おれは、土門拳になる。第2章 写真家増浦行仁公式ブログ

写真家<増浦行仁>のオフィシャルブログ。
志を追い続けた増浦が「夢を追う」こととは何かを本音で語る。

悲しい贈り物

2012年01月10日 | メッセージ
明けましておめでとうございます。
今年は辰年、龍のごとくてっぺん目指して頑張りたいと思っている。

が、新年早々こんなタイトルでごめんなさい。
今年、僕にとって大切な歴史が一つ幕を降ろした。

以前にもブログで書いた事があるが、僕がまだカメラ小僧だったころ、初めてライカの本物を手に持たせてくださったのがライカ専門店として御堂筋にお店を構えていらした株式会社サンエスの社長夫人(現社長)だった。
僕のライカとの付き合いは、ここから始まったのだ。
今ではライカカメラジャパン株式会社から協賛をいただくまでになっている。
実際僕ほどライカを愛し、実務でも使っている写真家は数が少ないと思う。
そのサンエスさんが、今年の1月9日に直営店を閉めたのだ。
最終日に、お花を持ってご挨拶に伺った。
社長のご高齢と跡継ぎがいないということで、閉める事は聞いていたのだが、いざ社長の顔を見ると感慨深くて言葉に詰まってしまった。

社長から、どうしても僕にもらってほしいと渡されたものがある。何と新品に近いフォコマートICを使ってほしいというのだ。




新品同様のフォコマートIC

既に僕の暗室には、フォコマートのIC、IICが鎮座している。世界中を探し、苦労してやっと手に入れたものだ。その時の喜びは今でも忘れていない。
だが・・・今日事務所に持ち帰った新品同様のこのフォコマートは、社長の寂しそうな顔やサンエスさんとの思い出が詰まっているようで、正直、気が重かった。
何か僕にできる事は無かったのかと、悔やむばかりだ・・・
社長との出会いの場面が何度も脳裏に浮かぶ。

前社長がお亡くなりになってから女手一つで、会社を支えてきた社長。
聞けば、嫁いだ頃はカメラの知識なんて全くなかったという。そんな社長が一生懸命勉強して、名店であるサンエスさんを支えて来た。

僕は、このフォコマートをサンエスさんの記念碑として、次の世代に継承して行きたいと考えている。

“お母さん(社長のことを僕はこう読んでいる)、ありがとう!”