ボストンにあるMIT(マサチューセッツ工科大学)はアメリカを代表する名門理系大学である。今年の入学者は1550名、志願者はやく19,000名。入学率73%でこれは過去最高という。MITでも辞退者が27%ある。名門大学でも優秀な学生獲得にしのぎを削っていることがうかがい知れる。
かれこれ10年ほど前、勤務校の在校生から「MIT留学」の相談を受けた。個別試験があるわけではなく、大学が指定する適性検査を受け、さらに書類審査をパスすれば、面接試験がある。適性検査はMITの場合、SATではなくSATⅡの数学と物理、それにライティング(もちろん英文)、TOEFLは300点満点で250点がボーダー(?)
指導した生徒は、インターネットでSATⅡの数学、物理の過去問と予想模擬試験のテキストを購入し、準備をした。
レベルは、はっきり言って、相当高い。数学の微分積分は大学の教養程度は出来て当たり前、ベクトル、行列も大学教養レベルであった。物理にいたっては、日本と異なり「糸の重さ」も考慮するところが特徴的で、より現実に即した知識、処理能力を要する出題だった。自分で解いて分からない問題は質問に来るように伝えた。10分休みに、問題集を解いて疑問のあるところ、分からないところを持ってくる。勿論問題文、解説文はすべて英語。数学はともかく物理は少し閉口したが、すばやく状況を読み取り、解説文に目を通し、即席の解説を試みる。お互い時間がないところをやりくりして何とかSATⅡを受験。結果は数学、物理は満点、ライティング得点率68%、TOEFL258点で書類審査はパス。面接は面接官が日本に来て、ホテルで2時間インタビュ^-を受ける。MIT卒業の中国系アメリカ人が面接官だった。結果は惜しいところで合格を逸する。「ささいなことでもよいから、何らかの社会活動をしていればよかったです。」とのコメントを頂いた。彼はそれにめげず、情報系では全米トップ10に入る、フロリダ州立大学工学部に合格。抜群の生成期で主席卒業し、MITの大学院に学び、IT系の国際弁護士として急がしい日々を送っている。
MITのような超一流大学を日本の高校生が狙うのはリスキーだが、アメリカの一般の大学で1番になり、推薦でMITとかStanfordに大学院から入るのは現実的だと思います。勉学だけではなく、ボランティアを含めた社会活動の経験の有無が、名門大学合格の一つのキーポイントではないかと思います。
最近、都内の進学塾や、一部私立中高一貫校の進路指導で、海外の名門大学を狙わせ始めているといいます。それが東大合格者の中の辞退者増加と重なっているようです。東大学長の最近の焦りはこのあたりにあるのでしょうか。