーダです)の絵を見てフェルメールを連想する人もきっと多いと思います。展覧会のタイトルの“THE POETRY OF SILENCE”を改めて感じるのはきっとこれらの作品を見た時でしょう。
この絵の中のイーダの姿が大抵は後ろ向きで、実際に彼女が何をやっているのか分からないものが多いのですが、そこがまたミステリアスで不思議な雰囲気を醸し出します。70点足らずの作品群でしたが魅入られてしまい、たっぷり2時間近くかけての鑑賞になりました。久々に満足した展覧会でした。
日本人にも絶対受ける画風なのにと思っていたら、なんとこの展覧会自体が上野の国立西洋美術館とのコラボで実現したもので、ロンドンの後に日本に行くらしいのです。タイトルの“THE POETRY OF SILENCE”は“静かなる詩情”と訳されていました。なるほどね。
9月30日から12月7日までの開催らしいです。興味のある方は是非一度行ってみて下さい。