MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

愛~悔恨と情熱

2012-09-06 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

09/06 私の音楽仲間 (421) ~ 私の室内楽仲間たち (394)

              愛~悔恨と情熱



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                 一途なアガーテ
                 月明かりの歌声
             音符でどこまで表現できるか
                 急いては事を…
                   嘆きと破局
                 自虐的なトリオ
                 悲しみは尽きず
                 愛~悔恨と情熱
               化粧を排したブラームス
                 ホ短調のアガ―テ




 ブラームスの弦楽六重奏曲第2番、その第Ⅲ楽章は、
Adagio で始まります。

 [譜例 ]はその冒頭で、すでに何度かご覧いただいた
ものです。



 ここでも、“アガ―テ音型” に由来すると思われるモティーフ
が、いくつか見られます。

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 Vn.Ⅱは、下降する半音階を何度も奏でますが、これは
第Ⅰ楽章の “嘆き” を感じさせます。

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 この悲しい調べが一区切り着くと、13小節目からは、次の
[譜例 ]の音楽が始まります。



 Vn.Ⅰ、Va.Ⅰは、半音の嘆きをオクターヴで奏でます。

 Vc.Ⅰがリードする音形は、上の[譜例 ]で Vn.Ⅰが
“molto espressivo” で歌っていた形です。







 そして新たに加わるのは、Vc.Ⅱのリズムです。 しばらく
すると、Vn.Ⅱ、Va.Ⅱも、同じリズムで、2拍目から応えます。

                     ↑
 今回の演奏例の音源]は、[譜例 ]の2小節前から
始まり、次の[譜例 ]の終り近くまで続きます。

     [譜例 ]、[譜例 ]の間には6小節あります。
             ↓





 ここでは3つの八分音符が、半音四・五度で上下を繰り返し
ます。 全体から聞える和声進行は、私には、まるで心の軋む
ような苦い響きに聞えます。




 さて[譜例 ]では、新しいリズムが登場しました。

 “鈍い三連符” ですが、後には、休符を挟んだ “八分音符 +
十六分音符” に変わり、重要な役割を果たすことになります。



 このチェロのリズムからは、私はある曲を連想して
しまうのです…。 それは、『月光』ソナタとしても知ら
れる、Beethoven の ピアノソナタです。

 ただしこれは、私の思い付きに過ぎず、なんの根拠
もありません。 愚かな私は、月明かりの歌声などと
いう記事まで書いてしまったのですが…。



 上の解説サイトには、こう記されています。

 「“月光” という標題は作曲者の意図するところではなく、
ベートーヴェンの死後、1832年にルートヴィヒ・レルシュタ
ープが第1楽章について “ルツェルン湖の月光の波に
揺らぐ小舟のよう” とコメントしたことに由来する。」



 ブラームスが生まれたのは、翌1833年。 “Mondschein-
sonate” (Moonlight Sonata) の通称は有名なはずなので、
「彼がこれを知らない」…ということだけは、少なくとも考え
られません。



 ただし、“盲目の少女”…なる逸話は、おそらく我が国に
おける創作でしょう。 こちらは “根拠ゼロ” です。

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 お聞きいただいた、拙い音源。 記事、急いては事を…以来、
同じメンバーによるものです。

 第Ⅰ、第Ⅱ楽章は、辛うじて2回ほど通すことが出来ました。
でも今回の楽章は一度だけ。 音源は、その際のものです。



 私が拙いのはお叱りいただくとして、愛好家の方々は違い
ます。 日頃は、音源やスコアで親しんでいるだけでしょう。
いざ、パート譜を前にして、見ず知らずのメンバーから圧力
をかけられれば、面食らってしまって当然…。



 …それでも、「これだけ集中して演奏する」…
のが、いかに大変なことか…。

 もちろん、“曲に対する愛、音楽に対する愛”
に支えられてのことです。



 これに対して、通常は “譜面から入る” ことだけ
しかしないのが、私たち。

 みなさんから、“曲に対する知識” 以上に刺激を
受けているのが、この “愛” なのです。




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