
◎2018年6月23日(土)
県道上駐車地(6:14)……南尾根取り付き(6:34)……1004m北の南尾根に復帰(8:17)……1325m標高点付近(9:28)……赤倉山(9:54~10:34)……1314m標高点付近(10:57)……1166m標高点付近(11:13)……半月道・深沢古道(11:22)……深沢左岸尾根(11:49)……1155.5m三角点(12:14)……945.2m三角点(13:06)……引き返し(13:09)……林道(13:25)……駐車地(13:37)
赤倉山の山名板のメンテナンスをしなきゃいけないなとずっと気になっていた。設置から3年の間そのままにしている。果たしてメンテレベルで済むのかどうかも怪しい。赤倉山の山行記事の写真を拝見する限り、板はかなりみすぼらしくなっているようで恥ずかしくなる。
赤倉山に行くからには、歩いたことのないルートで行ってみたい。県道側から派生する尾根を使って登ってみたいものだが、一度失敗しているし、見るからにボロボロの尾根ばかりだ。さりとて、工事用の階段を使うのもどうかなぁと思ったりする。ふと、山名板の取り付けの際、南尾根の1004mと1325m標高点の中間あたりに南東側から登って出たことを思い出した。下には歩きやすそうな明瞭な尾根型が通っていた。もっとも、地形図を見る限り、しっかりした尾根型になるのがどの辺りからなのかはわからない。1004m標高点までどうやって行くのだろうかというのが素朴かつ直面する問題だ。
あの南尾根(正確には南南西と記すべきだろうが、面倒なので以下、南尾根とする)、末端から登れやしないか。地形図では下部はゴチャゴチャと入り組み、岩場マークやら砂防ダムらしきものが豊富にあるし、崩壊地もありだ。すっきりした尾根型になってはいない。あっさりと登れるわけはない。西側のボコボコの回廊のような狭苦し気な尾根にマーカーを入れてみた。ゴチャゴチャを避けながら1004mの北側に出られそうだが無理かなぁ。
南尾根、ネット記事に2件ほどあった。1件は仮面林道ライダーさん。途中で撤退している。もう1件は、それなりの方だから、自分には参考にもならないし、ヤマレコ記事だ。詳細なレポにもなっていない。両氏ともにやはり、自分が考えたルートだった。それしかないのだろう。ライダーさんの記事写真に、撤退場所からの「正解だと思われるルート」が記されている。これを刷り出してみる。行ってみるか。どうでもいいことだが、この時、ライダーさんは赤倉山、半月山、茶ノ木平を経由して細尾峠に出る計画を立てていらしたようだ。自分には途方もないコースに思えた。そこまでのタフネスを自分は持ち合わせていない。
(17日撮影。1004m標高点と思う。ピークのように見えるが、地形図では、後ろは一旦下ることもなく尾根がそのまま登り上げている。後ろに10mに満たない下りでもあるのか)

実は先週の17日にも来ていた。足尾は霧雨だった。雨の上がる気配はなく、引き返して映画を観に行った。雨では岩場も滑る。ヘタすれば死ぬ。家族談として山名板がどうこうと言っていましたけどね…と新聞にでも出たら笑われる。この日、HIDEJIさんは晴れ渡った中禅寺湖南岸尾根を歩かれていた。時間的に赤倉山に着いてから晴れてもしょうがない。問題は今の雨だった。
郵便局脇の道を上がってすぐの空地に車を置く。末端からでは人家もあって無理だし、落石の巣のような斜面にも見える。脇から尾根に取り付くしかない。まして、今日の下り予定は、以前、途中から逃げた深沢左岸尾根を末端まで行って下るつもりでいる。車を置くなら、ここがちょうど良い。すぐ目の前に降り立つことになる。駐車地の件で横道に逸れるが、Googleマップを見ると、赤倉郵便局のちょっと親水公園寄りにPのマークが記されている。ここは深沢にかかる橋の先の右手の空地かと思うが、ここに車を駐めて問題ないのだろうか。いつも気になっている。
足は悩まずに登山靴にした。岩場通過は避けられない。地下タビのスパイクで引っかけでもしたらヤバいことになりそうだし、岩場登りにはどうも不安定な気がする。瀑泉さんレベルまでスパ地下を使いこなせてもいない。ヘルメットをかぶると一応は緊張もする。ザックの中には30mロープ。さりとて、ハーネスやら金具類も持ちはしない。あくまでも、下る際にロープを樹にでも引っかけて素手で使うだけのことだ。ハイトスさんから教わったロープワークはすでに忘れているし、改めて修得する気持ちはさしてない。先に行けなかったら戻る。それが基本だ。もっとも、戻れればの話だ。こう敢えて記したのも、後でそうではなくなったからなのだが。
(南尾根の末端部ちょい上。正面から取り付く)

(斜面はわりとゴチャゴチャしている)

(尾根に乗る。ヤブ尾根だった)

まずは目の前の柵を越えて深沢を渉らないとならない。柵を越えると、高い石垣があって、すんなりと沢には降りられない。上流に向かうとヤブ。下半身はすっかりと濡れた。遅まきながら、ここでスパッツを巻き、時間をとられる。スパッツは通気が良くないので嫌いなのだが、今日は、結局、最後まで付けていた。
沢に出ると、音を立てているわりには水はほとんどなく、濡れずの河原歩きで尾根に向かう。シカ道を辿り、さらに、この辺は植林やら護岸工事の作業道らしきものがあり、一部ズルズルもあったが特別な支障もなく尾根に乗った。真下に赤倉の集落が見える。60mほどの標高差だが、尾根の斜面は見えていない。石を転がしたら、菓子折り持ってスミマセンでしたでは済むまい。
(見下ろす。尾根は見た目よりもかなり傾斜が強かった)

(ヤブも少しは低くなる)

尾根はヤブで荒れている。工事関係者が歩いた踏み跡らしきものはあるが、すでに相当に日が経っているようだ。ここの標高、せいぜい750mからでは、左の視界の中倉山も横場山が立ちはだかり、頭しか見えていない。
カヤぼうぼうの中を登る。右手からは朝陽が昇り、今日は暑くなりそうだが、足元は草露でさっきよりもびっしょりになっている。シカ道だか作業道の細い跡を登って行く。あちこちに錆びたワイヤーが散乱している。中倉山も上半分が見えてきた。
(早速のお出まし)

(1004m標高点。その後ろ、二段構えの尾根が見える。手前が下り予定の尾根で、奥が田元まで続く長い尾根だ)

正面に1004m標高点らしきピークが迫る。地図上は、その1004m先も上り続きになっているが、ここからでは屹立したピークに見える。こちらもそろそろ岩場歩きになってきた。やけにお出ましが早い。目の前に小さな岩峰が2つ。これを越えるのに問題はなかろう。むき出しの岩峰ではない。右を見ると、深沢左岸尾根の945.2m三角点から南に分岐する尾根が長く続いている。末端は国道122号線がカーブする田元の交差点になるが、いずれは歩いてみたいと思い、先日来た際に、県道側(間藤側)にうやむやながらも下りられそうだったのは確認した。肝心の今日の下り予定の尾根は、下部は問題なくなだらかのようだが、上部はちょっと急で、ザレたところも見えている。あそこの下りは試練かもなぁ。
(精錬所跡の後ろの高台にあるのはソーラーパネルだった。中倉山も次第に姿を出してくる)

精錬所跡の後ろに貯水池のようなものが見えている。あれは何だろう。沈殿池ではあるまい。浄化施設か。実はこれ、後で写真をアップで見るとソーラーパネルだった。何十年も前に秋田の山あいの町から足尾町に移り住んだ際、最初の印象は、何て日照時間が少ないところなんだろうというものだった。冬だったから余計にそう感じたのだが、その印象はいまだに持っている。ソーラーパネルの施設を設けても、効率良く蓄電できるとは思えない。まして西側には山が迫っている。午前中だけの太陽光の吸収だろう。下を見ると、かなりの高度感があり、斜面は省略されて見えず、真下に人家の屋根が続いているといった具合になっている。
(大岩。ここを直登したわけではない。ただ、半ノドカラ状態にはなりつつある)

(下を覗く。先に進んでいた感じにしては町がまだ真下に見えている。足元の大石を転がせばどういうことになるのやら)

目先の小さな岩峰だが、大岩の下には石垣も築かれていて、そちらに関心が向いたからだろうか、あまり恐い感じはしないで歩いた。別に楽勝気分で歩いているわけではない。左は切れているし、右転落にしてもかなり落ちそうだ。ところどころにザレもあって、足場は安定していない。ノドがそろそろ乾き出している。ここからならまだ戻れる。撤退するなら、せめてライダーさんが行ったところまでは行っておきたい。
(ザレもある)

(前掲の写真と同じような構図になってしまったが、足尾の山好きな方には相応に感じていただける風景だろう)

(あそこに行くのは厳しいかと)

(ここを下って巻こうとした)

1004mがどんどん近づく。真正面に見ると、やはり岩峰じゃないか。あそこをああ行ってこう行って1004mと、シミュレーションは可能だが、この先は下っての鞍部になっているようで、1004mは別山といった感じがする。下った先から直登するには途中に岩場の横並びがあって、素人にはかなりきつそうだ。よく見ると、1004mの裾の右には砂防ダムがある。あれをうまく使えばといったプランもあるだろうが、そこにすんなり行ける保証はない。
(1004mの全容が見えてくる)

(まばらだが、うっとうしい存在であることはナゲと同じだ)

(そして、結局は厳しいところを巻いて下る。そこが鞍部だ)

小さな松がヤブになって歩行の邪魔になる。こうなるとナゲと変わるところがない。目の前にまた岩峰。その先はストーンとでもしているのか。ナビを見ると、今、例の狭苦しい回廊に入り込んだばかりの位置にいる。実は、さっきの岩峰からすでに中盤だろうとばかりに思っていた。どうも、ここからが正念場らしい。
正面の岩峰、巻けやしないか。先の下りが恐そうだ。右下を見ると、シカ道らしい踏み跡が岩峰の先に続いている。ではそれを使いましょうかとなったが、なぜか、結局は下って登って岩峰の上に出ていた。そして、またシカ道で大回りして、岩峰を越える形になった。ムダな足運びをしたようだ。鞍部に到着。余計なことをして体力を消耗しただけのことだったらしい。
(鞍部から1004mを正面に見る。下に堰堤がある。上部には岩壁があるが、溝を登れば行けそうな感じはした)

(振り返って。これが地図上の細い回廊)

(鞍部から。写真では楽勝ぽいが無理。左手からの大回りになる)

休憩する。水をガブ飲みして一服。ここならまだ戻れる。つかまる樹々もあったし。GPSを見て地図と照合する。回廊はここで終わっている。ということは、これから左側を迂回して1004m上に出るといった形になる。ここから1004mを眺める限り、砂防ダムも近くなっているし、周囲の岩尾根を避けるなら、砂防ダムから緩そうなガレ沢を登り詰めるか、その左の溝を行けば、岩にはぶちあたらない感じだが、1004m直下がどういう状況になっているのか。思案の結果は、ライダーさんの「正解だと思われるルート」もしくは、もうお一方のルートで行くことにしたが、後で、撮った写真をアップで見ると、やはり、岩峰群の間の溝を通って、正面から1004mに登った方が無難だったかもしれない。それなら地下タビでも行けたはず。ただ、場合によっては、1004m目前で、戻れずにセミになっていた可能性もあるだろうけど。
(こんなのを右上に眺める。どうも、最終的にあそこを登ったようだ。もう気もそぞろになっていた)

正面から離れて左に行く。右手にはゴツゴツと岩場が続く。運よくトラバースのシカ道が続いていて、これを頼る。ただこれも危ういもので、どんどん西側に向かい、隣の谷の際に出てしまった。これでは行き過ぎだが、このガレ谷は意外に緩く、エスケープで下れるかもしれない。はるか下に重機が見えている。戻らずともに、ここから撤退できるわけだ。一応、ここからの退去ルートは確保できた。ただ、崩壊しつつある赤倉山のガレ沢の下りは半端なものではないだろう。以前、体験もしている。非常に恐かった。
(右手。オレの世界ではないね。素通り。といっても気楽にトレッキングしているわけではない。足元の左はかなり転げ落ちそうになっている)

(これは中倉山を撮ったわけではない。左手・西側の尾根が何ともうらやましく感じている。もっとも、あの下部もまたザレ尾根で近づけやしない)

(あのシカ道を下って来たようだ)

進路を右側に修正すると、岩場に突入した。左に並ぶ尾根が緩やかに見えるが、ここからでは谷超えになっていてあっさりとは至れない。さて、この先の岩場だが、地形図の岩場マークはもう頼りにならないにせよ、さっきの鞍部から眺めている限りは、そんなゴツゴツしたところには見えていなかった。こんな低い岩場は地図には反映されないのだろう。
すでにライダーさんがマークされた「正解と思われるルート」はどれがどうなのかわからなくなっている。ひたすらに、シカ道を追いながら左から右上に向かっている。そのシカ道すら消えてしまった。
実はこの先、行ってまだ日も浅いのに、あまり記憶が鮮明ではない。それだけ登り上げに必死になっていたせいだ。撮った写真を見ては、あぁ、こんなところあったなぁといった調子で、どうも詳細を思い出せないし、文字で記すこともかなわない。岩の間を通ったり、急斜面のザレ場をトラバースしたり、岩を登ったりで、結局は、もう後戻りできない状態になっていた。一時的にほっとした時には、すでに1004mの位置よりも上がっていたし、左手に赤倉山が顔を出していた。
1004mからの尾根が右手に近づいたことで、ほっとし、そちらに移動しようと考えもしたが、まだそう簡単には行けそうにはない。間に挟まる谷間は急で、ここから谷間に行くにはロープを出さなきゃいけないようだ。ただ、引っ掛けて安心できそうな樹はないし、大きな石にでも巻いたら、もろ共になりそうだ。
(ラストの岩場登り。ここから見る限りは楽に登れそうだが、それは危険性のない平地から登った場合の話だ)

(中断から見下ろすと、登った岩そのものが見えていない。さらに先まで行って確認する気にはなれない)

正面に20mほどの岩場が現れた。壁みたいになっている。これがラストであって欲しい。幸いにも、この岩場はノッペリしたものではなく、ゴツゴツしていて手足がかりに悩むところはなさそうだ。だが、ボロボロのところもあって、しっかりと確認してからでないと、手足を預けられないし、場所によっては根が強く張った草に頼るところもある。もう腕力の世界になっている。中段で一息入れる。下は見えていない。完全に退路を断たれてしまった。もう上に行くしかないようだ。
(1004mから続く尾根がすぐそこにある。早いとこあそこに逃げたい)

(そして赤倉山。深沢側からのルートとはえらい違いだ)

(ようやく近づいた尾根に向かう)

(ここでお呼びでもないケルンを積む)

願ったとおりにラストの岩場だった。右手の1004mからの本尾根が平らな斜面で続いている。クマにでも襲われない限りは五体満足で帰れる。ついさっきまで、町が遠くに見えるから携帯もつながるだろうし、救助要請も可能だなと思ったりしていた。このルートで来ることはもうないが、記念にケルンを積む。1020m。見下ろす。自分がどういうルートでここに至ったのかからきしわからない。ただ、家に帰ってからカシミールで軌跡を確認すると、ほぼ事前に地図に書き込んだマーカールートと一致していた。
本尾根に合流して15分ほど休憩。ぐったりした。もう、赤倉山からは一般ルートで下り、そのまま深沢古道から帰ることにしようか。ヘルメットを脱いで帽子にする。そして、ストックを出す。身体はもうベタベタになっている。風が少しでもあれば気持ちも良いだろうが、風はまったくない。
(改めて備前楯山と)

(中倉山。下には銅親水公園が見えている)

菓子パンチョコを食べて一服。ここまで2時間かかった。さも長そうに感じるが、単に文章がダラダラになっただけのこと。出がけは青空が覗いていたのに、空に青味はすでにない。この先は雨になってもいい。途中、どこからでも東に逃げられる。ここまでの間に雨になっていたら…。考えただけで恐ろしい。岩場のプロには物足りないところかも知れないが、アマの自分には十分に無謀で限界超えだった。また髪の毛が抜け落ちた気がする。これはヘルメットと汗で髪の毛がペタリとしているせいか。
中倉山はもう丸見えになっている。銅親水公園も見えた。駐車場をズームで撮って再生する。10台くらい駐車している。中倉山のブナの樹、そして2週間前に新設の山名板を見て以来、中倉山が自分から離れてしまった存在になりつつある。若い頃なら、恋人が何やかやの理由をつけて徐々に離れていった時の複雑な気分か。さりとて自分本位に恋人を恨むのでは中倉山自身にしても不本意だろう。自分は変わらずとも、相手は周囲の環境で変わっていくのだ。あの10台のうち、何台分かのハイカーは中倉山に行っているのだろうが、果たして、2枚の並んだ山名板を見て何か感じるだろうか。初めての中倉山なら、何も感じないだろう。こんな泣き言を記してもしょうがないか。でもしばらくは足尾の山に行く度に同じ思いが続きそうだ。
(この先、かなりおとなしくなった)

(振り返る。町はまだ見えている)

先はかなりほっとした歩き気分だ。もうちょい行けば、以前歩いたルートにぶつかる(記事では認識不足のままに「南西尾根」としている)。3年前に先で合流した際には、天気が晴れてはいても、木立や緑でちょっと暗い感じのする尾根だった。
(飽きもせずにケルン積み)

(やはり薄暗い尾根に入り込むことになった。恐怖心はもう消えるだろう)

(普通の、どこにでもあるとしか言いようがない尾根)

(崩壊地だが、危険な感じはない。ここ一か所だけ)

樹林帯に入る手前1125m付近で再びケルンを積む。地図上の小ピーク。ここはザレた平地だった。左に赤倉山はまだ見えている。なるほど、歩きやすい尾根だ。登り使用のためか、迷うところはない。尾根幅も狭くはなく、両サイドが切れているところもない。特徴のない尾根といったらそれまでのことで、下部の獰猛さに比べると至っておとなしく、地味な尾根といった具合だ。一か所、左が崩壊しているところがあった。これとて、問題なく通過できるし、誤って転落したとて、相当に流されることはないだろう。
(障害はなく歩きやすい)

(3年前、この辺でこの尾根に合流していた)

そろそろ、前回の合流点にさしかかる。1160mあたりでの合流だった。あの時と時季的にはさほど変わらない。この先、同じようなことを記しても意味もないので割愛するが、違ったことといえば、確かケルンを積んだ記憶があるが、それがバラバラになっていたこと。そして、クマと思しき足跡が多かったことぐらいだろうか。この尾根、アカヤシオの時季に来れば、かなり楽しめるらしい。
(相変わらずに変化のない尾根を進む。ヤブでないだけでも助かる。ナゲとてない)

(左手視界。青空は消え、雲も低くなってきたようだ)

(赤倉山山頂が近づく)

(赤倉山山頂)

ということで、中略して、踏み跡も明瞭になった赤倉山に到着した。早速、山名板メンテの作業にかかろうとしたが、その前に、これまでの山頂のイメージと違った感じがした。三角点の周辺のササは刈られてすぐにわかったし、あちこちに踏み跡のあった北側へのルートも刈り払われていて、高いササの間の明瞭な道になっている。随分と訪れるハイカーも多いのだろう。ひなびた足尾の赤倉山が静かに存在感を示しているのもまたうれしいものだ。
(何ともはやの山名板)

(取りあえずメンテ用具を一揃い出す。シートに座って、じっくりとやるつもりでいた。ちなみにこのシート、別に自分の趣味ではない。子供が小さい頃に使っていた物だ)

山名板は想像以上に具合が悪くなっていて、ニスどころか、焼いて焦がした表面の黒そのものも消えていて、板に裂け目も入り込んでいた。この3年の間に、多くなったハイカーにこの山名板を見られたり、撮られていたとしたら、本当に恥ずかし限りだ。これ、メンテは無理だろう。交換だろうな。さりとて、新品を用意して来てはいない。
メンテ用具をシートに広げ、固定用の針金をペンチで切っていると、南東の方角、これもまた刈り払いされた道の方からガサゴソと音がして、こりゃマズいと、腹に入れた熊除けスプレーを手に握る。ヤブから顔を出したのはネエちゃんだった。引き続きはいない。単独の女性ハイカー。本当に驚いた。こんな山に女性一人で来るとは。
作業中の姿を不審に思われたくなく、事情を説明し、三角点はそこにあるよと言うと、それカシて、カシてとおっしゃる。何をするのかと眺めていたら、オンボロの山名板と三角点を並べ、スマホで写真を撮っていた。
ネエちゃんは、今度来た時に山名板が新しくなっているのが楽しみだと言っていたが、どこをどう歩いて来たのかを聞くと、半月道っていうのかなぁ? とどうも釈然としない。半月峠から来たのかなと思ったら、郵便局の脇から入って来たと言う。ここで半月道は深沢古道であることを思い出した。じゃ、白い車を見たでしょと言うと、その脇に駐車して歩いて来たそうだ。
スマホを出して、これで来たのと見せてもらった記事は『オッサンの山旅』の赤倉山紀行だった。ここは圏外だ。事前にスマホにネット記事を保存できるのかどうかは知らないが、それを頼りに来たらしい。もしかしたら、地図も持たずに来たのかと思い、地図を広げて説明すると、やはり、自分の歩いて来たルートはぴんとこないらしい。赤倉山も中倉山レベルになりつつあるようだ。
これからどうするの? と聞くと、やはり自重しているというか、わきまえているのか、そのまま登って来たルートを下るとのこと。その点は賢明だ。
(こんにちは。さようなら。気をつけて下りな)

(山名板は撤去の運びとなった)

(三角点周辺はきれいになっている。一時期、ヤブの中を探し回ったこともあった)

ネエちゃんは山頂に10分もいなかった。こちらが作業をしようとしていたから遠慮でもしたのか。別れ際に引き止め、後姿をブログに出すから写真を撮らせてと言うと、こちらに正面を向けてしまった。そのまま載せるわけにもいかないので顔はぼかしたが(笑)。
さてと、取り外した山名板のメンテ作業に入ろうとしたが、やはり、これではどう対処してもメンテで済むはずがない。撤去するしかない。いずれ、足尾の山好きなだれかが、山名板を新設してくれるだろう。一応、今度来る際には新しい山名板を用意はするが、あったら、取り付けはしない。今の板とて、山部氏やら栃木山紀行氏の板がなくなったから取り付けただけのことなのだ。今回もまたまともなメンテナンス活動はできなかったか。
メンテ用具を片付け、食事をしていたら、山頂に30分以上もいてしまった。その間、絶えず羽虫が寄ってきてまったく落ち着かなかったが、中に蚊ではないブヨか毒虫もいたようだ。左手首を刺され、その場はキンカンを塗ってごまかしたが、夜になると腫れ上がっていた。ちなみに、タバコを吸い出すと、羽虫もどこかに消えてしまった。
(下る。すっきりした道になっていた)

(いつもながらの好きな風景1)

(いつもながらの好きな風景2)

(いつもながらの好きな風景3)

(深沢古道への下りはヤブ道)

(このヤマイチの古河マークの石標、最初から最後までやたらと目にした。赤倉山は古河の所有地なのだろう)

(1314m標高点付近)

(そして1166m標高点付近)

(深沢古道に出て休憩)

(やはり馬車道でもあったのか)

(左岸尾根への登り)

深沢左岸尾根に出るかどうか迷いながらの下り。茨倉山方面への踏み跡は道になっている。先のピークから、3年前同様に、1314m、1166m標高点を経由して深沢古道に出た。こちらに明瞭な踏み跡はなく、入口にテープがあるだけだった。
古道出合いで休憩したが、このままに車に戻りたいのが本音のところで、実は雨が降り出すのを期待していた。だが、恵みの雨は降らず、仕方なく、この先から左岸尾根に登った。南尾根の岩場で体力を使い果たしてもいたので、80mの登り返しはしこたまつらかった。
(左岸尾根に出る)

雨がポツリときたのは、左岸尾根真下に来てからのことで、もうすでに遅い。尾根に出て、石にペタリと座り込み、ここで0.5リットル入りのペットボトルの水を飲みほす。水はあと1リットルある。さて、雨が降ってきたからには、前回、右に下る作業道の存在が気になってもいたので、それを辿ってみようか。逃げの口実ができた。しかし、雨はいつまで経っても本降りにはならず、気持たせのポツリポツリがずっと続いているだけだった。
(尾根伝いは左上に直進。気になっていた作業道は右。これを選び、さっさと下に出るつもりでいた)

(結局は防火線)

以降のことも前回の記録に記しているので割愛するが、1150m級ピークの手前にあった作業道、これはただの巻き道で、巻き終えたところで、尾根の防火線に合流しただけのことだった。何とも残念。このまま歩き続けなければならなくなってしまった。
(1155.5m三角点)

(途中で消えかけたが、防火線の終点・始点はここらしい。広場のようになっている)

1155.5m三角点を通過して下る。広場のようなところに出て、前回、西に逃げたところにさしかかる。ここまで来たら、気分はもう予定通りに945.2m三角点経由での下りになった。その先は地図ではゲジゲジ状に取り囲まれている。下れないようなら、三角点から戻って鞍部から北西に80mも下れば林道に出られるはず。フィニッシュが急斜面のザレ場下りになるようなら、潔くあきらめよう。自分の車を右下に見ながらの滑落ではサマにならない。ただ、少なくとも出発時に見た末端の感じではすんなりと下れそうだった。
(右にフェンスが出てくる)

(ここはちょっとした展望地だが、見るべきほどの展望はない)

(フェンスを越えて見えた945.2m三角点峰)

右手にフェンスが出てきた。それに沿って緩やかに下る。展望地らしきところに出ると、シカ除けの柵であると記された説明板が置かれている。こんなものがあってもなくともシカ除けであることは理解できるが、「森の緑を取り戻すために、云々」と書かれているところからして、左はヒノキの植林だ。フェンスの向こう側に幼木が目立つから、西側の斜面に植樹をしているのだろうが、シカはどちらにもいるし、まして、フェンスはあちこちで倒れたりしている。設置位置としてはまったく意味のないフェンスになっている。この展望地、地図では崩壊地に接しているところだ。簡単にフェンスから出てみたが、下を覗き込むことはできなかった。かなりの急こう配だ。ここで一服する。ここから、先の945.2m三角点ピークが見えている。くたびれた感覚と身体には、かなり高く見える。
(鞍部にさしかかる。気持ちの良い疎林の広場といった感じになっている)

明瞭な作業道が続く。左の植林は遠ざかり、疎らな自然林が広がる。尾根型は不明瞭になったが、右手側を歩いている限り、迷うことはない。また植林が復活し、一時的に消えたフェンスもまた現れる。雨は依然としてポツリポツリ。
鞍部を通過。ここに戻って林道に下るかもしれないと、下を観察する。結構緩やかで、険しい感じはない。そして、疎林の中の下りだ。安心して下れそうだ。
(945.2m峰への登り返し)

(フェンスが右に続いているから作業道の跡だろうな)

(ちんまりと三角点の石標)

上りになった。本日最後の登りになる。ぜいぜいしながら945.2m三角点に到着。広い草むらに小さな石標が置かれている。四等・点名「深沢」。いよいよ、ここからの下りがラストの課題だ。先に行くと、いきなりシカの親子が飛び出してきて、こちらの存在を確認するや逃げ去った。びっくりした。どうも、向こうから上がって来たようだが、四つ足なら問題なく歩けるのだろう。二本足ならどうなのか。やはり四つ足にならなきゃいけなくなるのか。
(本気モードで先に行くが、かなり不安になっている)

(どうも自分の世界ではないようだ。ここで退却。すでにフェンスはない。フェンスは田元側に続いているのだろう。少なくともフェンスがあれば行っていた)

当初、駐車地から下り予定尾根を眺めた(「見上げた」ではない)際には、なだらかに見えていたが、ここに至って、どうもそんな状況にはない気配を感じている。というのも、945.2m三角点から左に分岐して南の田元交差点に続く尾根は緩やかに先まで見えているのに、こちらの直進尾根は、右は切れ、直進の先がまた見えていない。ちょっと先まで行ってみた。近づいても見えているのは、その先がどうなっているのかわからないコブと、その先の県道沿いの家の屋根で、かなりの落差がある。ここで撤退の決定打となったのは、右下に見えるザレたコブのピークだった。そこを通るわけではないが、おそらく、直進もあのコブのようになっているのだろう。よく見えていないから、余計な想像をしてしまう。
また髪の毛が抜けそうだなと思った。案ずるより産むが易しとは言うが、この先の末端まで行って、下の様子を覗く気にはなれない。おそらく、一時的ながらもザレた急斜面になっているのだろう。こりゃ撤退だな。
(鞍部に戻り)

(石垣を見たりして)

(適当に下ると、ずっと先に林道が見えた)

(林道に出た)

鞍部に戻って下る。ヤブは低く、どこからでも下って行ける。ほどなくして先に林道が見え、あっという間に林道に出た。後は林道歩きだ。歩きながら、せめてあの尾根の先を覗くくらいはすれば良かったかなと思ったりしたが、恐怖心があったのではどうにもならない。いずれ、下から登ってみることにしよう。意外とあっけない尾根だったかもしれない。まぁ、こうして、安全策でドキドキで下ることがなかっただけでも幸いだ。
(林道から。右が1004m。左の凸凹を歩き、向こう側に巻くような形で1004m上に出た)

(下る予定尾根の末端部。ここは何も問題はない)

(まして、末端はこうすんなりとなっている)

林道を10分少々下ると駐車地に着いた。雨のポツリの間隔は短くなりつつある。赤倉山で出会ったネエちゃんの車はすでにない。四角く乾いて残った駐車跡の路面はない。
身体を水に浸した手拭いで拭きたかったが、近くに水場はない。荷物整理をし、着替えしようとしているとようやく雨の降りが強くなった。後ろのドアを開け、その上に傘を開いて着替えをした。雨でもう涼しくなっているので、タオルで身体を拭って着替えをしただけでも、ある程度はさっぱりした。この間のように、替えズボンを忘れることもなかったし。
(ようやく本降りになった。これがもっと早かったら、今日の歩きは変わっていた)

そろそろ帰るかと車のエンジンをかける。ちょうど2時だ。ほぼ同時に雨が本降りになった。
今日の歩き、南尾根の下部には本当に参った。ある程度の予想はしていたものの、自分レベルで戻れない程とは思ってもいなかった。そして、帰路の三角点からの下り。この駐車地からすぐ上のことだ。下る以前に尻込みをしてしまったが、実際はどんな状態なのか確認もできなかった。短時間で済みそうな上りだ。ついでの時にでもここを登ってみることにしよう。その時は、田元までの周回をしてみようか。ついでの赤倉山ということはないだろう。
県道上駐車地(6:14)……南尾根取り付き(6:34)……1004m北の南尾根に復帰(8:17)……1325m標高点付近(9:28)……赤倉山(9:54~10:34)……1314m標高点付近(10:57)……1166m標高点付近(11:13)……半月道・深沢古道(11:22)……深沢左岸尾根(11:49)……1155.5m三角点(12:14)……945.2m三角点(13:06)……引き返し(13:09)……林道(13:25)……駐車地(13:37)
赤倉山の山名板のメンテナンスをしなきゃいけないなとずっと気になっていた。設置から3年の間そのままにしている。果たしてメンテレベルで済むのかどうかも怪しい。赤倉山の山行記事の写真を拝見する限り、板はかなりみすぼらしくなっているようで恥ずかしくなる。
赤倉山に行くからには、歩いたことのないルートで行ってみたい。県道側から派生する尾根を使って登ってみたいものだが、一度失敗しているし、見るからにボロボロの尾根ばかりだ。さりとて、工事用の階段を使うのもどうかなぁと思ったりする。ふと、山名板の取り付けの際、南尾根の1004mと1325m標高点の中間あたりに南東側から登って出たことを思い出した。下には歩きやすそうな明瞭な尾根型が通っていた。もっとも、地形図を見る限り、しっかりした尾根型になるのがどの辺りからなのかはわからない。1004m標高点までどうやって行くのだろうかというのが素朴かつ直面する問題だ。
あの南尾根(正確には南南西と記すべきだろうが、面倒なので以下、南尾根とする)、末端から登れやしないか。地形図では下部はゴチャゴチャと入り組み、岩場マークやら砂防ダムらしきものが豊富にあるし、崩壊地もありだ。すっきりした尾根型になってはいない。あっさりと登れるわけはない。西側のボコボコの回廊のような狭苦し気な尾根にマーカーを入れてみた。ゴチャゴチャを避けながら1004mの北側に出られそうだが無理かなぁ。
南尾根、ネット記事に2件ほどあった。1件は仮面林道ライダーさん。途中で撤退している。もう1件は、それなりの方だから、自分には参考にもならないし、ヤマレコ記事だ。詳細なレポにもなっていない。両氏ともにやはり、自分が考えたルートだった。それしかないのだろう。ライダーさんの記事写真に、撤退場所からの「正解だと思われるルート」が記されている。これを刷り出してみる。行ってみるか。どうでもいいことだが、この時、ライダーさんは赤倉山、半月山、茶ノ木平を経由して細尾峠に出る計画を立てていらしたようだ。自分には途方もないコースに思えた。そこまでのタフネスを自分は持ち合わせていない。
(17日撮影。1004m標高点と思う。ピークのように見えるが、地形図では、後ろは一旦下ることもなく尾根がそのまま登り上げている。後ろに10mに満たない下りでもあるのか)

実は先週の17日にも来ていた。足尾は霧雨だった。雨の上がる気配はなく、引き返して映画を観に行った。雨では岩場も滑る。ヘタすれば死ぬ。家族談として山名板がどうこうと言っていましたけどね…と新聞にでも出たら笑われる。この日、HIDEJIさんは晴れ渡った中禅寺湖南岸尾根を歩かれていた。時間的に赤倉山に着いてから晴れてもしょうがない。問題は今の雨だった。
郵便局脇の道を上がってすぐの空地に車を置く。末端からでは人家もあって無理だし、落石の巣のような斜面にも見える。脇から尾根に取り付くしかない。まして、今日の下り予定は、以前、途中から逃げた深沢左岸尾根を末端まで行って下るつもりでいる。車を置くなら、ここがちょうど良い。すぐ目の前に降り立つことになる。駐車地の件で横道に逸れるが、Googleマップを見ると、赤倉郵便局のちょっと親水公園寄りにPのマークが記されている。ここは深沢にかかる橋の先の右手の空地かと思うが、ここに車を駐めて問題ないのだろうか。いつも気になっている。
足は悩まずに登山靴にした。岩場通過は避けられない。地下タビのスパイクで引っかけでもしたらヤバいことになりそうだし、岩場登りにはどうも不安定な気がする。瀑泉さんレベルまでスパ地下を使いこなせてもいない。ヘルメットをかぶると一応は緊張もする。ザックの中には30mロープ。さりとて、ハーネスやら金具類も持ちはしない。あくまでも、下る際にロープを樹にでも引っかけて素手で使うだけのことだ。ハイトスさんから教わったロープワークはすでに忘れているし、改めて修得する気持ちはさしてない。先に行けなかったら戻る。それが基本だ。もっとも、戻れればの話だ。こう敢えて記したのも、後でそうではなくなったからなのだが。
(南尾根の末端部ちょい上。正面から取り付く)

(斜面はわりとゴチャゴチャしている)

(尾根に乗る。ヤブ尾根だった)

まずは目の前の柵を越えて深沢を渉らないとならない。柵を越えると、高い石垣があって、すんなりと沢には降りられない。上流に向かうとヤブ。下半身はすっかりと濡れた。遅まきながら、ここでスパッツを巻き、時間をとられる。スパッツは通気が良くないので嫌いなのだが、今日は、結局、最後まで付けていた。
沢に出ると、音を立てているわりには水はほとんどなく、濡れずの河原歩きで尾根に向かう。シカ道を辿り、さらに、この辺は植林やら護岸工事の作業道らしきものがあり、一部ズルズルもあったが特別な支障もなく尾根に乗った。真下に赤倉の集落が見える。60mほどの標高差だが、尾根の斜面は見えていない。石を転がしたら、菓子折り持ってスミマセンでしたでは済むまい。
(見下ろす。尾根は見た目よりもかなり傾斜が強かった)

(ヤブも少しは低くなる)

尾根はヤブで荒れている。工事関係者が歩いた踏み跡らしきものはあるが、すでに相当に日が経っているようだ。ここの標高、せいぜい750mからでは、左の視界の中倉山も横場山が立ちはだかり、頭しか見えていない。
カヤぼうぼうの中を登る。右手からは朝陽が昇り、今日は暑くなりそうだが、足元は草露でさっきよりもびっしょりになっている。シカ道だか作業道の細い跡を登って行く。あちこちに錆びたワイヤーが散乱している。中倉山も上半分が見えてきた。
(早速のお出まし)

(1004m標高点。その後ろ、二段構えの尾根が見える。手前が下り予定の尾根で、奥が田元まで続く長い尾根だ)

正面に1004m標高点らしきピークが迫る。地図上は、その1004m先も上り続きになっているが、ここからでは屹立したピークに見える。こちらもそろそろ岩場歩きになってきた。やけにお出ましが早い。目の前に小さな岩峰が2つ。これを越えるのに問題はなかろう。むき出しの岩峰ではない。右を見ると、深沢左岸尾根の945.2m三角点から南に分岐する尾根が長く続いている。末端は国道122号線がカーブする田元の交差点になるが、いずれは歩いてみたいと思い、先日来た際に、県道側(間藤側)にうやむやながらも下りられそうだったのは確認した。肝心の今日の下り予定の尾根は、下部は問題なくなだらかのようだが、上部はちょっと急で、ザレたところも見えている。あそこの下りは試練かもなぁ。
(精錬所跡の後ろの高台にあるのはソーラーパネルだった。中倉山も次第に姿を出してくる)

精錬所跡の後ろに貯水池のようなものが見えている。あれは何だろう。沈殿池ではあるまい。浄化施設か。実はこれ、後で写真をアップで見るとソーラーパネルだった。何十年も前に秋田の山あいの町から足尾町に移り住んだ際、最初の印象は、何て日照時間が少ないところなんだろうというものだった。冬だったから余計にそう感じたのだが、その印象はいまだに持っている。ソーラーパネルの施設を設けても、効率良く蓄電できるとは思えない。まして西側には山が迫っている。午前中だけの太陽光の吸収だろう。下を見ると、かなりの高度感があり、斜面は省略されて見えず、真下に人家の屋根が続いているといった具合になっている。
(大岩。ここを直登したわけではない。ただ、半ノドカラ状態にはなりつつある)

(下を覗く。先に進んでいた感じにしては町がまだ真下に見えている。足元の大石を転がせばどういうことになるのやら)

目先の小さな岩峰だが、大岩の下には石垣も築かれていて、そちらに関心が向いたからだろうか、あまり恐い感じはしないで歩いた。別に楽勝気分で歩いているわけではない。左は切れているし、右転落にしてもかなり落ちそうだ。ところどころにザレもあって、足場は安定していない。ノドがそろそろ乾き出している。ここからならまだ戻れる。撤退するなら、せめてライダーさんが行ったところまでは行っておきたい。
(ザレもある)

(前掲の写真と同じような構図になってしまったが、足尾の山好きな方には相応に感じていただける風景だろう)

(あそこに行くのは厳しいかと)

(ここを下って巻こうとした)

1004mがどんどん近づく。真正面に見ると、やはり岩峰じゃないか。あそこをああ行ってこう行って1004mと、シミュレーションは可能だが、この先は下っての鞍部になっているようで、1004mは別山といった感じがする。下った先から直登するには途中に岩場の横並びがあって、素人にはかなりきつそうだ。よく見ると、1004mの裾の右には砂防ダムがある。あれをうまく使えばといったプランもあるだろうが、そこにすんなり行ける保証はない。
(1004mの全容が見えてくる)

(まばらだが、うっとうしい存在であることはナゲと同じだ)

(そして、結局は厳しいところを巻いて下る。そこが鞍部だ)

小さな松がヤブになって歩行の邪魔になる。こうなるとナゲと変わるところがない。目の前にまた岩峰。その先はストーンとでもしているのか。ナビを見ると、今、例の狭苦しい回廊に入り込んだばかりの位置にいる。実は、さっきの岩峰からすでに中盤だろうとばかりに思っていた。どうも、ここからが正念場らしい。
正面の岩峰、巻けやしないか。先の下りが恐そうだ。右下を見ると、シカ道らしい踏み跡が岩峰の先に続いている。ではそれを使いましょうかとなったが、なぜか、結局は下って登って岩峰の上に出ていた。そして、またシカ道で大回りして、岩峰を越える形になった。ムダな足運びをしたようだ。鞍部に到着。余計なことをして体力を消耗しただけのことだったらしい。
(鞍部から1004mを正面に見る。下に堰堤がある。上部には岩壁があるが、溝を登れば行けそうな感じはした)

(振り返って。これが地図上の細い回廊)

(鞍部から。写真では楽勝ぽいが無理。左手からの大回りになる)

休憩する。水をガブ飲みして一服。ここならまだ戻れる。つかまる樹々もあったし。GPSを見て地図と照合する。回廊はここで終わっている。ということは、これから左側を迂回して1004m上に出るといった形になる。ここから1004mを眺める限り、砂防ダムも近くなっているし、周囲の岩尾根を避けるなら、砂防ダムから緩そうなガレ沢を登り詰めるか、その左の溝を行けば、岩にはぶちあたらない感じだが、1004m直下がどういう状況になっているのか。思案の結果は、ライダーさんの「正解だと思われるルート」もしくは、もうお一方のルートで行くことにしたが、後で、撮った写真をアップで見ると、やはり、岩峰群の間の溝を通って、正面から1004mに登った方が無難だったかもしれない。それなら地下タビでも行けたはず。ただ、場合によっては、1004m目前で、戻れずにセミになっていた可能性もあるだろうけど。
(こんなのを右上に眺める。どうも、最終的にあそこを登ったようだ。もう気もそぞろになっていた)

正面から離れて左に行く。右手にはゴツゴツと岩場が続く。運よくトラバースのシカ道が続いていて、これを頼る。ただこれも危ういもので、どんどん西側に向かい、隣の谷の際に出てしまった。これでは行き過ぎだが、このガレ谷は意外に緩く、エスケープで下れるかもしれない。はるか下に重機が見えている。戻らずともに、ここから撤退できるわけだ。一応、ここからの退去ルートは確保できた。ただ、崩壊しつつある赤倉山のガレ沢の下りは半端なものではないだろう。以前、体験もしている。非常に恐かった。
(右手。オレの世界ではないね。素通り。といっても気楽にトレッキングしているわけではない。足元の左はかなり転げ落ちそうになっている)

(これは中倉山を撮ったわけではない。左手・西側の尾根が何ともうらやましく感じている。もっとも、あの下部もまたザレ尾根で近づけやしない)

(あのシカ道を下って来たようだ)

進路を右側に修正すると、岩場に突入した。左に並ぶ尾根が緩やかに見えるが、ここからでは谷超えになっていてあっさりとは至れない。さて、この先の岩場だが、地形図の岩場マークはもう頼りにならないにせよ、さっきの鞍部から眺めている限りは、そんなゴツゴツしたところには見えていなかった。こんな低い岩場は地図には反映されないのだろう。
すでにライダーさんがマークされた「正解と思われるルート」はどれがどうなのかわからなくなっている。ひたすらに、シカ道を追いながら左から右上に向かっている。そのシカ道すら消えてしまった。
実はこの先、行ってまだ日も浅いのに、あまり記憶が鮮明ではない。それだけ登り上げに必死になっていたせいだ。撮った写真を見ては、あぁ、こんなところあったなぁといった調子で、どうも詳細を思い出せないし、文字で記すこともかなわない。岩の間を通ったり、急斜面のザレ場をトラバースしたり、岩を登ったりで、結局は、もう後戻りできない状態になっていた。一時的にほっとした時には、すでに1004mの位置よりも上がっていたし、左手に赤倉山が顔を出していた。
1004mからの尾根が右手に近づいたことで、ほっとし、そちらに移動しようと考えもしたが、まだそう簡単には行けそうにはない。間に挟まる谷間は急で、ここから谷間に行くにはロープを出さなきゃいけないようだ。ただ、引っ掛けて安心できそうな樹はないし、大きな石にでも巻いたら、もろ共になりそうだ。
(ラストの岩場登り。ここから見る限りは楽に登れそうだが、それは危険性のない平地から登った場合の話だ)

(中断から見下ろすと、登った岩そのものが見えていない。さらに先まで行って確認する気にはなれない)

正面に20mほどの岩場が現れた。壁みたいになっている。これがラストであって欲しい。幸いにも、この岩場はノッペリしたものではなく、ゴツゴツしていて手足がかりに悩むところはなさそうだ。だが、ボロボロのところもあって、しっかりと確認してからでないと、手足を預けられないし、場所によっては根が強く張った草に頼るところもある。もう腕力の世界になっている。中段で一息入れる。下は見えていない。完全に退路を断たれてしまった。もう上に行くしかないようだ。
(1004mから続く尾根がすぐそこにある。早いとこあそこに逃げたい)

(そして赤倉山。深沢側からのルートとはえらい違いだ)

(ようやく近づいた尾根に向かう)

(ここでお呼びでもないケルンを積む)

願ったとおりにラストの岩場だった。右手の1004mからの本尾根が平らな斜面で続いている。クマにでも襲われない限りは五体満足で帰れる。ついさっきまで、町が遠くに見えるから携帯もつながるだろうし、救助要請も可能だなと思ったりしていた。このルートで来ることはもうないが、記念にケルンを積む。1020m。見下ろす。自分がどういうルートでここに至ったのかからきしわからない。ただ、家に帰ってからカシミールで軌跡を確認すると、ほぼ事前に地図に書き込んだマーカールートと一致していた。
本尾根に合流して15分ほど休憩。ぐったりした。もう、赤倉山からは一般ルートで下り、そのまま深沢古道から帰ることにしようか。ヘルメットを脱いで帽子にする。そして、ストックを出す。身体はもうベタベタになっている。風が少しでもあれば気持ちも良いだろうが、風はまったくない。
(改めて備前楯山と)

(中倉山。下には銅親水公園が見えている)

菓子パンチョコを食べて一服。ここまで2時間かかった。さも長そうに感じるが、単に文章がダラダラになっただけのこと。出がけは青空が覗いていたのに、空に青味はすでにない。この先は雨になってもいい。途中、どこからでも東に逃げられる。ここまでの間に雨になっていたら…。考えただけで恐ろしい。岩場のプロには物足りないところかも知れないが、アマの自分には十分に無謀で限界超えだった。また髪の毛が抜け落ちた気がする。これはヘルメットと汗で髪の毛がペタリとしているせいか。
中倉山はもう丸見えになっている。銅親水公園も見えた。駐車場をズームで撮って再生する。10台くらい駐車している。中倉山のブナの樹、そして2週間前に新設の山名板を見て以来、中倉山が自分から離れてしまった存在になりつつある。若い頃なら、恋人が何やかやの理由をつけて徐々に離れていった時の複雑な気分か。さりとて自分本位に恋人を恨むのでは中倉山自身にしても不本意だろう。自分は変わらずとも、相手は周囲の環境で変わっていくのだ。あの10台のうち、何台分かのハイカーは中倉山に行っているのだろうが、果たして、2枚の並んだ山名板を見て何か感じるだろうか。初めての中倉山なら、何も感じないだろう。こんな泣き言を記してもしょうがないか。でもしばらくは足尾の山に行く度に同じ思いが続きそうだ。
(この先、かなりおとなしくなった)

(振り返る。町はまだ見えている)

先はかなりほっとした歩き気分だ。もうちょい行けば、以前歩いたルートにぶつかる(記事では認識不足のままに「南西尾根」としている)。3年前に先で合流した際には、天気が晴れてはいても、木立や緑でちょっと暗い感じのする尾根だった。
(飽きもせずにケルン積み)

(やはり薄暗い尾根に入り込むことになった。恐怖心はもう消えるだろう)

(普通の、どこにでもあるとしか言いようがない尾根)

(崩壊地だが、危険な感じはない。ここ一か所だけ)

樹林帯に入る手前1125m付近で再びケルンを積む。地図上の小ピーク。ここはザレた平地だった。左に赤倉山はまだ見えている。なるほど、歩きやすい尾根だ。登り使用のためか、迷うところはない。尾根幅も狭くはなく、両サイドが切れているところもない。特徴のない尾根といったらそれまでのことで、下部の獰猛さに比べると至っておとなしく、地味な尾根といった具合だ。一か所、左が崩壊しているところがあった。これとて、問題なく通過できるし、誤って転落したとて、相当に流されることはないだろう。
(障害はなく歩きやすい)

(3年前、この辺でこの尾根に合流していた)

そろそろ、前回の合流点にさしかかる。1160mあたりでの合流だった。あの時と時季的にはさほど変わらない。この先、同じようなことを記しても意味もないので割愛するが、違ったことといえば、確かケルンを積んだ記憶があるが、それがバラバラになっていたこと。そして、クマと思しき足跡が多かったことぐらいだろうか。この尾根、アカヤシオの時季に来れば、かなり楽しめるらしい。
(相変わらずに変化のない尾根を進む。ヤブでないだけでも助かる。ナゲとてない)

(左手視界。青空は消え、雲も低くなってきたようだ)

(赤倉山山頂が近づく)

(赤倉山山頂)

ということで、中略して、踏み跡も明瞭になった赤倉山に到着した。早速、山名板メンテの作業にかかろうとしたが、その前に、これまでの山頂のイメージと違った感じがした。三角点の周辺のササは刈られてすぐにわかったし、あちこちに踏み跡のあった北側へのルートも刈り払われていて、高いササの間の明瞭な道になっている。随分と訪れるハイカーも多いのだろう。ひなびた足尾の赤倉山が静かに存在感を示しているのもまたうれしいものだ。
(何ともはやの山名板)

(取りあえずメンテ用具を一揃い出す。シートに座って、じっくりとやるつもりでいた。ちなみにこのシート、別に自分の趣味ではない。子供が小さい頃に使っていた物だ)

山名板は想像以上に具合が悪くなっていて、ニスどころか、焼いて焦がした表面の黒そのものも消えていて、板に裂け目も入り込んでいた。この3年の間に、多くなったハイカーにこの山名板を見られたり、撮られていたとしたら、本当に恥ずかし限りだ。これ、メンテは無理だろう。交換だろうな。さりとて、新品を用意して来てはいない。
メンテ用具をシートに広げ、固定用の針金をペンチで切っていると、南東の方角、これもまた刈り払いされた道の方からガサゴソと音がして、こりゃマズいと、腹に入れた熊除けスプレーを手に握る。ヤブから顔を出したのはネエちゃんだった。引き続きはいない。単独の女性ハイカー。本当に驚いた。こんな山に女性一人で来るとは。
作業中の姿を不審に思われたくなく、事情を説明し、三角点はそこにあるよと言うと、それカシて、カシてとおっしゃる。何をするのかと眺めていたら、オンボロの山名板と三角点を並べ、スマホで写真を撮っていた。
ネエちゃんは、今度来た時に山名板が新しくなっているのが楽しみだと言っていたが、どこをどう歩いて来たのかを聞くと、半月道っていうのかなぁ? とどうも釈然としない。半月峠から来たのかなと思ったら、郵便局の脇から入って来たと言う。ここで半月道は深沢古道であることを思い出した。じゃ、白い車を見たでしょと言うと、その脇に駐車して歩いて来たそうだ。
スマホを出して、これで来たのと見せてもらった記事は『オッサンの山旅』の赤倉山紀行だった。ここは圏外だ。事前にスマホにネット記事を保存できるのかどうかは知らないが、それを頼りに来たらしい。もしかしたら、地図も持たずに来たのかと思い、地図を広げて説明すると、やはり、自分の歩いて来たルートはぴんとこないらしい。赤倉山も中倉山レベルになりつつあるようだ。
これからどうするの? と聞くと、やはり自重しているというか、わきまえているのか、そのまま登って来たルートを下るとのこと。その点は賢明だ。
(こんにちは。さようなら。気をつけて下りな)

(山名板は撤去の運びとなった)

(三角点周辺はきれいになっている。一時期、ヤブの中を探し回ったこともあった)

ネエちゃんは山頂に10分もいなかった。こちらが作業をしようとしていたから遠慮でもしたのか。別れ際に引き止め、後姿をブログに出すから写真を撮らせてと言うと、こちらに正面を向けてしまった。そのまま載せるわけにもいかないので顔はぼかしたが(笑)。
さてと、取り外した山名板のメンテ作業に入ろうとしたが、やはり、これではどう対処してもメンテで済むはずがない。撤去するしかない。いずれ、足尾の山好きなだれかが、山名板を新設してくれるだろう。一応、今度来る際には新しい山名板を用意はするが、あったら、取り付けはしない。今の板とて、山部氏やら栃木山紀行氏の板がなくなったから取り付けただけのことなのだ。今回もまたまともなメンテナンス活動はできなかったか。
メンテ用具を片付け、食事をしていたら、山頂に30分以上もいてしまった。その間、絶えず羽虫が寄ってきてまったく落ち着かなかったが、中に蚊ではないブヨか毒虫もいたようだ。左手首を刺され、その場はキンカンを塗ってごまかしたが、夜になると腫れ上がっていた。ちなみに、タバコを吸い出すと、羽虫もどこかに消えてしまった。
(下る。すっきりした道になっていた)

(いつもながらの好きな風景1)

(いつもながらの好きな風景2)

(いつもながらの好きな風景3)

(深沢古道への下りはヤブ道)

(このヤマイチの古河マークの石標、最初から最後までやたらと目にした。赤倉山は古河の所有地なのだろう)

(1314m標高点付近)

(そして1166m標高点付近)

(深沢古道に出て休憩)

(やはり馬車道でもあったのか)

(左岸尾根への登り)

深沢左岸尾根に出るかどうか迷いながらの下り。茨倉山方面への踏み跡は道になっている。先のピークから、3年前同様に、1314m、1166m標高点を経由して深沢古道に出た。こちらに明瞭な踏み跡はなく、入口にテープがあるだけだった。
古道出合いで休憩したが、このままに車に戻りたいのが本音のところで、実は雨が降り出すのを期待していた。だが、恵みの雨は降らず、仕方なく、この先から左岸尾根に登った。南尾根の岩場で体力を使い果たしてもいたので、80mの登り返しはしこたまつらかった。
(左岸尾根に出る)

雨がポツリときたのは、左岸尾根真下に来てからのことで、もうすでに遅い。尾根に出て、石にペタリと座り込み、ここで0.5リットル入りのペットボトルの水を飲みほす。水はあと1リットルある。さて、雨が降ってきたからには、前回、右に下る作業道の存在が気になってもいたので、それを辿ってみようか。逃げの口実ができた。しかし、雨はいつまで経っても本降りにはならず、気持たせのポツリポツリがずっと続いているだけだった。
(尾根伝いは左上に直進。気になっていた作業道は右。これを選び、さっさと下に出るつもりでいた)

(結局は防火線)

以降のことも前回の記録に記しているので割愛するが、1150m級ピークの手前にあった作業道、これはただの巻き道で、巻き終えたところで、尾根の防火線に合流しただけのことだった。何とも残念。このまま歩き続けなければならなくなってしまった。
(1155.5m三角点)

(途中で消えかけたが、防火線の終点・始点はここらしい。広場のようになっている)

1155.5m三角点を通過して下る。広場のようなところに出て、前回、西に逃げたところにさしかかる。ここまで来たら、気分はもう予定通りに945.2m三角点経由での下りになった。その先は地図ではゲジゲジ状に取り囲まれている。下れないようなら、三角点から戻って鞍部から北西に80mも下れば林道に出られるはず。フィニッシュが急斜面のザレ場下りになるようなら、潔くあきらめよう。自分の車を右下に見ながらの滑落ではサマにならない。ただ、少なくとも出発時に見た末端の感じではすんなりと下れそうだった。
(右にフェンスが出てくる)

(ここはちょっとした展望地だが、見るべきほどの展望はない)

(フェンスを越えて見えた945.2m三角点峰)

右手にフェンスが出てきた。それに沿って緩やかに下る。展望地らしきところに出ると、シカ除けの柵であると記された説明板が置かれている。こんなものがあってもなくともシカ除けであることは理解できるが、「森の緑を取り戻すために、云々」と書かれているところからして、左はヒノキの植林だ。フェンスの向こう側に幼木が目立つから、西側の斜面に植樹をしているのだろうが、シカはどちらにもいるし、まして、フェンスはあちこちで倒れたりしている。設置位置としてはまったく意味のないフェンスになっている。この展望地、地図では崩壊地に接しているところだ。簡単にフェンスから出てみたが、下を覗き込むことはできなかった。かなりの急こう配だ。ここで一服する。ここから、先の945.2m三角点ピークが見えている。くたびれた感覚と身体には、かなり高く見える。
(鞍部にさしかかる。気持ちの良い疎林の広場といった感じになっている)

明瞭な作業道が続く。左の植林は遠ざかり、疎らな自然林が広がる。尾根型は不明瞭になったが、右手側を歩いている限り、迷うことはない。また植林が復活し、一時的に消えたフェンスもまた現れる。雨は依然としてポツリポツリ。
鞍部を通過。ここに戻って林道に下るかもしれないと、下を観察する。結構緩やかで、険しい感じはない。そして、疎林の中の下りだ。安心して下れそうだ。
(945.2m峰への登り返し)

(フェンスが右に続いているから作業道の跡だろうな)

(ちんまりと三角点の石標)

上りになった。本日最後の登りになる。ぜいぜいしながら945.2m三角点に到着。広い草むらに小さな石標が置かれている。四等・点名「深沢」。いよいよ、ここからの下りがラストの課題だ。先に行くと、いきなりシカの親子が飛び出してきて、こちらの存在を確認するや逃げ去った。びっくりした。どうも、向こうから上がって来たようだが、四つ足なら問題なく歩けるのだろう。二本足ならどうなのか。やはり四つ足にならなきゃいけなくなるのか。
(本気モードで先に行くが、かなり不安になっている)

(どうも自分の世界ではないようだ。ここで退却。すでにフェンスはない。フェンスは田元側に続いているのだろう。少なくともフェンスがあれば行っていた)

当初、駐車地から下り予定尾根を眺めた(「見上げた」ではない)際には、なだらかに見えていたが、ここに至って、どうもそんな状況にはない気配を感じている。というのも、945.2m三角点から左に分岐して南の田元交差点に続く尾根は緩やかに先まで見えているのに、こちらの直進尾根は、右は切れ、直進の先がまた見えていない。ちょっと先まで行ってみた。近づいても見えているのは、その先がどうなっているのかわからないコブと、その先の県道沿いの家の屋根で、かなりの落差がある。ここで撤退の決定打となったのは、右下に見えるザレたコブのピークだった。そこを通るわけではないが、おそらく、直進もあのコブのようになっているのだろう。よく見えていないから、余計な想像をしてしまう。
また髪の毛が抜けそうだなと思った。案ずるより産むが易しとは言うが、この先の末端まで行って、下の様子を覗く気にはなれない。おそらく、一時的ながらもザレた急斜面になっているのだろう。こりゃ撤退だな。
(鞍部に戻り)

(石垣を見たりして)

(適当に下ると、ずっと先に林道が見えた)

(林道に出た)

鞍部に戻って下る。ヤブは低く、どこからでも下って行ける。ほどなくして先に林道が見え、あっという間に林道に出た。後は林道歩きだ。歩きながら、せめてあの尾根の先を覗くくらいはすれば良かったかなと思ったりしたが、恐怖心があったのではどうにもならない。いずれ、下から登ってみることにしよう。意外とあっけない尾根だったかもしれない。まぁ、こうして、安全策でドキドキで下ることがなかっただけでも幸いだ。
(林道から。右が1004m。左の凸凹を歩き、向こう側に巻くような形で1004m上に出た)

(下る予定尾根の末端部。ここは何も問題はない)

(まして、末端はこうすんなりとなっている)

林道を10分少々下ると駐車地に着いた。雨のポツリの間隔は短くなりつつある。赤倉山で出会ったネエちゃんの車はすでにない。四角く乾いて残った駐車跡の路面はない。
身体を水に浸した手拭いで拭きたかったが、近くに水場はない。荷物整理をし、着替えしようとしているとようやく雨の降りが強くなった。後ろのドアを開け、その上に傘を開いて着替えをした。雨でもう涼しくなっているので、タオルで身体を拭って着替えをしただけでも、ある程度はさっぱりした。この間のように、替えズボンを忘れることもなかったし。
(ようやく本降りになった。これがもっと早かったら、今日の歩きは変わっていた)

そろそろ帰るかと車のエンジンをかける。ちょうど2時だ。ほぼ同時に雨が本降りになった。
今日の歩き、南尾根の下部には本当に参った。ある程度の予想はしていたものの、自分レベルで戻れない程とは思ってもいなかった。そして、帰路の三角点からの下り。この駐車地からすぐ上のことだ。下る以前に尻込みをしてしまったが、実際はどんな状態なのか確認もできなかった。短時間で済みそうな上りだ。ついでの時にでもここを登ってみることにしよう。その時は、田元までの周回をしてみようか。ついでの赤倉山ということはないだろう。
赤倉山は、たそがれさんの山名板が着いてから行ってませんので、しばらくは見られそうにないですかね?
23日は私も足尾でした.つーても、バリエーションではなく、井戸沢右岸尾根からの中倉山.オーソドックスルートです.驚いたのは、山頂の山名板だけではありません.右岸尾根の1000m辺り、リョウブの木に「孤独のジョニー」の表示板.沢入山と同じデザインかな.が、下がってました.山頂名板は良いとして、帰路の一般路では指導標、日光山中で多く見られる赤黄のマーク板等がいずれもビスで木に打ち付けられていました.林道の取り付きにある指導標も同じ.これらは、ルール違反でしょうね.多分、昔そうしていた年配の人が設置したものなのでしょう.丁寧に造っておられるのに残念ですね.
郵便局辺りに車を駐めたのですか? 正午頃通りましたが気付きませんでした.
「孤独なジョニー」ですか…。ネットで調べたらYAMAP記事に写真が出ていました。ご丁寧に「H1000M」付きですか。この垂れ下がりの板も自転車のチェーンロックでしっかりと固定されているようで、沢入山の板と同じヤカラによるものでしょう。こしらえも同じようだし。今の中倉山は何でも有りの山になりつつありますから、さして驚きもしませんが、本当に孤独を愛するような人なら、こんな安っぽい命名もしないでしょう。ただの目立ちたがり屋なのか、アホなのか、落書き好きなのか。そのうちに、街中の壁に見かけるペンキの落書きが登場してもおかしくはないでしょう。こんな安っぽい標識を置かれて、中倉山も沢入山も気の毒ですよ。ワイヤカッターを持って登りたい心境です。もう自分の世界から離れつつある山ですから、そこまでやる価値があるものなのか…。きれいにしてもだれかが汚す。この繰り返しでしょう。
いやいや、車は郵便局脇に駐めたわけではありません。郵便局脇から入ったすぐのところです。あの林道も、もう普通車ですら入り込むのがきついですね。しばらくの区間はかなり狭くてボコボコですよ。17日に行った時も、普通車がちょっと入り込んで、すぐにバックしてきましたよ。もうちょい我慢すれば、普通の狭い林道になるのですけどね。
赤倉山は、県道側から登ると、どこもかなりの高度感です。おまけに取り付きはザレばかり。ご存知のように、当日はかなり蒸し暑かったですねぇ。井戸沢右岸尾根もかなりだったでしょう。少しはスリリングの震えで暑さも感じないのではと期待したのですが、シャツがべったりと身体にくっつき、そういう中での岩場の登りもまたつらいものがありますね。
1,004mまでのお歩き、まさに手に汗を握る展開で、確かに前週の天気では歩きたくない岩場ですね。地形図を見てもどこをどう歩かれたのか、見当がつきません。
私だったら歩いてみたいリストにはノミネートされないような複雑な尾根です。登り甲斐はありそうですが。しかし岩場での緊張感もさることながら、足下に民家の屋根があるのは、もっとイヤな感じですね。落石させる危険性を感じたら即撤退です(^_^;)
それにしても女性単独ハイカーとは珍しいですね。というよりも人と会うこと自体が足尾の山では一部の山を除いて珍しいですかね。前週もあれだけの時間を歩いたにも関わらず、誰とも会いませんでしたし。
もとは山名板続きで行かれたのですね。記事を見ているだけでヤバイ感じ十分伝わってきますが、山頂のネエチャンとのギャップが激しいです(笑)・・・最後はメンテ後の板のアップを期待していましたが。945.2mは道路から見て末端は?と何度か思ったところですがザレでなければ覗いてみたいです・・・直打ちに標高間違い再利用、自然に還らないもの、山の所有者が居れば撤去でしょう・・悲観的にも感じますが、若年者はそういうことしないだろうし、年配者はいずれいなくなるので落ち着けば戻るのはないかと思いたいです。
それにしても,赤倉山南尾根とは,また凄い処を登ったモノです。DIYさんの記事を拝見して,一応,この尾根のことは知ってましたが,いつものノドカラ場面が語られず,記憶が定かでないというのも,自分が大平山の大薙ぎ脇を登った時と似たような状況だったのだろうと感じました。
岩とスパイクは,毎回,頭を悩ませてますヨ。多孔質なら此れ以上ないくらい安心なんですがネェ。それと,多少使い込んで,ピンが目減りして,周辺のゴムが効かせられれば,大概は滑らなくなるのですが,この前,新品で岩場を通過したら,滑りまくりで怖い思いをしました。
しかし,ネエちゃんも地図を持たずに来るとは(驚)。さすがにまだ,中倉山レベルじゃないんだから,地図というか,読図が出来るようになってから,来てもらいたいモノですヨ。
赤倉山南尾根はどうでも,945三角点峰への登りは,気になりますネ。田元へのお歩きも含めて楽しみにしておりますヨ。
こんなところを登って赤倉山に行くというのは、物好きの世界です。ノミネートするようなところでもありませんよ。真似して滑落でもされていたら、こちらの立場もなくなるので、ルートマップは掲載しませんでした。
ヤマレコの記事には載っていますので、Googleで「赤倉山 南から北へ ヤマレコ」で検索すれば、出てきます。別に、これを頼りに歩いたわけではありませんが、結果的にはこれしかルートがないでしょう。周囲の岩場を見ても、登れないところばかりですからね。
こう、中倉山も赤倉山も頻繁に行っていると、どうしても、歩いたことのないルートを考えたくもなる。さりとて、さらに西側では尾根そのものがボロボロ。今回の歩きが県道側からでは限界ですね。
女性ハイカーにはびっくりしましたよ。中倉山ならともかく、ひなびた赤倉山に一人で歩いて来るんですからね。まして地図も持たずに無防備といったところです。それだれ山歩きの感が鋭いんだろうなと思いましたよ。
気になったところは、奥地ではない限りはさっさと行ってみる。それがモットー(笑)ですから、945.2mはじきに行くことになるでしょう。しかし、今回の南尾根は気になったからすぐに行ったとはいえ、もう二度と寄りつく気はありませんよ。たんに山名板のメンテだけなら、ネエちゃんコースで事足ります。
しかし、945.2mも、その先はもうすでに歩いているし、結局は田元に下ってみるだけのことで、何だかなぁといった気がします。おそらくは2時間コースでしょう。初めから、945.2mは問題なく下れるという前提があれば、他のコースも編み出し可能でしょうが、いきなりの下りでは恐怖だしねぇ。
中倉山の山名板、雪田爺さんの見られた「孤独なジョニー」。私には、「孤高のブナ」の人気の延長と思えるし、ブナの樹の下にあった「待っててね」なんて標識も、ジイチャン、バアチャンがやることでしようか。私には、むしろ年代の低い層がやっていることに思えますけどね。バアチャンが「待っててね」なんて書くでしょうか。だとすれば、ハイカーのレベルが相当に低くなってきたということになりますよ。
ところで、器用なみー猫さん、今度は山名板に挑戦なんてのはいかがでしょうか。
この時期、夏祭りやら納涼祭の準備やらで、そろそろ忙しくなる頃かと思いますが、私のような末端の班長の立場の者ですら、日曜日は神社の御札売りやら草刈で借り出されるようになり、まして、仕事で、自分には関係のない納涼祭りで休日がふいになるケースが続きそうで、しばらくは山どころではなくなるでしょう。まぁ、私の場合は家族サービスというのがないですから、その点だけは幸いと思っています(笑)。
Dさんの記事をご覧になりましたか。私はそれを見て、自分には対象外だなと思っていたのですが、仮面林道ライダーさんが歩こうとしたのを見て挑戦してみる気になったわけですよ。ノドカラについては、ここのところ体調がおかしいのか、よくノドが渇くようになり、今回は恐怖からのものなのか、実はよくわからないのですよ。ただ、どこをどう歩いて来たのか上から見るとよくわからない。一心不乱だったわけですが、瀑泉さんの大平山ケースとはまたケタが違うような気がしますよ。でも、こういうのって困ったもので、一回やっちゃうと、この手のルートが他にないかななんて、おかしなことを考えるようになるものですね。
スパ地下、やはり新品と岩の相性は悪いんでしょうね。目減りしても私は岩場は使えませんね。
今回登場のネエちゃん、どういうわけか、女性の場合、地図読みが苦手な方が多いですから、例外に漏れずでしょうが、自重できるだけでもたいしたものですよ。オッサンはさらに北に向かっての下りでしたし、自分の限界をわきまえていなかったら、おそらく、そのまま行ったと思います。しかし、ネエちゃんが一人で赤倉山とはおそれいります。
どうも、みなさん、945.2m周辺の尾根に興味津々ですねぇ。まぁ様子見て来てよといった暗示かと思いますが、ご心配なく。早めに済ませますよ。松木奥に行かない良い理由にもなりますからね。おそらく、「本当は松木奥に行きたかったのだが…」なんて書き方になるでしょうけど、その点はご了承のほど。
赤倉山も一時期集中的に西から行って以降うっかり2年くらい行ってないので久々に行くのもありかなと思いました。
今回のルート、某Yマップでも2年ほど前に歩かれた人がいて先を越されたしまあいいかと。たそがれさんも歩かれたし結構やばそうだしわさわざいかなくていいかあと思ってます。民家に落石させたら大変ですし。深沢の林道が左岸から右岸に渡る所辺りから今回歩かれた尾根に合流する支尾根で登るのはありかなとも思いましたが。アカヤシオの時季にくれば楽しめるとのことですし。個人的には赤倉山へのルートは西尾根が好きなのですが。
しかし単独の方も面白いですね。地図も持たないのに参考にされたのがオッサンの山旅とは。他にも地図も持たずに地味尾根を歩いているとしたら驚愕です。
Yマップに赤倉山の南尾根記事がありましたか。気になって調べましたが、出てくる赤倉山は白砂山、佐武流山エリアの赤倉山ばかりで、見つけた足尾の赤倉山は通常コース歩きで、さらに探すと苦労しそうなので途中でやめました。もう済みにした尾根ですから、今さらといった感もありますけどね。
林道が左岸から右岸に渡る辺りからということですが、以前、877m手前から南尾根の1170m付近に乗り上げたことがあります。小尾根のようなものですが、先に行くとフェンスがあり、しばらくは雑木と植林の世界でした。すっきりするのは南尾根からでしたね。さらに手前からとなると、標高線も少しは緩やかそうで、意外と快適な歩きが楽しめるかも知れませんね。
今回登場のネエちゃんですが、私はあまり他人様のことを笑える立場にはないんですよ。かなり前、オッサン記事を刷り出して歩いたこともありましたし、地図も持参はしましたが、記事ばかりに頼って、地図を見ることもなかった気がします。今の赤倉山も、上はもうすっかりと刈り払いもされていますので、それを忠実に辿れば、確かに地図は必要もないかもしれません。まして、中倉山の井戸沢右岸尾根を登ってブナを見る。下りは一般道となると、正直のところ地図は不要でしょう。それが足尾の山の一般的なコースの現実ですよ。以前は、そんな一般コースでさえ、踏み跡も頼りないものでしたけど。