MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

誤解されるブラームス

2010-10-04 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/04 私の音楽仲間 (215) ~ 私の室内楽仲間たち (189)

            誤解されるブラームス



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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               誤解されるブラームス
                 一途なアガーテ
                 月明かりの歌声
             音符でどこまで表現できるか
                 急いては事を…
                   嘆きと破局
                 自虐的なトリオ
                 悲しみは尽きず
                 愛~悔恨と情熱
               化粧を排したブラームス
                 ホ短調のアガ―テ




 ブラームス弦楽六重奏曲第2番ト長調 作品36を解説
したサイトには、以下の記述がありました。
 (前回ご覧いただいたのと同じ一節です。)




  ブラームスは、恋人のアガーテから別離を告げられた。 後に
  作曲家は、「この六重奏曲の創作により、自分は最後の恋から
  解放された」と語ったと伝えられる。


  その信憑性の根拠として考えられるのは、アガーテ (Agathe) の
  名前がドイツ語読みで、音の形として記されているからだ。


  しかし、ブラームス自身はこの音型について何も語っていないし、
  それを裏付ける証拠は何も無い。 また、作曲時期との間には
  4~5年のずれがある。


  結局、"恋愛の破局" と "曲の成立" との関連は不明である。




 「ドイツ語の音名で "Aga(t)he" が記されている」という
この説に対して、貴方はどう思われますか?




 以下は、ネット検索で見かけた、様々な感想、意見です。
(いずれも、上記の内容を一応肯定した上でのものです。)




 「婚約者アガーテ・フォン・ジーボルトとの結婚に失敗。」

  ただし、プラームスが「結婚を望んだのに一方的に振られた」のでは
 なく、破局の原因はむしろ彼にあるようなのです。





 「これは、彼女を追想してのことだと言われている。」

  単なる "回顧" という意味なのかな?




 「彼女に対する "想い" を拭い去ることができず
この六重奏曲を捧げたということらしい。」

  この曲は誰にも献呈されていません。 もちろんアガ―テにも。




 「アガーテの名を三度も呼び起こしているのです。
なんとロマンティックな!!!」

  これは女性の感想でしょうか。 でも、三度も、誰に向かって?




 「楽しかった思い出や、別れたために負った心の傷と苦悩
からの解放を表そうとした、ロマンティックな作品です。」

 それにしては、地味な印象を受けることが多い、この曲です。
 逸話は確かにロマンティックですが…。





 「失恋の痛手を癒すために書いたのがこの曲…という訳。
音楽で彼女に呼びかけた…と言う訳なのです。」

  今や幻となったアガーテにかな…?




 「失恋した相手の名前を音型化したらしい。 "アガーテ音型"
として有名とのこと。 つまり、彼女の名前を音化したわけです。」

 「うーむ、やるなーブラームス(笑)。 失恋した相手の名前を
永遠に楽曲に閉じこめる
のは未練がましい気もするし、なんと
なく引いてしまうような青臭さもあるのだけれど、個人的には、
こういう隠しワザ好きです。 暗号に似ていて楽しい。」

  謎解きには違いありませんが…。




 「ブラームスはこの女性に振られてしまった10年後、弦楽
六重奏曲第2番の中で彼女の名前--AGATHE--を何度も
登場させ、憂さを晴らす。 何ともしつこく、陰湿である。」

  今で言うストーカー? 正確には6年余です。




 色々な見方、感じ方があるものですね。




 もしブラームスが、「この六重奏曲の創作により、自分は
最後の恋から解放された」と本当に語ったとしたら…。

 彼はどういう意味で "解放された" のでしょうか?




 そして、もし "AGATHE" の音型を意識していたのなら…。



 それは "名前を永遠に楽曲に閉じこめ"、自己のものとして
封印するためなのでしょうか? 未練がましく…。

 また、憂さ晴らしに、何度もしつこく、陰湿に!




 もちろん彼とて人間。 悩める弱い存在だったかもしれません。



 でも彼は作曲家のプロです。 それもとびきり天才の。

 相手の名前を閉じ込めて満足し、そのことによって解放される
ようなブラームスとは思えないのですが…。




 [譜例 ]は前回もご覧いただいた第楽章の冒頭で、
今度は "塗絵遊び" をした後のものです。

 [譜例 ]は "AGATHE 音型" です。

 [譜例 ]は新しいもので、第楽章の冒頭です。



 また塗絵が。 よく見ると、も塗った箇所がありますね。




  [譜例






  [譜例

     




  [譜例






 [音源ページ



 うち、[第Ⅱ楽章の音源]

  [SummerFest 2007

  [Members of the Stamic and Zemlinsky Quartets

  [Pina Carmirelli, Jon Toth, Philipp Naegele, Caroline Levine,
   Fortunato Arico, Dorothy Reichenberger





  (続く)