10/29 私の音楽仲間 (228) ~ 私の室内楽仲間たち (202)
なぜか Elegant な人たち
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秋のカリ
10月に入ると、さすがの暑さもやっと治まり、
その日はついにやってきました。
メンバーは、Violin が私、Mさん、Viola Oさん、
チェロ Suさんです。
「作品82-Vn Sonata、83-SQ、84-Pf5、85-Cello Concerto、
と続く晩年の一連の作品群の一つです。 今、正に待ち焦がれる
秋の気配が何となく感じられるような雰囲気が大好きなのです。」
一緒に音を出してみて、なるほど、Suさんの言うとおりでした。
エルガーが61歳の年に完成したこの弦楽四重奏曲は、まさに
"秋" を感じさせる曲なのです。
そう聞こえる要素の一つは、"ホ短調" という調性でしょう。
エルガ―は、この調をとても好んでいて、上記の作品群
を見ても、82、83、85 の3曲がホ短調です (84 はイ短調)。
そう言えば、弦楽セレナード (作品20) も、エニグマ変奏曲
(作品36) もこの調でした。
第Ⅰ楽章は Allegro moderato、ホ短調。 拍子は12/8拍子
が基本で、歌いつつ、微妙に揺れ動きます。
そして楽譜には、様々な指示が書かれています。
"Espressivo' (表情豊かに)、"dolce" (優しく、そっと)、"con fuoco"
(烈火の如く)、"appassionato" (熱烈に、情熱的に)。
楽章の終わりには "con fuoco"、"sostenuto" (伸びやかな音で)
と記された "f" (フォルテ) がありますが、その直前には "ff"、
"nobilmente" と書かれた部分があるのが印象的です。
これは直訳すれば「高貴な、崇高な、気高い、雄大なフォルティ
シモで!」となります。 せせこましく、力で押したりしてはいけない
のでしょう。 まさにイギリス的で、気品のある表現です。
第Ⅱ楽章はハ長調、3/8拍子で、"piacevole (Poco andante)"
と書かれています。
"Piacevole" の言葉どおりの意味は "愉快な気分で" です。
また一方で、"可愛く、愛らしく"、さらには、"気楽に" (at home)
と解釈することも可能です。
曲が最高潮に達する箇所では "ff" も見られます。 しかし
全体としては、静かで落ち着いた喜びが支配しています。
"Dolce"、"dolcissiomo"、"espressivo" の指示が随所に
見られます。
この楽章は、エルガ―夫人 (Caroline Alice Elgar) が大変
好んだので、その葬式の際にも演奏されたと言われます。
それは1920年で、曲の完成 (1918年)、初演 (1919年) と続いた
後のことでした。
楽章の最後では、どの楽器も弱音器を着けるよう、指定され
ています。 "morendo" (息絶えつつ、消え入るように) と記されており、
高音の Vn.Ⅰが、いつのまにかいなくなります。
あとには、温かいハ長調の響きが残ったかと思うと、やがて
それも静かに消え去ります。
第Ⅲ楽章の FINALE は、ホ短調、Allegro molto。 もっとも
活気のある楽章です。
最後はホ長調で終わりますが、決して明るい音楽とは言えず、
どこか中途半端な気分のうちに終止符が打たれます。
全体は多彩な表情を持つ各部分から成り、次のように様々な
指示があります。
"Risoluto" (決然と)、"brillante" (華やかに、きらびやかに、鮮やかに)、
"appassionato"、"dolce"、"espressivo"、"teneramente" (大切
に、優しく、いとおしんで)、"con passione" (情熱的に)、"con fuoco"。
今回は、メンバーが全員とも、この曲は初体験でした。
翌日、チェロの Suさんからメールが来ました。
「エルガー、面白かったです、楽しめました。 個人的には
問題山積でしたが、もう少し追求してみたいと思いました。
また挑戦させて下さい。」
Viola の Oさんは、参加が決まるなり、さっそく音源まで
購入された方です。
「こんなに良い曲とも一生巡り合っていなかったかもしれ
ません。 またちょっと時間をおいてやってみたいですね。
Suさんにお声をかけていただいたお陰です。」
Violin の Mさんは、物静かで控えめながら、気遣いに
満ちた方。 全体を支えてくれた功労者で、エルガ―の
研究にも造詣が深いようです。
私は…。 スコアに目は通したというものの、自分のこと
で手一杯。 全体を把握して臨んだとは、とても言えない
有様でした。 反省点の多い張本人…。 挽回の機会は
与えられるでしょうか?
(この項終わり)
[音源ページ] (前回と同じです。)
ただし、以下の1種類しかありません (2010/10/26 現在)。
[第Ⅰ楽章 Allegro moderato]
[第Ⅱ楽章 最後の部分の演奏例]