おれは、土門拳になる。第2章 写真家増浦行仁公式ブログ

写真家<増浦行仁>のオフィシャルブログ。
志を追い続けた増浦が「夢を追う」こととは何かを本音で語る。

三度目の熊野

2012年04月20日 | 写真のこと
僕が初めて熊野本宮大社を訪れたのは、10年前の元旦だった。
丁度ミケランジェロ作品集『GENESIS』の凱旋展が、東京都写真美術館で催された年だ。フランス、イタリアと主にヨーロッパを拠点に撮影して来た僕が、ローマの教会で“奇跡の光”に出会ってから、日本のルーツに惹かれるようになったのだ。

大阪から特急で新宮まで4時間弱、そこからバスにゆられて更に1時間。
熊野川と新宮川沿いの道は風光明媚で、途中に温泉町もあり、
情緒豊かなものだった。都会の喧噪を忘れて、僕は小旅行を楽しんだ。
しかしながら昨年、この豊かな自然に囲まれた町が台風による大洪水で一変してしまった。土砂にのまれて沢山の尊い命が失われた。



今年、熊野本宮大社では、「正遷座百二十年大祭」が斎行される。
まさに120年ぶりに遷宮が催されるのだ。災害で亡くなった人の御霊の鎮魂と日本の再生、世界平和、自然の安泰、人類の平和を願い「日本再生~神仏の祈り~」と位置づけられている。
4月9日、その本殿遷座祭が行われた。
僕は、出雲大社のご縁で、そのお祭りを撮影させていただくこととなった。
星降り注ぐ浄夜、荘厳な儀式にのっとってご神体がご本殿に遷された。
僕は特別にご本殿の間近で撮影させていただいた。写真を撮りながら、この素晴らしい機会を与えてくださった万物に感謝していた。そして、今、自分がこの場にいることに不思議な運命を感じていた。

最初に訪れた時は、鳥居より奥には入らなかった。何故だか、まだ許されないように感じたのだ。二度目は、「いのちの響き」というTV番組の収録時。そして三度目が今回だった。

大地震に大洪水、時として自然は大きな牙を剥いて僕たちを襲う。
だからこそ、僕たちの祖先は、自然の中に神を見いだし、畏れ敬って来たのだ。
自然と共存、共生する為に。
そして僕はそれを伝える為にシャッターを切る。


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