曇、18度、70%
帰国した年の春、散歩をしていると「ジャスミン」が香りました。辺りを見回してもどの花の匂いかわかりません。「ジャスミン」の香りは香港への思いを呼び起こします。幾度かその道を通るうちに、フェンスの白い小さな花が匂いの元だと知りました。名前を調べると、「羽衣ジャスミン」。早速翌日園芸店に出向きました。その年の新しい苗は売り切れでした。帰国後2年目の早春、「羽衣ジャスミン」を庭に植えました。
私の思うように蔦を伸ばしてはくれませんが、白い小さな花を咲かせます。香港のジャスミンの数分の一の大きさです。甘い香りに変わりはありません。清涼感がある花の香り、目を閉じて香りを感じる深い花の香り、花の香りもいろいろです。ジャスミンは妖艶な香りです。
「羽衣ジャスミン」の蕾はツンとトンがった濃い赤です。まだまだ香りません。この蕾が膨らみ始めると濃いピンクへと色が変わります。 そして開花します。開花始めは花弁の縁はピンクに染まっていますが、真っ白と変わります。真っ白になると香りは絶頂を迎えます。
北庭の左右両面のフェンスに這わしています。表の道の方は日当たりの加減で伸びが悪い、裏の道に面している方は次々に蕾をつけます。裏の道は我が家より低いところにあるので、「羽衣ジャスミン」の香りを道行く人は気づきません。
日が昇り始める頃、まだ冷たい空気の中で「羽衣ジャスミン」を胸いっぱい吸い込みます。思いは遠い香港です。