「犯人は貴方です!」名探偵金田一鰹介の手がおもむろにある人物を指差した。
ユニバーサル・センチュリー0098年5月13日。
地球内外で相変わらず戦争の混乱が続くさなか、小笠原諸島のある海域でその事件は起こった。
鮪世界きってのやり手実業家、太平鮪回遊氏が何物かによって絞殺されたのである。
即時、北太平洋遠洋署に捜査本部が置かれ遠洋署の名物迷警部南鮪が捜査に乗り出したのである。
しかし、捜査は困難を極め、動機がありそうな関係者のアリバイも完璧であり、ここで捜査は暗礁に乗り上げたかに思えた。
そこで、南鮪警部は北太平洋きっての名探偵と誉高い、金田一鰹介に捜査の手助けを依頼するのである。
そして物語は、全ての謎を解いた金田一鰹介が犯人を告発する為に、関係者一同をお決まりの故太平鮪氏のリビングルームに集めたところから始まる。
「犯人は貴方です!」
名探偵、金田一鰹介が指差した相手は、太平鮪氏が社長であった、株式会社遠洋産業副社長、目鉢真具郎であった。
「えっ?俺かい?俺にはちゃんとしたアリバイもあるし、社長の腹心の部下と呼ばれていたんだよ。何の証拠があってそんなことを言う!」
目鉢真具郎の反論ももっともである。
しかし、金田一鰹介は臆する事無く、語り始めた。
「そうですね、証拠はあります。でも、この事件、実は30年前のある事件を発端としているのです。まず、そこからお話したいと思います。」
そういって、金田一鰹介は30年前のある事件を語り始めた。
「それは、太平鮪氏がまだ駆け出しの実業家だったころ。同じく目鉢さんあなたもその頃事業を始めたばかりでしたね。二人はある意味ライバルでした。そんな時です、目鉢さんの失踪事件が起きたのです。」
「えぅぅぅ、あの事件のことを調べたのか?」と少し動揺を見せる目鉢真具郎であった。
「そうです、目鉢さんあなたは30年前カタクチイワシを大量に仕入れるため、禁断の父島南東海域まで出かけましたね。わたしは、そこまで出張し30年前の事件を知る、大王イカと会ってきました。」
「えっ、あの大王イカはまだ生きていたのか??」とますます、動揺する目鉢真具郎であった。
そして、それに追い討ちをかけるように、金田一鰹介の話は続くのである。
「そう、全ては明らかになりました。目鉢さん、あなたは、あの海域に出かけ、マグロはえ縄漁の釣り針にかかってしまいましたね。そして、生死の境を彷徨いました。しかし、神のご加護か?あなたは、偶然にもはえ縄を切り裂き助かった。そして、約一年の時を経て、この小笠原海域まで戻ってきた。全て、傷ついたあなたを介抱した大王イカから聞きました。しかし、帰ってきてみると、あなたの会社は太平鮪氏の会社に吸収され、家族は行方不明、あなたは、太平鮪氏を恨みました。そして、名を変え太平鮪氏の会社に潜り込んだのです。目鉢さんあなたの本当の名前は、木肌赤海ですね!」と、金田一鰹介は目鉢の本当の名前を告げたのである。
「あぅぅ、、、そこまで判ってるのか、、。しかし、それでも今回の事件での私のアリバイは崩れないじゃないか!何か証拠があると言ったな。それを、早く見せろ!」あくまでも、30年前の事はこの件と無関係と主張する目鉢改め木肌であった。
「しょうが、ありませんね。じゃ証拠をお見せしましょう。その前に、そもそも、絞殺されたと言うのが推理を間違った方向へ導いているのです。木肌さんは30年前の事件の時のはえ縄を持っていました。そうです、それを使って太平鮪氏を窒息死させようとしたのです。ご存知のように、我々回遊魚は泳がないと死んでしまいます。木肌さんは太平鮪氏の日ごろの回遊コースを知っていました。そして、そこにはえ縄を仕掛けたのです。太平鮪氏はその罠にかかり窒息死してしまったのです。太平鮪氏は絞殺などされていません、偶然に縄が首に巻きつ痕がついただけなのです。木肌さんは事件後その場所に行き、太平鮪氏とはえ縄を黒潮に乗せて流してしまいました。なので、死亡推定時刻でのアリバイが成立するのです。太平鮪氏は戻ってこない家族の心配から偶然にも発見されました。しかし、凶器のはえ縄は発見されていませんでした。私は、南鮪警部にアドバイスを与え、凶器のはえ縄を探してもらいました。今年は、黒潮が蛇行しているのです。それを計算に入れればおそらくこのポイントに流れ着くだろうと推理できました。そして発見しました。南鮪警部例の物を。」
金田一鰹介の呼びかけに応じ、南鮪警部が凶器のはえ縄を持ってきた。
「木肌これが、凶器のはえ縄だ、太平鮪氏とお前の鱗が付着していた。これで言い逃れはできないぞ!観念しろ!」
南鮪警部に決定的な証拠を突きつけられ、更に更に動揺する木肌であった。
「うぅぅぅぅぅぅぅ、そうか、そこまで判ってしまったのか、、し、し、しかたない!」
と、その時、突然!木肌は太平鮪氏の一人娘トロ子の後ろに回る。そしてそのエラには黒光りするピストルが挟まれていた。
「これ以上近づくと、トロ子の命はないぞ!さがれ!さがれ!」木肌の突然の暴挙にみな一時後ろに下がる。
しかし、突如大きな声で金田一鰹介が叫ぶ。
「おやめなさい!そのお嬢さんはあなたの本当のお子さんなのですよ!」
金田一鰹介の突然の発言に皆の動きが固まる。
「えっ、何だって?だって、あの子は行方不明で死んだんじゃなかったのか?」と木肌。
「いいえ、そんなことはありません。では、あなたが行方不明になっていた一年の間のお話をしましょう。あなたがいなくなって、奥さんは心労から病気になりました。そして、すぐに亡くなってしまったのです。生まれたばかりの幼子が残されました。太平鮪氏はそれを不憫に思い、あなたの会社を買い取り、娘さんを養女として迎えたのです。全てはあなたの思い込みだったのですよ。」
「そんな~、、、、。じゃじゃ今までの事はいったい何だったんだ、、、。」崩れ落ちる木肌、ピストルが床に転がる。
「さあ、南鮪警部。尾びれ錠を!」
金田一鰹介に促されて、南鮪警部が尾びれ錠をかける。
ガチャ!!
「さあ、いくぞ!、暫くは刑に服してもらわないといけないけどな、あんなお嬢さんがいるんだ、立派に更正してこい。」
うなだれながら、木肌がついていく。
その後姿を見送る、金田一鰹介。
そして、トロ子。
「おとうさあ~ん!!私待ってるからね~!!きっと会いに来てね~!!」
トロ子の声が、広いリビングルームに響き渡る。
名探偵金田一鰹介。
彼の行くところに迷宮入りはない。
しかし、事件を解決しても満足もない。
ちょびっとだけ寂しさが残るのである・・・・。
-完-
調子こいて、こないな分野にもチャレンジしてみましたが、、。
あの~、、、穴はたくさんあるかと思いま~す!!
なので、、厳しい突っ込みはご容赦くださいね~!!