「着いた、間違いない、葛西臨海公園水族館。」誰もが眠る丑三つ時。
ピタ、ピタ、と音をたて、小さい影が水族館に忍び寄る。
「長かった、、ここにいるらしいと、この水族館から放流された鮪から噂を聞いて約2年。遠洋マグロ漁船を乗り継いでやっと、やっとここまでたどり着いた。」と、影は呟くとゆっくりペンギンのプールへ近づいていった。
そして小声で呼び掛けた。
「ペン子!ペン子!俺だ、トビ雄だ!ここにいると聞いてきた、助けにきたぞ!」
そう、影はイワトビペンギンのトビ雄。
3年前に泳ぎに出たきり行方不明になった恋人ペン子を探して、はるばる日本の葛西まで旅してきたのである。
もう、それは、それは、大変困難な旅であった。
幾隻もの遠洋マグロ漁船を乗り継ぎ、時にはイルカの背に乗せてもらい、時には海がめの背中にも乗せてもらい、時にはサメに襲われそうになったり、はたまた巨大イカに食われそうになったり、あるいは巨大タコにも食われそうになったり、。
え~、、、海賊船に襲われ有り金全部取られそうになったり、、。
ない!ない!、、、それは、ないって。
などなど、の波乱万丈、千変万化、森羅万象、弱肉強食、2年の冒険のすえようやくたどり着いたのである。
「そいえば、お世話になった遠洋マグロ漁船の氷山 鮪船長はお元気だろうか?」などと、考えながら、また、名を呼ぶトビ雄であった。
「ペン子!いるのか~!ペン子!」
そして、それの呼びかけに一つの返事が!
「トビ雄さん?トビ雄さん?もしかして、あのトビ雄さんなの?」
暗がりからおそるおそる現れた、少し小ぶりのイワトビペンギン。
そう、それは、間違いなくトビ雄の探していた、ペン子であった。
「ああああああ、ペン子!ペン子!間違いなペン子!会いたかった!俺だよ、俺だよ、トビ雄だ!お前を探してここまで旅してきたんだ!」
「ああああああ、あのトビ雄さんなのね!」
近づく2羽。そして、キュキュキュウと鳴きながら抱き合う2羽!
3年の歳月を乗り越えて、再び巡り会う事ができようとは!
ああああああ、感動的!
「ペン子!さあ、一緒に帰ろう!俺たちの生まれ故郷の海に!」
感動に羽を打ち震わせながら、トビ雄が言う。
だが、ペン子は身を硬くし何もかたらない。
「どうしたの?ペン子、、、なぜ何も言わないの?」
不思議に思いトビ雄が尋ねる。
そして、ようやくペン子が口にした言葉は、、、。
「ごめんなさい、、。もう私は自然の海には戻れないわ、、。この3年の水族館暮らしで私の体はすっか弱ってしまったの。もう自然の海で泳ぐ力はないの、、。この狭いプールで人間から餌をもらって暮らす生活に慣れきってしまったのね。」
トビ雄にとって、、、、、驚愕の言葉であった。
「なんだって~!そんな~!そんな~!苦労してここまでたどり着いたのに、、。そんな事になってるなんて~。」
泣きじゃくるトビ雄、跳ね回るトビ雄、バタつかせるトビ雄、ダイブするトビ雄。
その涙は留まることをしらず、トビ雄のほほを滝のように伝うのである。
そして、少し落ち着いたころ。
羽でトビ雄を包みながらペン子が口を開いた。
「本当にごめんなさい、、。私が悪いの、自然を忘れて、安楽な生活を受け入れてしまったの、、。でも、でも、そうするしかなかったのよ~」
ペン子の言葉に、我に返ったトビ雄が言った。
「ごめん、怒ってしまって、、、。そうだよね、そうだよね、。ペンギンに何ができるか?って何もできないよね。受け入れるしかないんだよね、、。」
羽を震わせながら、トビ雄があやまる。
「ねえ、私と一緒にここで暮らさない?漁をしなくても、お魚は食べ放題だし、何もしなくていいのよ。」とペン子。
「ごめん、、、、できないよ、、、、、。あの海を忘れるなんて、、。」
「そう、、、、。」寂しげなペン子の声。
しばし、静寂が2羽を包み込む。
そして、意を決したかのようにトビ雄が言った。
「俺、、、帰るわ、、あの海に帰るわ、、。でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、ペン子逢えてよかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!じゃあ、元気でな!」
くるりと踵を返しトビ雄が遠ざかる。
もう、振り向くことすらせずに、、、。
「トビ雄さん~!!」
追いすがるような、ペン子の声。
そして、。
「人間のばかやろ~~~~~~~~~~~!!!!!」
トビ雄の声が響き渡る、、夜明けまじかの葛西臨海公園であった。
-完-
少々悲しいお話になってしまいましたかなあ~。
でも、水族館は大好きです!
ペンギンも大好きです!
ピタ、ピタ、と音をたて、小さい影が水族館に忍び寄る。
「長かった、、ここにいるらしいと、この水族館から放流された鮪から噂を聞いて約2年。遠洋マグロ漁船を乗り継いでやっと、やっとここまでたどり着いた。」と、影は呟くとゆっくりペンギンのプールへ近づいていった。
そして小声で呼び掛けた。
「ペン子!ペン子!俺だ、トビ雄だ!ここにいると聞いてきた、助けにきたぞ!」
そう、影はイワトビペンギンのトビ雄。
3年前に泳ぎに出たきり行方不明になった恋人ペン子を探して、はるばる日本の葛西まで旅してきたのである。
もう、それは、それは、大変困難な旅であった。
幾隻もの遠洋マグロ漁船を乗り継ぎ、時にはイルカの背に乗せてもらい、時には海がめの背中にも乗せてもらい、時にはサメに襲われそうになったり、はたまた巨大イカに食われそうになったり、あるいは巨大タコにも食われそうになったり、。
え~、、、海賊船に襲われ有り金全部取られそうになったり、、。
ない!ない!、、、それは、ないって。
などなど、の波乱万丈、千変万化、森羅万象、弱肉強食、2年の冒険のすえようやくたどり着いたのである。
「そいえば、お世話になった遠洋マグロ漁船の氷山 鮪船長はお元気だろうか?」などと、考えながら、また、名を呼ぶトビ雄であった。
「ペン子!いるのか~!ペン子!」
そして、それの呼びかけに一つの返事が!
「トビ雄さん?トビ雄さん?もしかして、あのトビ雄さんなの?」
暗がりからおそるおそる現れた、少し小ぶりのイワトビペンギン。
そう、それは、間違いなくトビ雄の探していた、ペン子であった。
「ああああああ、ペン子!ペン子!間違いなペン子!会いたかった!俺だよ、俺だよ、トビ雄だ!お前を探してここまで旅してきたんだ!」
「ああああああ、あのトビ雄さんなのね!」
近づく2羽。そして、キュキュキュウと鳴きながら抱き合う2羽!
3年の歳月を乗り越えて、再び巡り会う事ができようとは!
ああああああ、感動的!
「ペン子!さあ、一緒に帰ろう!俺たちの生まれ故郷の海に!」
感動に羽を打ち震わせながら、トビ雄が言う。
だが、ペン子は身を硬くし何もかたらない。
「どうしたの?ペン子、、、なぜ何も言わないの?」
不思議に思いトビ雄が尋ねる。
そして、ようやくペン子が口にした言葉は、、、。
「ごめんなさい、、。もう私は自然の海には戻れないわ、、。この3年の水族館暮らしで私の体はすっか弱ってしまったの。もう自然の海で泳ぐ力はないの、、。この狭いプールで人間から餌をもらって暮らす生活に慣れきってしまったのね。」
トビ雄にとって、、、、、驚愕の言葉であった。
「なんだって~!そんな~!そんな~!苦労してここまでたどり着いたのに、、。そんな事になってるなんて~。」
泣きじゃくるトビ雄、跳ね回るトビ雄、バタつかせるトビ雄、ダイブするトビ雄。
その涙は留まることをしらず、トビ雄のほほを滝のように伝うのである。
そして、少し落ち着いたころ。
羽でトビ雄を包みながらペン子が口を開いた。
「本当にごめんなさい、、。私が悪いの、自然を忘れて、安楽な生活を受け入れてしまったの、、。でも、でも、そうするしかなかったのよ~」
ペン子の言葉に、我に返ったトビ雄が言った。
「ごめん、怒ってしまって、、、。そうだよね、そうだよね、。ペンギンに何ができるか?って何もできないよね。受け入れるしかないんだよね、、。」
羽を震わせながら、トビ雄があやまる。
「ねえ、私と一緒にここで暮らさない?漁をしなくても、お魚は食べ放題だし、何もしなくていいのよ。」とペン子。
「ごめん、、、、できないよ、、、、、。あの海を忘れるなんて、、。」
「そう、、、、。」寂しげなペン子の声。
しばし、静寂が2羽を包み込む。
そして、意を決したかのようにトビ雄が言った。
「俺、、、帰るわ、、あの海に帰るわ、、。でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、ペン子逢えてよかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!じゃあ、元気でな!」
くるりと踵を返しトビ雄が遠ざかる。
もう、振り向くことすらせずに、、、。
「トビ雄さん~!!」
追いすがるような、ペン子の声。
そして、。
「人間のばかやろ~~~~~~~~~~~!!!!!」
トビ雄の声が響き渡る、、夜明けまじかの葛西臨海公園であった。
-完-
少々悲しいお話になってしまいましたかなあ~。
でも、水族館は大好きです!
ペンギンも大好きです!