abc

news

さまよえる日本人(3)

2014-04-19 | Weblog

**この記事は2011年にイザブログに公開したものです。3月でイザブログが終了となり本ブログに移し変えました。管理人**

さまよえる日本人(3)

2011/09/10 02:01

 

:米国では、四年ごとの選挙で当選した大統領が四年間政権を務めることになる。そして米国の大統領制のもとでは、任期の終了時が政権交代となる。大統領が失職しても副大統領が昇格するので、政権交代にはならない。不信任決議による辞職も議会の解散もない。

米国ではまた、党員が政党内での大統領公認候補選びに深く関与し、候補者も各地で住民との討論会を重ねながら、自分の言葉で政策を熱く説いてまわる。それをメディアが長期にわたって報道し国民が「評価」を下す。まさに大統領選は全米の国民を巻き込んだ政治ショーだ。

一方、日本の首相選び(代表選)は茶番ショーだ。米テレビ番組CNNの大統領候補者討論会をパクッテはいるが、候補者たちは飲み友達のような、仲間うちの「評判」をもとに推薦されており、日本人が得意とする馴れ合いの談合だ。このため、日本では米国流、長期遊説など流行らない。選出までの日程は数日で十分だ。

過去にはショーにもならいギネス級の茶番があった。2000年第85代首相森喜朗の誕生のときだ。当時の自民有力議員五人衆が順天堂大学病院の病室にそろい、脳梗塞で倒れ脳死状態にある首相小渕の前で、後継総理を数分の密談で決めてしまったという。

:選挙に勝つと米大統領はリーダーシップを発揮し、高級管理職の候補者を絞り込んでいく。とりわけ、大統領の政権中枢を固める政治エリート(長官・副長官等の閣僚・準閣僚)は重要だ。だから、大統領自らが政治エリートの候補者を指名する。この人選に失敗すれば、政権の命取りになるからだ。

高級管理職の候補者たちは民間企業、法律事務所、教育機関、非営利団体シンクタンクなどの外部組織から登用される。豊かな実戦経験と卓越した専門能力をもちあわせた人材であることが条件だ。特に、政治エリートには、この条件のほかに、大統領との円滑な意思疎通はもとより、政策の骨組みを構築していく過程(政策プロセス)における他の高官との円満な意思疎通も要求される。

ハルバースタムの著書「最良で最も聡明な人たち」の中のマクジョージ・バンディとウォルト・ロストーは対照的な二人だった。バンディは、若干34歳でハーバード大学の学部長に選出された頭脳明晰だったが、ケネディ政権で国家安全保障担当大統領補佐官に任命されると、国防長官マクナマラとともにベトナム戦争への積極的な介入を大統領に助言した。そして情報の扱いについては、戦争の全貌を隠さずに正直に国民に伝えるべきだと考えていた。だが、ケネディ暗殺後のジョンソン政権下では、情報が漏洩し自分の立場が脅かされることを嫌った大統領との折り合いが悪く、ついには決裂してしまった。

一方、バンディの後任を担ったロストーはマサチューセッツ工科大学で教鞭をとり、「take-off model」(離陸説)と呼ばれる独自の経済発展段階説を組み立て、経済史の議論にも影響を及ぼすほどの優秀な経済学者だったが、自分の離陸説を南ベトナムの国家建設で実証させようと試み、ベトナム戦争への関与継続に疑念を差し挟むことはなかった。バンディよりも大統領ジョンソンとの相性もよかったが、戦争に疑念を持つ高官の意見を無視しがちになり、政権の他の高官からは信頼されず、たえず対立に苦しんだ。これこそ、米大統領が直面する候補者選びの「ジレンマ」だ。

日本では、1955年に自民党が結成されて以来、一時期の例外(細川連立内閣)を除き、2009年までの長期にわたって自民党一党優位の政権が続いてきた。

この間に自民与党は、裏では、党と行政官僚との相互依存の関係を深めて政策立案を彼らに外注し、表では、内閣と党の二元体制を敷いて、官僚に外注し出来上がってきた法案が閣議を経て国会に提出される前に、与党内の了承を取り付ける事前審査を慣習化させた。

この事前審査で自民党としては国会で議論する必要がなくなり、国会審議そのものを儀式化させてしまった。

この内閣と党との指導力の逆転で、内閣までも形骸化し、飾雛となった閣僚などは気の利いた答弁ができさえすればよくなった。

米国の閣僚候補の基本条件とされる「優れた実戦経験や卓越した専門能力」など日本の政治には異質な要求だった。党派間での組み換えが簡単な「ド素人」で十分に閣僚がつとまった。

たとえば、菅内閣下で大臣だった海江田と与謝野の両者を米国の代表的な閣僚と比べても、そのド素人ぶりが明らかだ。とても経済大国三位の国の経済の舵取りを委ねるような器の人材ではない。

日本の経済産業大臣と経済財政担当相だったこの二人、実務経歴は皆無だ。前職はともに議員秘書。海江田は、政界入りした元タレント野末陳平が結成した税金党の影響をうけ、テレビで税金の解説をしていたタレントだ。一方の与謝野は中曽根康弘の議員秘書。前は商業用原子力発電所を持つ卸電気事業者(株)日本原子力発電のサラリーマンだった。

一方、クリントン政権下の財務長官ルービンは、ゴールドマン・サックス会長から任用され、財政の均衡、貿易政策のグローバル化、アジアやロシアの金融危機への対策、レーガン・ブッシュ政権以来の負の遺産である財政赤字の削減など、米国の最重要政策決定に先導的な役割を果たし的確な政策運営により、グリーンスパン連邦準備理事会議長と並ぶ、米経済繁栄の立役者と評価された。退任後もシティグループの会長に就任した。

またオバマ政権下の財務長官ガイトナーは、元米国務長官ヘンリー・キッシンジャー率いる民間コンサルティング会社から財務省に入省。クリントン政権の財務次官としてアジア通貨危機の収拾に当たり、ブッシュ政権下ではニューヨーク連銀総裁として金融危機対応に奔走するなど、金融・経済の要職を歴任した後、経済再生が喫緊課題となるオバマ政権の即戦力として閣僚に就任した。

(続く)

関連サイト 


post a comment