「2008年5月」。

題詠blog2008：042～050。

あきらめたシーラカンスはとげとげのかなしい鱗　海へと帰る

宝くじ売り場のよこに絹糸をしずかにつむぐ糸繰りぐるま

ゆつくりとひとみをとじる　また夏のうたごえをきく風鈴職人

くらやみがとりいるまえにもういちど火をしるす楽譜からはじめる

設定のさみしいひとがゆつくりとまぜるな危険で初期化する夜

外気温じりじりあがりとけだしたひまわり分子まちにあふれる

だれのものでもない風にまぎれこむためにつながる凧糸を切る

すこしずつなれるのだろう礼服にか黒いネクタイをしめながら

沈黙が支配してゆくカフェテラス午後あめになる確率も高まる

日本史。

　むくはれぬ武士の亡霊よびよせてパチンコ信長の野望すすめてをりぬ

　占ひの館「卑弥呼」に入り浸るハイキングウォーキング鈴木似の姉

　よしつねの霊あらはれて横綱に古モンゴル語にて苦言をていす

・狩野派はイケメンホスト集団と理解してゐるキャバ嬢えひ子

　平等をといた諭吉の肖像をみることがすくないといふ不平等

　大宰府に単身赴任のすがはらが不倫相手のうめ子よびよせ

　とぶとりの明日香の都に最強のウマ・ヤドといふニュータイプ在り

　茜さす紫野行きバス停にハーレクインロマンス讀むぬかたのおほきみ

　本能寺。だれもなにも教へてはくれなゐ。けつきよくは信長もさみしい

　「何故ジェットストリームアタックでガンダムに勝てないのだ」と毛利元就

風。

朝凪をむかえたように静寂な関係がいま海風にかわる

風鈴を売りに来た少年が悲しむビル風のいたましい街

マッハ５の風にもまけずサイボーグ００９のマフラーはなびく

幾億の世界の鐘を鳴らすため風の指揮者が振り下ろすタクト

ゆっくりと風になります　窓辺にはあなたのような風鈴がある

家中のこうもり傘を捧げもち弟が「風になる！」といい放つ屋根