MITでは、1980年から1990年の10年間、アテナプロジェクトを実施した。
来るべき時代に必要な、コンピュータ(主としてパーソナルコンピュータ)の要件を具体的に模索した。
個人が使うコンピュータには、視覚情報、聴覚情報が特に重要であるとの認識から、多くのマルチメディア対応のシステムが開発された。今ではビデオ編集等で使われる、ビデオボードも試作されていた。パララックスク社に依頼し、試作したビデオボードのお値段は、軽く10,000$を超えていた。おそらく今では、同等の値段のビデオボードは数千円で買えるだろう。
アテナプロジェクトは実は、IBM社とDEC社、両社から10年間で約2,000億円の資金の拠出をうけていた。
その関係もあり、当初からマルチメディア関連の機器の試作、開発がなされていた。筆者が滞在中に拝見したシステムは、語学学習用のシステム(フランス語学習システム)だった。レーザーディスク(パイオニア製)を使って、音と画像を効果的に使った語学システムであったが、市販はされなかった。今でいうコンテンツ作成がひとつのネックとなっており、シナリオ作成から、実際のシステムの作成までの工程が、かなり煩雑な印象だった。
MITといえば、ネグロポンテ教授の始めた、メディアラボが有名だ。1985年の設立である。このメディアラボは各国の情報産業からの出資を募っていたが、当初50社のなかの約半分近くが日本企業であった。そこでは、科学とアートの融合が深く研究されていた。かれは、現在、発展途上国の子供たちのために、100ドルノートPCプロジェクトを立ち上げている。
今あるコンピュータの原型が約2,30年前のアテナプロジェクトで既に模索されていたと言う事実に、注目したい。
それから、四半世紀を経て、IBM社はもはや独自OSを捨て、Linuxに統一されている。そしてDEC社は既に無く、事実上かつてのライバルメーカーのHPに吸収合併されてしまった。
盛者必衰の理。