歴史認識問題:高市氏発言、再び波紋
MAINICHI
自民党の高市早苗政調会長が、第二次世界大戦後の極東国際軍事裁判(東京裁判)や、植民地支配と侵略へのおわびを表明した村山富市首相談話に疑問を呈したのを受け、政府と同党は13日、火消しに追われた。
安倍晋三首相の歴史認識を巡る言動に中韓だけでなく米国にも懸念が広がり、菅義偉官房長官が10日の記者会見で村山談話の「全体を引き継ぐ」と収拾を図ったばかり。歴史認識問題は安倍政権の不安要因になりつつある。
高市氏は12日のNHKの番組で、「国家観、歴史観については首相は(歴代内閣と)違った点もあるかと思う」と表明。村山談話についても「『国策を誤り』とあるが、それでは当時、資源封鎖され、まったく抵抗せずに日本が植民地となる道を選ぶのがベストだったのか」と強調した。
問題の発端は、首相が4月22日の参院予算委員会で村山談話を「安倍内閣としてそのまま継承しているというわけではない」と答弁したこと。翌23日には「侵略の定義は学界的にも国際的にも定まっていない」と述べた。高市氏の発言は首相の意向に沿っているとも言える。
だが、国内外への影響を考慮し、政府は歴史認識論争に終止符を打とうとしていた。菅氏は13日の記者会見で「高市議員個人の見解だ。政府の見解は(10日に)明確に私が述べた通り」と釈明し、出張中の高市氏に電話で「政府の見解は首相の見解だ」とクギを刺した。政府高官は「歴史認識問題は先週末で終わりのはずだったのに」と不満を漏らした。
石破茂幹事長は13日の記者会見で、「歴史認識は積み重ねがあるテーマであり、あまり思いつきで物を言うべきではない。国益全体を損なう情報発信の仕方は極めてよくない」と高市氏を批判。同日の役員会では、高村正彦副総裁が「順風満帆であるほど細心の注意を払うべきだ」と指摘した。
出張で役員会を欠席した高市氏は羽田空港で記者団に、「党に迷惑がかかったのならおわびする」としながらも、「私の考え方は変わらない」と言い切った。
一方、日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は大阪市内で記者団に、「侵略の定義が学術上きちんとないのは首相の言う通り」と認めつつ、「日本は敗戦国だ。敗戦の結果として、侵略だとしっかりと受け止めなければいけない」と苦言を呈した。
民主党の海江田万里代表も記者会見で、「先の戦争でアジアの国々に日本が大きな被害を与えたことは事実だ」と語った。
参考
靖国参拝やめない 自民・高市氏 NHK番組「自共対決」
4月に自ら靖国神社を集団参拝した高市氏は、「ここで(参拝を)やめたら終わりだ」と述べ、中国や韓国、米国などからの批判を無視する姿勢を示し、「(アメリカの)アーリントン墓地に日本の閣僚が花束をささげにいくのはいいのか」と語りました。
小池氏は「アーリントン墓地と違う。靖国神社は単なる戦没者の慰霊施設ではない。遊就館という侵略戦争を正当化する軍事博物館まで持っている。そこに参拝するのは、日本の政治が(侵略戦争の反省という)戦後の出発点を否定することを世界にアピールすることになる」と批判しました。
日本の侵略戦争を裁いた東京裁判の判決について問われた高市氏が「国家観・歴史観については安倍総理自身違った点もあるかと思う」と述べたことに対しても、小池氏は「まさに日本を世界から孤立させ、日本の未来を危うくする道だ。反省して正さなければならない」と強調しました。
小池氏が安倍内閣の歴史認識の誤りを正面からただした一方で、他の党は「言われてやめるのはいかがかと思うが、(参拝は)不必要だ」(民主・松本剛明氏)、「靖国参拝は当然。歴史的なことは学者同士で研究する場を設けたらいい」(維新・浅田均氏)などと、自民党と変わらない姿勢を示しました。
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