北嶋誠のブログ

私の考えていること、言いたいことなどなど。

中途失明者の成せる技

2008年09月10日 23時39分24秒 | Weblog
 視覚障害者へのアンケートで、貴方の情報源は何ですか?と問えば、まだまだテレビやラジオなどと答える方が最も多い。

 録音図書、ましてやパソコンなどと答える人は極少ない。

 わずかに、偏向した情報やお粗末な情報、退廃的な情報などが与えられ、必要な情報や得たい情報が得られないという現実がある。

 ましてや中途失明者の場合は、落胆が激しく、自宅にこもりきりで、ラジオが友達という人も少なくない。

 それでも情報を得ていくためには、書籍や新聞などの場合は点字や録音物の活用ができるし、10年くらい前からは音声パソコンが普及してきている。ただ、これらをマスターしていくためには、まだまだ条件整備が十分とはなっていない。
 
 ところで、北嶋まことのブログの「かすみがうら市にカフェanana 美声・美貌・美味・美談?」の記事に対して、すずき産地からのコメントが届いたので応えておきたい。

 知りたいことはその記事の冒頭で、 「hanana怪店!じゃあなかった開店おめでとう!」 という部分の「怪店」と「開店」漢字を使用した駄洒落が、目の見えない人にどうして書けるのかという事だと思う。一言で言えばこれは中途失明者が成せる技なのである。

 私は生まれつきの全盲ではないので、その立場はよく判らないこともあるが、基本的には生まれながらにしての全盲の方は漢字を知らないはずである。

 一方、私のような中途失明者の場合は漢字を知っている。

 音声パソコンの操作で、ひらがなでうちこんだ文字を漢字変換することが可能なのである。

 私は、基本的に駄洒落は才能ではなくセンスだと思っている。そして傑作もあるが駄作愚作も多いはずである。とにかく駄洒落を言い続け、自然に浮かんでくるほどに駄洒落癖をつけて、駄作愚作は使用しないようにすることが肝心だと思う。

 今回のhanana開店に際しての駄洒落にこの開店という言葉を強く意識させるという点に留意して考えた。まずオーナーである吉川路子のイメージを思い浮かべた。彼女は快女であり怪女でもある。そうだ怪店でいこう!となる。これは、怪という漢字とその意味が理解できている中途失明者だからこそ成せる技なのである。

 次にパソコンに文字を書き込む段である。まずローマ字でkaiと打ち込む。このまま確定キーを押せばかいというひらがなになる。確定キーを押す前に変換キーを押すと次々に漢字をはじめとする変換文字が出てくる。その一文字一文字を音声が読み上げる。

 例えば、会(かいしゃのかい あう)、貝(かいがらのかい)、買い(ばいしゅうのばい かう)、蟹(こうかくるいのかに)、下位(かとうなのか した たんいのい くらい)、甲斐(こうおつのこう かいのくにのひ)、解(かいけつのかい とく)、回(かいてんのかい まわる)、快(ゆかいなのかい こころよい)、飼い(しいくのし かい)、戒(かいりつのかい いましめ)、界(せかいのかい)、海(かいがんのかい うみ)、階(にかいだてのかい)櫂(きへんには
ねのしたにふるとり かじ)等々でテきて、ようやく怪(かいぶつのかい あやしい)がでてくる。

 ここで確定キーを押せば怪の漢字となる。これだけ変換文字が多い場合は、怪物や怪傑などという漢字を打ち出して、怪以外の不必要な語句を消去すれば良い。
 このような作業を経て駄洒落作品は完成する。いずれにしても所詮は駄洒落は駄洒落、大した意味はないのかも知れない。

コメントを投稿