飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

気ままに新書NO.26・・「荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論」荒木飛呂彦(集英社新書)を読む

2013-07-18 | 新書(読書)

荒木飛呂彦氏によるホラー映画に関する新書です。私は荒木氏が著名な漫画家とは知らずに購入しました。そこには彼の映画鑑賞史からくる体感的ホラー映画論が書かれているなあと感じたのですが、プロフィールを見るとほぼ私と同世代であることがわかりました(一歳違い)。なぜ本を読んでいて近しい世代と思ったか?体感的と先ほど書いたように荒木氏の内容が変なところで私と近い体験をしているように感じたからです。

 

約30年程前、当時18歳だった私は彼女とホラー映画(ゾンビ系)を見に行きました。でその後はホテルに直行という展開になったのですが、ベッドに横たわった彼女を見て、さっき見てきた映画の構図とあまりに似ていたのでゾッとして一瞬鳥肌が立ってたじろいでしまいました。そうなると無機的なホテルの部屋は殺伐とした感じがして寒々しく感じ、それを打ち消すかのように熱い腰の動きを彼女にした、それこそ絶対に思い出すこともないような瑣末なことを、この本を読んで何故か思い出したのでした。たしか見た映画は「サンゲリア」とか「ゾンゲリア」とかであった記憶があります。文中の映画のタイトルを見て思い出した若い日の一日。不思議です。ホラー映画の本を読んでいてどってことのないどこにでもあるようなむしろ幼いエッチ体験の記憶へとワープするわけですから。きっと氏の文章を読んでいて、作者との同時代性なるものを感じ取るものがその内容にあったんだと思います。

 

変な話になってしまいました(どうも私はそっち?にいく傾向がある?)。ところで荒木氏はホラー映画についていくつかのジャンルに別けてその論を進めています。以下が大雑把なそれです。

 

●ゾンビ映画

荒木氏によると「ゾンビの本質とは全員が平等で、群れで、しかも自由であること」ということである。

●「田舎に行ったら襲われた」系ホラー

「悪魔のいけにえ」に代表される、都市部から離れた田舎を舞台とするホラー映画群。

●ビザール殺人鬼映画

ブギーマンやジェイソンなど、強烈な個性を持ったビザール(猟奇)な殺人鬼が登場する映画群。

●スティーブン・キング・オブ・ホラー

スティーブン・キングの映像化作品群。

●SFホラー映画

「エイリアン」に代表されるカテゴリーで、「遊星からの物体X」など、リメイク作品を好む傾向にあるとか。

●アニマルホラー

「ジョーズ」を代表とする動物が恐怖の対象となる作品群。

●構築系ホラー

「構築系」は荒木氏が名付けたもの「キューブ」などの新ジャンルのホラー映画群。

●不条理ホラー

「ファニーゲーム」に代表されるカテゴリーで「わけがわからない」映画群。芸術性も高い?

●悪魔・怨霊ホラー

「エクソシスト」「オーメン」といった王道ホラー映画群。

●ホラー・オン・ボーダー

「エレファント・マン」や「羊たちの沈黙」など厳密にはホラー映画ではないが、ホラー映画のテイストを含んでいると思われる作品群。

 

私も若い頃は映画を見るならホラー映画という時期もありました。荒木氏の本文にもありましたがトビー・フーバー監督の「悪魔のいけにえ」やサム・ライミ監督の「死霊のはらわた」を見たときのショックは大きかったです。その設定やこれでもかという救いのなさ、そして映像センス、驚きでした。言うように新しいロックミュージシャンの登場にも近い感覚があったと思います。今は夏ですから血飛沫が飛び散る残酷なホラー映画というテーマもありですが、最近は歳なのか、どうもそうしたものが苦手となってきました。そうは言いながらも荒木氏が褒めているまだ見ていない作品を見てみようかなという気分にもなるのでした。

荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論 (集英社新書)
荒木 飛呂彦
集英社

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 僕は知らない寺山修司NO.... | トップ | 映画「28日後...」監督:ダ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新書(読書)」カテゴリの最新記事