たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

小鹿野・尾ノ内渓谷の油滝。暑さと疲労でバテバテ。クサリ場通過でえらい思いをする。

2022年08月31日 | 秩父の山
◎2022年8月27日(土)

尾ノ内渓谷駐車場(8:52)……山の神(9:25)……クサリ場(10:42)……油滝(11:28~11:51)……山の神(13;20~13;31)……吊橋下の滝見物(14:13~14:19)……ランチ休憩(14:20~14:25)……駐車場(14:29)

 『山と高原地図』を眺めていたら、小鹿野町の尾ノ内渓谷の奥に油滝という滝があった。油滝までは実線路になっている。その先は破線路で両神山に至る。沢ではなく山歩きの延長で行ける滝のようだ。暑い時期に避けている山歩きも、紅葉シーズンになれば復活しなければならない。そのためにも、今の体力がどんなものか確認しておきたい。すぐにでも行きたかったが、天気も含めてなかなか都合がつかず、前回は時間もなく大除沢大滝で茶を濁した。山歩きだけなら、手軽で近い赤城山でもよかったが、山頂の涼しさはともかく、途中の登りで大汗をかくことは目に見えているし、まだ滝見物に未練はある。地図を見る限り、出発地点から油滝までの単純標高差は520mと手頃。コースタイムは往路で2時間40分だから、沢沿いの涼しい遊歩道をゆるゆるに歩いて行くのんびりハイクのイメージを抱いた。
 前回の旧大滝村に比べ、小鹿野町の尾ノ内渓谷入口までは自宅からのアクセスが近く、有料道路を使わずともに1時間45分ほどで着いた。今日は山歩きスタイル。履物の選択に悩むことはなく、遊歩道歩きだしと、ワークマンズックにした。前回の大滝では地下タビにしたら短時間ながらも足が息苦しかった。登山靴という発想は浮かびもしない。油滝を甘く考え、下調べはろくにしなかった。こんな軽い認識が、後でとんでもないことだったと身をもって知ることになる。

(渓谷入口。駐車場は右側。前方にお二人の姿が見えている)


(渓谷の案内看板。これには「遊歩道」とあり、三人の親子連れが歩いているイラストが入れてある。こんなのを見ると、だれでも気軽に歩ける渓谷といったイメージを抱いてしまう)


 話が前後する。国道299号線を龍頭神社で左折すると、ザックを背負った二人連れが歩いていた。どこに行くのだろうかと気になった。渓谷の入口に駐車して準備をしていると、お二人が上がって来て、渓谷の方に向かった。ハイキングか。見るからに自分よりは年上。意外に足は速く、自分は後追いになるようだ。ところが、<ふれあい館>そのものがどれなのか知らなかったが、それらしき建物の前に着くと、荷をおろして二人でトイレ掃除を始めた。おそらく、管理を任された方々だったのだろう。その後、帰着してもだれにも出会うことはなかった。ちなみに、ここは環境整備協力金の名目で入場料が400円必要らしいが、これは氷柱の時期限定だろう。外を掃除している女性の方におはようございますと挨拶したら、聞こえていないのか、返事はなかった。耳障りなスズの音を立てていたのだが。

(吊橋を渡る)


(吊橋から。奥が一番滝、手前が二番滝というらしい。川に下る鉄パイプの渡しが見える)


(遊歩道も最初は、この手の渡しが多かった)


(尾ノ内沢)


(何のためのパイプだろうか。まだ新しい。ピンクテープが垂れている。あれを見失ったら、うろつかないで冷静になって探し回った方がいい)


(標識)


 吊橋から下に滝が二本見えた。川にも降りられそうだし、帰りにゆっくり見物しよう。先ずは油滝。吊橋の標識には「油滝2.7km」とあった。駐車場からは3kmほどか。この渓谷、吊橋からの氷柱に人気があるようで、狭い吊橋での三脚の使用は禁止になっていたが、吊橋を過ぎると、サビついた仮設橋が続き、太いパイプや壊れた小屋やら大きなゴミが目につき、ごちゃごちゃした風景に変わった。尾ノ内渓谷とはいっても、吊橋から先に行く人はあまりいないようだ。だとすれば、氷柱見物代400円は高いような気がしないでもない。
 「油滝2.5km」の標識になってもパイプは続く。そして遊歩道というには無理がありそうな踏み跡とピンクテープの連続。沢沿いなのに風の流れはない。暑苦しさとうっとうしさを覚えた。パイプは知らずのうちに消えたが、テープはこの先もずっと続く。そのうち、テープがなければ歩けない遊歩道であることを知った。これが実線路だとすれば首を傾げてしまう。最初から尾ノ内沢の沢歩きに徹していれば問題もまったくないだろうが、見下ろす尾ノ内沢は、釣り目的ならともかく、沢歩きの魅力は感じない。小滝も所々にあるが、沢靴を履いていたとしても、沢歩きに転ずる気分にはなれないだろう。沢は大石や大岩だらけで、深い淵もある。自分には越えるのに無理がある。遊歩道歩きにして正解だったようだが、歩道の幅は狭く、すれ違いはきつい。

(歩道は沢から高くなってきた)


(小滝が目につくようになる)


(石ゴロ地帯では踏み跡も不明瞭でテープ頼りになる)


 油滝2.4kmの標識。100mの距離が随分と長く感じた。手拭いは頭から落ちる汗ですでにぐっしょりになっている。沢沿いの遊歩道は沢にぶつかって行きづまる。次のテープは対岸にあった。足を濡らさずに渉るのに問題はなかったが、小滝も見えたので見物がてらに上流に足を向けると、いつもの沢靴の感覚でいたためか、足を置いた石にあっという間に滑って足を濡らしてしまった。コケが付いていたわけではない。石にさわるとヌメリもない。周辺の石に足を乗せて試してみた。コケ、濡れ石、ヌメリには滑り、滑らないのは伸びきったコケ石と乾いた石だけ。ワークマンズックはコケとヌメリに不向きであるから沢歩きには使ったこともなかったが、濡れた石にも弱いのか。渡渉の際には要注意だな。後で思うと、油滝までワークマンで行ったのは無謀だった。

(かなりきわどい。右岸からの流れを間近に見に行くには無理がある。親子三人連れには無理がある)


(こんな滝も見えているのだが)


(斜めの歩道)


(山の神。石祠の屋根が見える。木の根が長くて太い)


(石祠。左は切れ落ちている)


(山の神から見えた小滝。帰路で見に行く)


 対岸から歩道は沢の左岸側の高巻きになった。歩道は斜めになって、相変わらずに狭くて歩きづらい。場所によっては泥濘もある。沢からは15mほど上の歩きだ。沢の右岸に別沢が滝状に流れ込んでいるのが見えても、わざわざ見に行くには急斜面で無理。歩道沿いにロープが出てくる。沢側にフェンスがあるわけでもなく、狭い斜め歩きのままだから、確かに危険地帯だ。ここを通過すると山の神だった。標識には油滝までは1.8kmとある。半分近くまで来ている。ここまでのコースタイムは40分。少しはタイムを稼いでいる。ここの石祠に那智山青岸渡寺のお札が収められていた。こんなところにまでと感心した。修験者ではなく、登山者が代行しているというわけではあるまい。下に小滝が見えた。下るにはきつそうな斜面。余裕があれば帰りに寄ってみようか。だが、果たしてこのズックで下れるだろうか。歩道も斜面も湿っている。

(ここは右からロープが垂れている。おそらく倒木で斜面が崩壊しているから高巻きしなきゃならないのだろう)


(トラロープはあちこちに設置されてはいるが、細く、落葉に同化してわかりづらい。この写真では見えないかと思う)


(小滝を覗き込む)


(大岩が出てくる)


(コケがびっしり)


 歩道を先に進む。左岸側からの倒木が沢に覆いかぶさっている。これでは斜面がいずれ崩れ、この歩道とて廃道になってしまうのではないだろうか。今ですらそれに近い状態だ。その先でまた沢を横切る。さっきの滑りがあったからかなり気を遣った。石伝いにジャンプでもして転んだらと、石を抱きしめるように渉った。右岸側の歩道に上がるのに、ズルズルと滑った。何とか上がって下を見ると、しっかりとロープがあった。
 右岸側の歩道もまた道型だけがかろうじて残っている。このコースを両神山まで歩く方もいるようで、油滝までの半分まででも相当に気が滅入っているのに、相当な神経を持っていないと両神山までは行けまい。また沢を渉って左岸側戻り。この辺から、沢にはコケがびっしりと付いた大きな角張った石やら岩が目立つようになった。

(よく見たら木は腐っていた。ここに古いアルミのバケツかヤカンでもあれば典型的な秩父の風景だ)


(コケがついているからきれいに見えるのだろうか)


 丸太を組んだ渡しがあった。見るからに渡るのは危険。右から巻いて越えた。歩き出しから40分。そろそろ油滝はどうでもよくなってきた。勝手に想像していたのんびりハイクからは程遠い。そんな思いのせいか、たいしてきれいでもないが、小滝でも目につけば、わざわざ見に行く。当然、その都度に注意しながらも石に置いた足は滑り、なぜか左足だけが濡れた。骨折の影響か、左足が短いと整体師に言われたことがある。

(岩のペンキ矢印)


(傾斜は次第にきつくなっていく)


(歩道をふさぐ倒木はさほどになかった。2か所くらいだったろうか)


(この辺は下が岩でよく滑っては尻もちをついた。ロープあり)


(すでに歩道ではなく踏み跡。テープがあるから行ける)


(小鹿野山岳会)


(この看板が置かれた頃は、しっかりした遊歩道だったのかも。「昭和53年指定」となっているから、その数年後の設置だろう)


 すでに歩道は消え、沢を何度も左右に渉る。決してきれいな沢でもないが、小滝をつい見にいくから時間もとられる。やけっぱちな気分もあったのだろうか。そんなことをしているとテープを見失う。テープの破片が落ちているのを見つけ、そちらに行くと、テープが先に続いていた。この繰り返しになった。しかし、油滝はまだまだ先なのか。ため息が出る。
 沢の高巻きの遊歩道はすでに消え、沢伝いの歩きになった。このまま沢筋を歩いて行けば油滝に出るのだろうが、テープやら、今度は岩に記された赤ペンキまで出てくるから、沢から離れてそれに従う。そして、たまに置かれた小鹿野山岳会の標識。

(かなり飽きてきている)


(ギギの滝。ギギノ滝とする方もいる。ギギとは何? 魚にギギというのがいるらしいが、埼玉にはいるまい。そんなのんびりしたことを考えているのもここまで)


 ダラダラと登っている。緩かった傾斜はきつくなってくる。もう沢歩きに近い状態だ。前方に滝が見えた。脂ぎった感じから、ようやく油滝かと思ったが、ネットで記憶している滝の姿とは違う。滝名標識はない。これも、沢に降りて見に行きたかったが、油滝も近いだろうと後回しにする。この滝名は後でネット記事で知った。<ギギの滝>。

(問題のクサリ場。右下にギギの滝。一本目はこなせたが、二本目には滑って撤退。足の置き場どころか引っかけるところもなかった)


(気が動転しているのでわかりづらい。左から上がって来て、写っていないが、下中央に一本目のクサリがある。クサリ場を避け、真上に登って右方向にトラバースした。頼りは木だけだった)


(何とかクサリ場は越えた。その間に、写真を撮っているような余裕はない。クサリ場は手前下。前方が油滝方面)


 今回の歩きの、他人様にはお笑い、自分には恐怖の核心部はここからになる。このギギの滝は2段8mとのこと。ワークマンでなくとも滝を直登することはできず、右岸側に巻きのクサリが垂れていたのでこれを使って越えることにする。滝の上10mの岩場トラバース。右真下にほぼ垂直にギギの滝がある。ここのクサリ場は一本ではないようだ。とりあえずは一本目を滑りながらこなした。これだけでもかなりの神経を遣った。足の引っかけに乏しく、土を含んだワークマンではきつかった。続いて二本目。これは無理だった。足の置き場がない。現に滑った。これはヤバイと、一本目に戻る。足はガクガクしている。ここを突破しなければ先には行けない。見上げる。ここがやはりネックのようで、高巻きして登ったような踏み跡があった。クサリ場を巻くというのもおかしな話だが、攀じるしか逃げ道はないようだ。真上に登る。滑る。岩角に手をかけたら剥がれた。何とか、木に手をかけたい。つかんだ。ほっとした。この時点で、油滝はもうやめようかと思い、その気になったりしたが、下るには滑落する危険がある。せめてチェーンスパイクでも巻いていれば可能かもしれないが、高度3mほどもない一本目のクサリ場まで安泰に下れる可能性はかなり低く、ヘタをすればギギの滝まで落ちてしまう。お助けロープをザックから出そうにも、足元はそんな行動はとれないスペースだ。先に行くしかない。危ういというかストレートに危険なトラバースをした。頼りは間隔が広がっている木だけ。しがみついては移動して、クサリ場はクリアした。久しぶりにノドがカラカラになり、水筒の水をがぶ飲みした。持参の水は1リットルだけ。ここまで2/3は飲んでしまった。水の心配はいい。沢水がある。
 クサリ場を越えたのはいいが、帰りはどうすりゃいいのか。お助けロープを使うか、足元を宙にブラブラさせて腕力だけでの移動というのは自信もない。それだけが気になったままに先に行く。今さら、ワークマンズックを履いたことを後悔しても始まらない。まさか、このまま両神山に登ってしまい、天理岳経由で渓谷入口に戻るというのもかなりの無理がある。どうすりゃいいんだという不安は、油滝に着いてもずっとつきまとった。

(もうそろそろ油滝かと思うが…)


(石積みがあちこちにあった)


(伏流になっている。地味にきつい。まだかいな)


(テープの代わりに杭が出てくる)


(しつこいなといった感じになった)


(伸びたコケ。コケじゃなかったりして)


(標識を見てため息が出た。やっとこさで着いた)


 ギギの滝を過ぎると、もはや歩道はなく、ゴーロの間を歩くような形になり、沢を巻くところは傾斜もかなり急になってくる。嫌な歩きだ。あのクサリ場越えでかなりバテている。きつい。ボーっと歩いていたためか、下りで埋もれた平たい石に滑って尻もちをついた。沢の水はかなり少なく、伏流になっているようだ。
 はぁはぁしながら登って行くと、何のためのものか石積みが目立つようになり、やがて標識と滝が遠くに見えた。近づくと標柱には「油滝」とあった。なんとか辿り着いたようだ。ここの標識、正面の油滝ではない右方向に<龍頭神社奥宮>とある。もしかして、クサリ場を回避して神社に直接下れるルートがあるのではないかと気になって『高原地図』を開くと、奥社は両神山に北から登る西岳と東岳の鞍部にあるようで、これではまったく方向が違ってしまう。この先の注意勧告はない。あったのは吊橋脇の看板だけで、それには「油滝から西岳方面立入ご遠慮下さい。道欠落。遭難救助多数。令和3年度 小鹿野町」とあった。自分には、油滝どころかクサリ場に書きかえて欲しいくらいだ。

(油滝。二段のようだ)


(下段)


(上段)


(滝つぼ。この水量でこの深さ。以前はもっと水量があったのだろうか)


(中間部の流れ)


(正面から。左からも撮りたかったが滑るのでやめた)


(下から)


 油滝を前にしてしばらく休憩した。相変わらずに滝に至っても風はない。汗がダラダラと流れている。あのクサリ場越えで心身ともに苦痛を味わったわりには解放感はない。落差も10mもない静寂な滝だった。音も低く、静かに流れている。滝を眺めていても気はそぞろ。帰路のクサリ場通過だけが気になってしまう。ケチをつけるつもりはない。せっかく観られたのだからと、滝の周囲を回りたいが、何せ滑る。乾いた石と伸びたコケ石を頼りに動き回りはしたがそれ以上は無理。この上にも細い滝はあるらしいが、油滝に至るまで、油滝先行としながらも、気になる小滝は大方は立ち寄ったし、地元の方やら尾ノ内渓谷ファンには表現は失礼かもしれないが、「こんなものだろうな」レベルだ。上の滝とて、どうせ油滝未満だろうしと、ここを本日の終点にした。正直のところ趣味の滝ではなかったが、滝ツボの深さと湛えた水の色がきれいだったのは印象的だった。
 ここで、滝を観ながら、ふと、おかしな発想が浮かんだ。問題のクサリ場通過のこと。ズックを脱いで靴下だけで通過できやしないか。あるいは裸足でもいい。その方が足場の岩に少しは滑らずにフィットするのではないのか。そうしよう。もはや、ワークマンズックへの信頼は無きに等しい。

(帰る。クサリ場通過で気はそぞろ)


(ギギの滝の落ち口が見えて)


(クサリ場)


(何とか終えた)


(見上げて。往路ではあそこを通過した。登山靴なら高巻きしても何ということはないだろう)


 油滝で20分ほど過ごしても、結局は落ち着かなかったし、滝そのものが自分には地味だった。息を整った時点で下る。奥宮方面の様子を見に少しだけ歩いてみたが、踏み跡もあやふやなものだった。おそらく、テープか杭が誘ってくれるのだろうが。
 荒れて歩きづらい沢を、滑らないように注意しながらダラダラと下る。天気は晴れたり曇ったり。雲が濃くなると気が重くなる。ここで雨にはあたりたくはない。降るならクサリ場の先からにして欲しい。そのうちに滝の落ち口が左手下に見えた。ギギの滝だ。右手の岩場にはクサリ。
 裸足になる前にクサリ場の様子を確認する。往路では巻き終えた際にそんな心境にはなれなかった。どうもクサリは二連ではなく三連のようだ。岩がカーブしていて下りでは三番目にあたるクサリは見えていない。それぞれの長さは2mもあるかどうか。一番目は足場がある。問題は二番目だ。どうするか迷った。このまま行ってしまおうか。お助けロープでの高巻きはどうも不安だ。
 一番目で早くも滑ったがすぐに岩のコブに足を移して通過。続いて二番目。ほぼ腕力任せに強引。足には力を入れなかった。入れたら必ず滑ってしまう。滑った感触はあったがかまっていられない。いや、もしかしたら、折ったヒザを岩に乗せたのかもしれない。忘れた。二番目を終えてヒザがガクガク、ノドはカラカラ。三番目は往路で体験済み。慎重に下った。だが終わり方がみっともなかった。クサリから手を離して尻で下ると、平らな石に尻が滑って着地。まぁヤレヤレだ。ほっとして一服。しばらく呆然としていた。

(ギギの滝)


(落ち口。こちらの滝が脂ぎった感じで油滝といったイメージに近い)


 ここから先はワークマンの滑りに注意すれば問題はない。雨が降ってもかまわないが、いつの間にか暑苦しく晴れてしまった。気が楽になり、ギギの滝に下る。ついでに沢で手についた泥を落とし、顔を洗った。ここで手拭いは2本目に替える。小さな滝だが見応えはある。沢靴だったら左岸の高台に登って落ち口を近くに見てみたい。

(下りもテープ頼り)


(この中間点標識は往路では気づかなかった。小滝見物で寄り道していたのだろう)


 下りはかなり長く感じた。来た時と同じコースを歩いているのに、どうしてもテープ頼りになってしまう。これは仕方がない。しっかりした道ではないし、沢を何度も渉るのだから。沢の横断には重々に注意したから危うい思いをすることはなかったが、また左足だけは濡らした。往路時と違うのは、帰りは下り基調になるため、歩道の土に隠れた石につい滑って転んでしまうのが頻発したこと。これを沢沿いの高い斜面でやってしまったら危険だ。崩れたところもあるし、道幅も狭いのであっという間に転落してしまう。幸いにもそれはなかった。転んでは手を泥だらけにして沢で洗うことを繰り返す。気も楽になったのか、往路では気づかなかった小滝の連瀑(とはいってもたいした景色でもないが)も目に入って、渓谷気分は味わえた。

(山の神に戻って来た)


(下る)


(これが限界。もっと上をよく見たかった)


(結構深そうだ)


(中段の流れだけは撮れた)


(歩道に戻る途中で。折ってしまった木)


 ようやく山の神に到着した。先はもう見えている。往路で課題に残していた下の小滝を見に行く。生易しい下りではなかった。上から眺めて、一番緩そうなところを下ったが、頼りにした、見た目はしっかりした立木を2本、根元から折ってしまい、最後は落葉の上を尻セード。また手洗い。手拭いは真っ黒になっている。洗った。滝にしても、三段のようではあるが、伸びたコケ石の上しか恐くて歩けず、全容は見られない。上から見下ろしている方が無難なところだろう。少しがっかりして下流側から歩道に這い上がった。ズルズルでまた手に泥。暑いからと横着しないで、最初から手袋をしていればよかった。

(こうやって見ると、やはり、この歩道は一般向きではないな)


(どうにかならんのかねぇ。氷柱見物に来た方に見られないように、ここまで運んで隠したような気がする)


(ようやくここまで来た)


(吊橋)


(一番滝)


(二番滝。上から。下には身体がからみついて行けそうになかった)


(下から)


 ごちゃごちゃゾーンを過ぎると鉄の橋が見え、渡って吊橋。吊橋を渡り切ったところから川に降りられるようになっている。滝は二本続いていて、上が一番滝、下が二番滝というらしい。一番滝の落差はせいぜい8mほどのものかと思うが、油滝に比べたら、勢いがあって、自分には好みのタイプだ。

(左がふれあい館かと思う)


(駐車場に着いた。ばてばて、ぐったり)


 戻ると、小さな広場にベンチがあった。座って菓子パンを食べた。暑くて、疲れも出て食欲はなく、一個だけようやく食べた。ふれあい館だろうと思う建屋にここから二子山が見えるとあったが、そちらの空は雲に覆われて二子山は見えなかった。
 駐車場に戻って来た。着替えを済ませてほっとしたが、汗は止まらない。かなりくたびれた割りには、歩数計を見ると一万歩も歩いていなかった。後でカシミールで確認すると、歩いた距離は往復で7.7km、累積標高差は1100mになっていた。520mののんびりハイクは甘かった。

(今回の軌跡)

この地図は電子地形図25000(国土地理院)を加工して使用しています(令和元年手続改正により申請適用外)

(天理岳1175m。油滝の標高は1050mほどだった)


(龍頭神社)


(狛犬)


 龍頭神社に寄ってみた。狛犬が2対。いずれもオオカミだった。南西の方向に台形状の峰が見えた。地図を広げてみた。あれが天理岳か。天武将尾根を使って、天理岳、両神山に登りたいとは思わないし、部分には無理だろうが、天理岳だけなら登ってみたい。北側の817m標高点経由で登れるらしい。今回のような失敗談にならないようにしっかりと情報を集めてからの話だが。

※文中に掲載した写真はあまりきれいでもないので、尾ノ内渓谷で見かけた、少しはきれいに撮れたかなと思った写真を下に並べておきます。まぁ、自己満足ですよ。ご笑納くださいといったところです。





























 ブログをアップして読み直しをしてからようやく気づいた。吊橋の上のゴミ溜めにうねっていたあの長く太いパイプ。新らしかった。あれは閑散期はあのままだろうが、氷柱の多忙期にはフル稼働だろう。氷柱は一番、二番の滝の左岸岩壁に張るようだ。今は滝でしか流れ落ちていないが、その時期になれば、パイプを横に引き、上流の沢から引いた水を下に流せば幅広の氷柱にもなる。おそらく、パイプの所々に穴が開いていたかもしれない。よく考えたものだが、地元では自然を売物にして400円の入場料をとっていたとしたらうまい商売だ。自分の勝手な想像なら陳謝するしかないが。



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2 コメント

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Unknown (こーさん)
2023-05-27 18:49:18
どうも、地元民のこーさんと申します。

数年前少しだけ渓谷巡りをしている時期がありまして、"地元で遊歩道がある渓谷"という理由だけで前知識もないまま軽装で登りましたが、結果とても後悔しました(笑)(といっても私は油滝の数百メートル手前でギブアップして引き返しましたが...)

看板のイラストの下りは思わず笑っちゃいました。僕も奥に進むほど道が道でなくなっていくのを見て、『何これ全然遊歩道じゃないじゃん!』と心の中で突っ込みを入れていたのを思い出しました(笑)

個人的にはあの整備状態で遊歩道などと名乗っちゃいけないと思います。...(※勝手に西沢渓谷並みの遊歩道が整備されていると思っていた自分が馬鹿だったのかもしれませんが。)

あと、ホースの件はまさに仰る通りで、冬になると氷柱のライトアップに向けて水がピューピューとパイプから散水している姿が見られますよ。

最近渓流釣りを始めたこともあり『そういえばあの沢はどんな感じだったかな?』と思ってネットで調べたらこの記事に巡り合った次第です。楽しい記事をありがとうございました。
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こーさん (たそがれオヤジ)
2023-06-12 22:20:50
こーさん、初めまして。コメントありがとうございます。
返信が遅れましたこと、お詫びいたします。自分のブログをしばらく見ておりませんでした。
しかしながら、あの油滝ですが、私もまた遊歩道ということで楽勝ムードで行ったのですが、クサリ付きの岩場越えはパニック状態で、イラストファミリーで行くには、一家離散のとんでもないところで、それでいて、滝そのものも、命がけで行ったにしてはがっかりで、むしろ、どうやって帰れるのかと、そればかりが気になってしまいました。まぁ、二度と行きたくないところですね。そのまま両神山に登る方もいるようですが、自分には範疇外の世界です。
楽しい記事だったのか、自分には分かりかねます。あくまでも失敗談のようなものです。渓流釣りもいいですね。若い頃からやってみたいと思いながら、案内本まで買ったりしたのですがそのままです。
私がまた沢歩き、滝見でおかしなことをしてるようでしたら、またコメントお願いします。
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