かたむいた頭のおもみ受けとめる肩にちからを少しいれてる
くちびるに触れそうになる指先の爪のながさを少し気にする
やわらなか寝息をたてるまよなかは繭のなかへと包まれてゆく
粉雪が舞いちる夜にまけまいとただひたすらに笑顔であった
とめどなく白い涙をふりまいた真冬のそらもあきらかに空
ひなたには僕のことばでつくりだす紙ひこうきを飛ばせ指先
ちょっとだけ傾きたがる重心をささえるための杖もあります
もう一歩かげのなかから踏みだせばほらあきらかに太陽だった
新年って響きがいいね 一瞬にぼくらの思いリフレッシュして
もうすこし近くによればぬくもりは鉄の鎧もとおすのだろう
みずいろのインクでつづる便箋に 紙ヒコーキはひなたに飛ばす
うえむいた こぼれないよう あるきだす 未読メールがあふる真夜中
朝焼けのイチョウ並木はいちめんの黄色いじゅうたん レレレのおじさん
ありったけの力だしてこぐ自転車の荷台にのった否定の重み
少しずつ左に逸れてすれすれにかわす車のミラーのひかり
薄れゆく遠い記憶をなぞるよう肩甲骨をすべる指先
銀色の満員電車をとびおりて新雪の上につける足跡
E3の出口からでて右にあるカフェで待つ。って、駅名がない
上むいた帽子のつばはきみたちが空へ向かってゆくことの証
廃線の駅のベンチのかたすみに取り残された小さなしこり
おそらくは強くなりたい みんなして朝の気分でかき回すスプーン
てのひらにおちた木葉の紅色を感じとります ああ、温かい
割り箸は二膳ください新妻がおもちゃの家で待ってますから
玄関の蘇鉄の緑たしかめて 初雪のふる街へでかける
とりあえず気分をかえて両の手に母の愛した紀文のちくわ
夕暮れに電気保温おでん鍋 慕われる事なく台所で泣く
年老いたタイガーマスクの腰に塗るタイガーバームのようなぬくもり
平和だと思っているからこんなにも隣のポチはかわいいのだろう
*
「笹短歌ドットコム・事件短歌」。
「関ヶ原の戦」
家庭内天下分け目の合戦に父方に付きお小遣い減る
「島原の乱」
明け方に花をさかせた天草をよく日のあたる窓辺にかざる
「ロシア革命」
西麻布ロシア料理のレストランロマノフ亭で告げるさよなら
「太平洋戦争」
・今ここに大和は沈む 時を経て宇宙に旅立つヤマトとなるため
(宇宙=そら)
「朝鮮戦争」
きのうまで姉さんだったやさしさは遠くとおくの38度線
「あさま山荘事件」
・黒ひかる鉄球が飛ぶ雪山に。ヤッホー カップヌードルの海老たち。
「酒鬼薔薇聖斗事件」
しょうねんの首をきりとる少年のほそい手首のゆがんだ指先
「911アメリカ同時多発テロ事件」
全米の双子が泣いたしぬときは一緒がいいねと ビルはくずれた
「イラク戦争」
ジャングルの記憶は砂漠に反射して立ち尽くす兵士の目はブルー
「バグダッド連続爆弾テロ事件」
バグダッド連続テロ死者200人 ニュース見ながら 今夜は鍋で
「三億円事件」
ひっそりと静かに暮らす犯人が毎年買ってる年末ジャンボ
「和歌山毒物カレー事件」
先週のカレーの日から父さんの顔にはなぜか黒い斑点
「地下鉄サリン事件」
くらやみを驕れる傘はひきさいて きみらは何処にゆこうとしたの
「911アメリカ同時多発テロ事件」
銀色の翼よあれがパリの灯だ ツインタワーがちょっと邪魔だね
*
「ミステリー短歌」。
偶然に(?名探偵はたどり着く 雪の山荘、嵐の孤島
有栖川有栖とアリス手をとって不思議の国の迷宮へゆく
密室を楽しむべきだきみとぼく あんな事とかこんな事とか
誰一人あたしの歳を知らぬのはある意味とっても完全犯罪
誰一人不自然であると思わない 眠ってしゃべる毛利小五郎
日常にも謎があるよ たとえば、ほら、昨夜のきみの行動とか
今時に、だからそんなに洋館が残ってるのかよ長野県には
今時に、だからそんなに南海の孤島があるのか瀬戸内海には
短剣を突き立てている横顔があなたに似てるかぼちゃの上に
とりあえず名探偵だと認めるわ でもふけは嫌い ほんとキライ
さよならの短い文字に暗号が隠されている。きっと、きっと。ねえ。
奪われたつもりでいたの犯人があなたでないのは判っていました
だからさ、死体が発見された時点でさ、完全犯罪と違うんじゃないの
*
「つかむ」。
あたたかいサンルームのなかまどろみに両手でつかむやわらかい声
流木をつかむ右手はしびれても左手がある まだ沈まない
*
「美容整形の歌」。
湖にうかんでしずむ小胸たち プロテーゼバッグを掴みそこねて
いいのだなフォークリフトを使ってのフェイスリフトは命懸けだぞ
カシミアのセーターのようなこのズラにさよならを告げる 植毛手術の朝
くちびるに触れそうになる指先の爪のながさを少し気にする
やわらなか寝息をたてるまよなかは繭のなかへと包まれてゆく
粉雪が舞いちる夜にまけまいとただひたすらに笑顔であった
とめどなく白い涙をふりまいた真冬のそらもあきらかに空
ひなたには僕のことばでつくりだす紙ひこうきを飛ばせ指先
ちょっとだけ傾きたがる重心をささえるための杖もあります
もう一歩かげのなかから踏みだせばほらあきらかに太陽だった
新年って響きがいいね 一瞬にぼくらの思いリフレッシュして
もうすこし近くによればぬくもりは鉄の鎧もとおすのだろう
みずいろのインクでつづる便箋に 紙ヒコーキはひなたに飛ばす
うえむいた こぼれないよう あるきだす 未読メールがあふる真夜中
朝焼けのイチョウ並木はいちめんの黄色いじゅうたん レレレのおじさん
ありったけの力だしてこぐ自転車の荷台にのった否定の重み
少しずつ左に逸れてすれすれにかわす車のミラーのひかり
薄れゆく遠い記憶をなぞるよう肩甲骨をすべる指先
銀色の満員電車をとびおりて新雪の上につける足跡
E3の出口からでて右にあるカフェで待つ。って、駅名がない
上むいた帽子のつばはきみたちが空へ向かってゆくことの証
廃線の駅のベンチのかたすみに取り残された小さなしこり
おそらくは強くなりたい みんなして朝の気分でかき回すスプーン
てのひらにおちた木葉の紅色を感じとります ああ、温かい
割り箸は二膳ください新妻がおもちゃの家で待ってますから
玄関の蘇鉄の緑たしかめて 初雪のふる街へでかける
とりあえず気分をかえて両の手に母の愛した紀文のちくわ
夕暮れに電気保温おでん鍋 慕われる事なく台所で泣く
年老いたタイガーマスクの腰に塗るタイガーバームのようなぬくもり
平和だと思っているからこんなにも隣のポチはかわいいのだろう
*
「笹短歌ドットコム・事件短歌」。
「関ヶ原の戦」
家庭内天下分け目の合戦に父方に付きお小遣い減る
「島原の乱」
明け方に花をさかせた天草をよく日のあたる窓辺にかざる
「ロシア革命」
西麻布ロシア料理のレストランロマノフ亭で告げるさよなら
「太平洋戦争」
・今ここに大和は沈む 時を経て宇宙に旅立つヤマトとなるため
(宇宙=そら)
「朝鮮戦争」
きのうまで姉さんだったやさしさは遠くとおくの38度線
「あさま山荘事件」
・黒ひかる鉄球が飛ぶ雪山に。ヤッホー カップヌードルの海老たち。
「酒鬼薔薇聖斗事件」
しょうねんの首をきりとる少年のほそい手首のゆがんだ指先
「911アメリカ同時多発テロ事件」
全米の双子が泣いたしぬときは一緒がいいねと ビルはくずれた
「イラク戦争」
ジャングルの記憶は砂漠に反射して立ち尽くす兵士の目はブルー
「バグダッド連続爆弾テロ事件」
バグダッド連続テロ死者200人 ニュース見ながら 今夜は鍋で
「三億円事件」
ひっそりと静かに暮らす犯人が毎年買ってる年末ジャンボ
「和歌山毒物カレー事件」
先週のカレーの日から父さんの顔にはなぜか黒い斑点
「地下鉄サリン事件」
くらやみを驕れる傘はひきさいて きみらは何処にゆこうとしたの
「911アメリカ同時多発テロ事件」
銀色の翼よあれがパリの灯だ ツインタワーがちょっと邪魔だね
*
「ミステリー短歌」。
偶然に(?名探偵はたどり着く 雪の山荘、嵐の孤島
有栖川有栖とアリス手をとって不思議の国の迷宮へゆく
密室を楽しむべきだきみとぼく あんな事とかこんな事とか
誰一人あたしの歳を知らぬのはある意味とっても完全犯罪
誰一人不自然であると思わない 眠ってしゃべる毛利小五郎
日常にも謎があるよ たとえば、ほら、昨夜のきみの行動とか
今時に、だからそんなに洋館が残ってるのかよ長野県には
今時に、だからそんなに南海の孤島があるのか瀬戸内海には
短剣を突き立てている横顔があなたに似てるかぼちゃの上に
とりあえず名探偵だと認めるわ でもふけは嫌い ほんとキライ
さよならの短い文字に暗号が隠されている。きっと、きっと。ねえ。
奪われたつもりでいたの犯人があなたでないのは判っていました
だからさ、死体が発見された時点でさ、完全犯罪と違うんじゃないの
*
「つかむ」。
あたたかいサンルームのなかまどろみに両手でつかむやわらかい声
流木をつかむ右手はしびれても左手がある まだ沈まない
*
「美容整形の歌」。
湖にうかんでしずむ小胸たち プロテーゼバッグを掴みそこねて
いいのだなフォークリフトを使ってのフェイスリフトは命懸けだぞ
カシミアのセーターのようなこのズラにさよならを告げる 植毛手術の朝