MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

音に託して?

2010-10-03 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

10/03 私の音楽仲間 (214) ~ 私の室内楽仲間たち (188)

              音に託して?



         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



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                 悲しみは尽きず
                 愛~悔恨と情熱
               化粧を排したブラームス
                 ホ短調のアガ―テ




 私の今日の午後は、これから2曲の弦楽六重奏曲を演奏する
ことになります。



 前回は、私にとって五重奏が2曲。 10人が集まり、2部屋に
分れての室内楽でした。

 ところが今回はこの6人だけです。



 ここは、東京都内のある公共施設。 色々な団体が同じ日に
使用を申請すると、当然抽選になります。 ですから、私たちが
いつも2部屋を使えるとは限りません。

 いや、それどころか、「1部屋も当らない」ことさえ珍しくありま
せん。 そんなときはキャンセル待ちをして、やっと確保できる
かどうかです。

 もちろん、私たちのお世話係の Sa.さんの労力の賜です。



 音楽団体に限らず、利用者のための優良施設が少しでも
増えるよう、願うものです。




 メンバーの紹介です。 Violin が私、F.さん、Viola が Sa.さん
N.さん、チェロが A.さんSi.さんです。



 .さんは、この集まりに始めて参加されます。 これまでは主に
オーケストラでの活動が多かったのですが、さあ、初の六重奏、
どうなるでしょうか?



 .さんは、この場には何度も参加しておられる方です。 しかし
私がご一緒するのは初めて。 (顔を合わせても) "すれ違い" という
ことさえ、これまでまったくありませんでした。

 「もっともっとチェロを弾きたい!」と言っておられましたが、
お仕事の忙しさが許しません。 そう言えばこの日は土曜日。
"室内楽満喫の日" になればいいのですが。




 最初の曲はブラームスの作品。 弦楽六重奏曲第2番
ト長調 作品36
です。

 2曲の弦楽六重奏曲が残されていますが、第1番よりは
幾分地味かもしれません。



 しかし、この曲で格好の話題になるのが、アガ―テという
女性です。 上記のサイトにも、いわゆる "アガ―テ音型"
として記されており、要約すると以下のようになります。



  ブラームスは、恋人のアガーテから別離を告げられた。 後に
  作曲家は、「この六重奏曲の創作により、自分は最後の恋から
  解放された」と語ったと伝えられる。


  その信憑性の根拠として考えられるのは、アガーテ (Agathe)
  の名前がドイツ語読みで、音の形として記されているからだ。


  しかし、ブラームス自身はこの音型について何も語っていないし、
  それを裏付ける証拠は何も無い。 また、作曲時期との間には
  4~5年のずれがある。


  結局、"恋愛の破局" と "曲の成立" との関連は不明である。




 さて、貴方はどうお考えになりますか?




 ちなみにその音型は次のようなもので、第Ⅰ楽章が始まって
間もなく、ViolinⅠ、ViolaⅠの高音域に現われます。



    



 "La-Sol-La-Si-Mi"、ドイツ語で "Aga(t)he" と言う音の
形が聞かれます。 3回も連続して。



 再現部ではやはり3回、5度下で登場します。 しかし直後
に、"A" の音で始まる形でもう一度繰り返されます。 これは
調性の関係からそうなるのですが、実にうまく出来ています。

 なお "t" は "d" として扱われ、Vn.Ⅱなどで "Re" の音が
同時に演奏されます。




 この第Ⅰ楽章は、次のように始まります。







 ViolaⅠが "Sol-Fa#-Sol-Fa#-Sol-Fa#" と、何やら不思議
な形をしていますね。 この形、あるいはこれに似た動きは、
第Ⅰ楽章を通じて「絶えず聞こえる」と言っても間違いでは
ありません。

 まるで固定観念のように。



  (続く)



  [音源ページ



      第Ⅰ楽章冒頭の演奏例]

    最初の音量が大き過ぎることがあります