**この記事は2011年にイザブログに公開したものです。3月でイザブログが終了となり本ブログに移し変えました。管理人**
さまよえる日本人(5)
2011/09/22 01:15
:米国では連邦議会の承認を勝ち得た閣僚などの指名候補者たちは、次に大統領から任命をうける。そして大統領府に集結し、大統領に忠誠を誓い、大統領と運命を共にする。大統領が再選に失敗すると全員が失職するためだ。
だから、自分達の職務の成功は政権の成功につながり、自分達の失政は再選失敗に帰着する。職を賭して仕事をすることになる。
大統領にとっても、4年という確定した任期の中で、強力なリーダーシップを行使するための条件が備わったことになる。すなわち、自分に対する忠誠心がきわめて高い有能な直属部下と自分を制度的に支えてくれる強力な組織だ。
さらに、この3千人を越す大統領府の基幹組織を8千人近い側近組織(資格任用の課長級以下の一般職業公務員)の裏方が支援する。
:日本の首相官邸はどうだろうか。自分達の手足になる有能な部下も助言をえるためのシンクタンク組織もない。与党(政策調査会)と官僚(事務次官会議)の狭間を飛び交う伝書バトの政務三役のみだ。
このため与党に対して、首相は独立して指導力を発揮できない。そればかりか、与党が抵抗すれば法案の通過は困難だ。
また官僚に対しても、本来、首相は行政トップでありながら、既得権の削減を試みようものなら、激しく抵抗される。
行政官僚の忠誠心は日替わり首相にあらずして、あくまでも自分が一生を過ごす省内の職場組織に対する帰属意識だ。
米国の大統領が政権の移行過程で検証チームを立ち上げて、前政権の政策実績と課題を検証させることなど、日本の官僚組織においてはタブ-だ。
前政権内閣とはいえ、自分達の先輩官僚が立案した政策、それを検証してなみかぜ立てれば、本庁から地方にとばされ、定年後に約束された先輩の天下り先に再就職できなくなる。
:1991年に亡くなった政治学者辻清明は、明治時代以来の日本における官僚機構の特質を研究し、その構造的特質の一つとして「強圧抑制の循環」という見解を表明した。
“戦前において確立された日本の官僚は支配・服従の関係が組織の中核を成し、その組織内部において部下が上司の命令に服従するのと同様に、日本社会では官僚(軍人)への国民(臣民)の服従を強要する「官尊民卑」の権威主義的傾向を有していた”とする説である。
さらに、“この社会的特質は戦後の民主化改革の中でも根強く生き残り、政治的な民主化への阻害要因になっている”とも指摘している。
戦後66年がたった今、そしてあの中近東ですら民主化運動が進むなか、日本の民族だけは政治の民主化から取り残されている。
(続く)
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