摩訶不思議 with LOVE

日常の出来事ほか

 「そろそろ行くか」と逝ってしまった

2007年04月10日 17時51分13秒 | そのた
先日、前の会社の先輩が亡くなった。タバコの火の不始末から起こった火事による焼死だったといわれている。先輩といっても2歳しか違わなかったので、いつも一緒に外回りに出かけることが多かった。彼はその当時から酒とタバコが大好きで、昼飯時から普通にビールを飲んでいたし、夕方の4時頃になると決まって「そろそろ行こか」と嬉しそうに誘ってくれた。
 その後、彼は私より先に会社を辞め地元の新聞社に入ったのだが、ますますアルコールに依存するようになり、仕事も出来る状態ではなくなってしまったらしい。

 彼は早稲田を出た秀才だったが、それがまたコンプレックスだったようだ。いつも東大という言葉に敏感に反応していたし、自分より学歴が低い者(上司や取引先の担当者)から命令口調で指図される世の中を殊更に嫌がっていた。そんな彼がクリスマスの頃になると決まって言っていた口癖がある。それは「●●●●●●●●」だった。(書けません・・・)こういう時の為に、普段からカッコイイ事を言うように心がけなければ・・・ねぇ、玄さん。

 昨日、火事から2日後の自宅に行ってきた。行ってみると焼けていたのは2階の部分だけで、そんなに人が逃げ遅れるほどの大火事だったようには見えなかった。これで亡くなるとは、やはり酒を大量に飲んでいたのだろうか。酔っ払ってしまって炎の熱さも感じられなかったのなら、まだよかったのかもしれない。苦しまなかったのなら。

 玄関先に花を供えたとき、近くに焼け焦げた文庫本の頁が散らかっていた。横光利一の「旅愁」であった。70年前の日本人と、現在の我々が感じている状況は、そんなに変わってはいない。たぶん玄さんも、今の世の中に嫌気がさして逝ってしまったのかも知れない。