MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

Mozart の2倍?

2010-10-25 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/25 私の音楽仲間 (224) ~ 私の室内楽仲間たち (198)

              Mozart の2倍?




   この集いは、すでに何度かお読みいただいているグループです。

         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 フランツ・クサーヴァ・リヒター (Franz Xaver Richter)
の作品をお聞きになったことがあるでしょうか? 私は
恥ずかしながら、これまでありませんでした。

 販売されている音源を検索すると、交響曲、協奏曲、
弦楽四重奏曲などが見つかるようです。 バロックの
伝統である対位法を引き継ぎながらも、メロディーが
美しいのは、歌手としても活躍したからでしょうか。



 生没年は1709年12月1日~1789年9月12日 (ストラス
ブール
歿)
ですから、当時としては長命。 1809年に77歳
で亡くなったハイドンとは、年齢的にも20年ほどの差が
あります。

 1791年には Mozart が亡くなっていますから、時代的
にも変化の多い時期を生きたことになりますね。




 生まれはモラヴィアと言われていますが、生年月日の
記録は残っていません。 すべて就職時、死亡時の書類
に残された資料が唯一のもので、ボヘミア系、あるいは
ハンガリー系という説もあります。

 チェコ風に "フランティシェク"、あるいはフランス語で
"フランソワ・ハヴィエル" と呼ばれることもありますが、
生まれたときからドイツ語を話す環境に育ったようです。

 30歳までの状況はほとんど知られていませんが、
オーストリアで青年時代を過ごしたものと思われます。



 歌手、Violin奏者、作曲家、指揮者、理論家…と多彩な顔
を持ちますが、のちに対位法の大家として認められます。
どこかで修業時代を送ったに違いありませんが、「ヴィーン
ヨーハン・ヨーゼフ・フックスについたのではないか」とも
言われています。

 楽譜を丸めて指揮をした、最初期の指揮者のようで、その
レリーフ
が残っているそうです。




 1740年に南ドイツのケムプテンの宮廷に、リヒターは副楽長と
して務めます。

 ここの修道院には、15~20名程度の小さなオーケストラがあり
ました。 管楽器にはオーボエ、ホルンもいたようですが、この
時期の作品には "弦楽のための交響曲" があり、1744年に12
曲がパリで出版されています。




 次の活躍場所はマンハイムです。 1746年、最初はバス歌手
として登場し、翌年には歌手、宮廷作曲家として仕官することに
なります。

 このマンハイムは音楽史の上でも重要な地で、このリヒタ―
マンハイム楽派の一員とされています。




 60歳の年、1769年になると、ストラスブール大聖堂の楽長と
なります。 これ以後は、オラトリオミサモテットなど、宗教
作品が多く見られます。



 1778年、Mozart がパリからの帰途、彼を訪問します。 父親の
レオポルトに連れられてマンハイムで会ったときには、まだ7歳
だったヴォルフガング。 すでに22歳になっており、母を亡くした
直後のことでした。

 この頃のリヒタ―は78~79歳。 その作品の価値は認めながら
も、青年 Mozart はこんな風に父親に報告しています。

 「量は半減したようですが、相変わらずアル中気味です。」



 リヒタ―は翌年、任地ストラスブールで亡くなりました。




 リヒターは、バロックの伝統、対位法を重視しただけではあり
ません。 教会音楽の分野と並んで光るのは、歌に満ちた器楽
作品。 交響曲は80、またフルート、オーボエ、ホルンの協奏曲
があり、特にトランペットのものが有名だそうです。



 今回私が接したのは、そのうちの弦楽四重奏曲で、調達し
てもらった楽譜には "Nr.1 C-Dur Op.5" とあります。 これ
は "Breitkopf & Härtels" 版で、"Kammermusik-Bibliothek
Nr.1902" と印刷されています。

 しかし、この場でも何度かご紹介している[ペトルッチ楽譜
ライブラリー
]の該当ページに見られる "Op.5-1" は、これと
は違う曲でした。 調もト長調です。

 このサイトは、主に版権切れの楽譜がアップされているから
でしょうか? 事情に詳しい方が居られましたら、ぜひご教示
ください。




 最後になりましたが、今回のメンバーは Violin が私、.さん、
Viola Sa.さん、チェロ Si.さんでした。

 この曲、U.さんも Sa.さんも何度か弾いた経験がある
らしく、また Si.さんもリヒタ―についてはよくご存知でした。



 今回も収穫。 またしてもいい勉強になりました。




 ところで、今回のタイトルには "Mozart の2倍?"
と書いてありますね。 これ、何のことでしょうか?



 まず寿命。 Mozart 35年、Richter は約80年。

 それから交響曲の数。 約40 と、約80。



 最後に、アルコールの量?

 これは判るはずがありませんよね。 いい加減な
想像をしてしまいました…。






 音源です。



   [Franz Xaver Richter]音源ページ

   [弦楽四重奏曲 ハ長調 第Ⅰ楽章]音源ページ