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さまよえる日本人(4)

2014-04-19 | Weblog

**この記事は2011年にイザブログに公開したものです。3月でイザブログが終了となり本ブログに移し変えました。管理人**

さまよえる日本人(4)

2011/09/18 00:53

 

:米国の大統領が直面する候補者選びのジレンマは、個々の最適な選択が全体として最適な選択となりえるかどうか、だった。そして歴代の大統領はこのジレンマを自らの強い信念と候補者への信頼で解決してきた。このジレンマこそが、米国の「政治の質」と「政治家の資質」を高めてきたのである。

例えば、大統領オバマにとっては、ジレンマを解くカギは「世界観の共有」だった。オバマは、少年時代の4年間をインドネシアで過ごしている。また政治エリートたちのほとんどが外国での暮らしを経験している。

内政担当の大統領補佐官バレリー・ジャレットはイランで生まれて、幼少期をイランで過ごした。国家安全保障問題担当の大統領補佐官ジェームズ・ジョーンズはイラク政策を強硬に批判した元軍人だが、やはり少年時代をフランスで過ごした。財務長官ティモシー・ガイトナーもまた、インドやタイで育った。

大統領オバマは、候補者たちが幼年期に多様な背景をもつ人々のなかで暮らしながら、米国を外から見ることで培った見識と感性を、自身のものと共有させることで、ジレンマを解く大きな手がかりにした。

彼らの見識と感性は、文化、宗教、価値観の異なる多民族社会にあって、異なる考え方があることを認め、よりオープンな姿勢で物事とらえようとする世界観だった。

:日本の閣僚人事はどうだろうか。首相選び同様に儀式だ。繰り返すが、1955年に自民党が結成されて、一時期の例外(細川連立内閣)を除き、自民党一党優位の政権が続いてきた。

この間に自民与党は、裏では、党と行政官僚との相互依存の関係を深めて政策立案を彼らに外注し、表では、内閣と党の二元体制を敷き、「法案は閣議を経て国会に提出し与野党で審議される」という本流を、「法案は閣議を経て国会に提出される前に必ず与党内の了承を取り付けること」に変えてしまった。これが事前審査の慣習化だ。

このため、与党にとっては、国会での議論など必要がなくなり、国会審議そのものを儀式化させた。さらに党の指導力がまし、首相や閣僚などは、官僚におんぶされて気の利いた答弁さえできれば日替わり「ド素人」で勤まるようになった。

そして今月組閣人事したばかりの野田内閣で早々と、日替わりド素人の第一号がでた。辞職した経済産業相鉢呂吉雄だ。第二、第三の日替わりド素人に財務や防衛の大臣あたりがあぶない。

:こうして大統領の信頼を勝ち取った候補者たちだが、大統領はすぐに任命することができない。大統領が指名する政府高官の人事には議会上院の審査と承認が必要だ。

そこで大統領は、独自にチェックリストを準備させ、候補者一人ひとりの適格性を事前に調査する。そして議会からの厳しい倫理上の審査に備える。これには多くの時間と労力を要する。

だが、事前に対処することで、議会の不承認を免れた高官候補者もいる。オバマ大統領の側近、財務長官ガイトナーはその一人だった。過去の納税漏れと家政婦が不法就労だった事実が発覚した。そのため議会上院本会議での採決の結果は承認されたものの、三分の一の反対票がでて全員一致にはならなかった。

:この事前調査チームとは別に大統領はまた、「Agency Review Team(検証チーム)」を立ち上げる。目的は前政権の政策実績と課題を検証させ、自分達の新政権の人事や政策立案に反映させるためだ。オバマ政権では135人が10のチームに分かれて実施したという。

この検証では、前任者の政策の誤りなどが発見されると公表の対象にされた。前任者は前政権が指名・任命した人材だから、公表に躊躇いはない。むしろ、米国の情報公開の精神と結びついている。

ちなみに、米国には情報自由法があり、機密文書の公開規定日は原則、25年だ。だが、その前に非公開資料の閲覧を審査請求することもできるし、機密解除しなかった前政権の政府機関を新政権が調査などを行う。それが大きな政治的得点にもなりうるからである。

(続く)

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