飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

鏡花幻想譚への接近#14・・・「夜叉ケ池」

2008-08-05 | 泉鏡花
「夜叉ケ池」

このところうだるような暑い日が続いている。

「夜叉ケ池」の琴弾谷も同じように暑く日照りが続いたのだろうか。村人らは行動を起こす。絶対絶命の日照りには、雨乞の犠牲が必要だと。その儀式とはすこぶるエロティックなものだ。つまり、村一番の美女を取って裸体に剥き、黒牛の背に、鞍置かず、荒縄に縛める。そして、背に裸身の美女を乗せたまま、池のほとりで牛を屠って、頭と尾は供え、肉は冷酒とともに食する、というもの。

そんなには泉鏡花の作品は読んではいないので特徴とは言えないのだろうが、彼の作品には、それまでの流れにメリハリをつけるかのように、フッと頭の中に入ってきてイメージ化しやすいエロティックな場面が挿入される印象がある。この「夜叉ケ池」でも、この裸体の女性による雨乞いの儀式こそ、話の流れをより強度の強いものにさせるような効果と暴力的で独善的なエロスがあるように思える。それが挿入されることによりボクは、この百合という女性が一層美しく魅力的なオーラを出しているんだろうと想像を膨らますし、続く晃の行動が光ってくると感じるのだ。

かつて、そういった類いの儀式が存在したのかわからないが、見方を変えれば、この雨乞いが酒の肴としても女性の裸体という側面を持っているものなのになっているのである。(もっと言ってしまえば何年かに一度の贅沢をきわめる夏祭りの特別版でもあるような)それは儀式の名に変えた男の欲望の視線の具現化ではないのか。そして、「夜叉ケ池」の竜神・白雪姫についても実はかつて人であり、その雨乞いの儀式の犠牲になった処女で、恥ずかしさから自殺した女が変化したものであることが晃の発言からわかってくる。

そこにおいて岩波文庫の解説で、ボクが博学で聡明、尊敬し憧れる澁澤龍彦が、“結局のところ白雪姫と百合とは、ただクロノロジックに前後しているだけの、相似形のような存在”と明快に分析しているように、読者は、百合~白雪姫のラインがそこで結ばれることになり、澁澤が指摘するように鏡花の世界は“循環”しているということになるわけだ。

そしてそれが物語の中で明かされるきっかけは、雨乞いという抗うことができない大いなる自然に対する畏怖の行為であるも、人はどこでどうボタンを掛け違えたのか、一方で(歌舞伎座で上演された「夜叉ケ池」観劇の感想にも書いたように)思い込みで環境を破壊しながら、また一方で男の欲望の視線を全開させようとしているのだ。だって竜神である白雪姫は百合の裸体を見て雨を降らそうと思うのであろうか?そうは思えないもんな。


写真をクリックすると先日歌舞伎座で観た
「夜叉ケ池」の観劇感想の記事へ飛びます。

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2 コメント

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玉三郎の美 (あべまつ)
2008-08-05 22:41:16
こんばんは。
去年この「夜叉ヶ池」と「海神別荘」を見ました。鏡花の美と玉三郎が紡ぎ出す美がシンクロして、黄泉の国ファンタジースペクタルでした。
神にエロスを捧げる事の自然さとエロスの呪縛が怒濤の波間に見え隠れ。
エロスへの呪縛はいつの世も芸術へかき立てるのでしょうか?などと思う反面、玉三郎のビジュアルにそんなことはどうでもいい、美しいものは美しいと思うのです。
春猿、遠目で見ると玉様の継承者に見えました。NHKハイビジョンでも土曜日に特集があり、私の頭の中は、玉三郎が占領しています。
鏡花の記事を楽しみにします。
久しぶりに鏡花を読みたくなりました。
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私も玉三郎の (飾釦)
2008-08-05 22:56:22
番組を見ました。あべまつさん同様に私の頭の中に玉三郎が占領し始めています。一体、玉三郎の存在感はなんなんでしょう。番組を見ていて(プロフェッショナル再放送)、玉三郎は打ち上げも参加せずに真っ直ぐ家に帰り、体のメンテナンスを徹底。以前同じ番組で紹介されたイチローと同じようなストイックさを感じました。それに比べると私などとことんだらしないです。

なぜか、あべまつさんのコメントに勇気をいただきました。感謝です!
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