カツオくんはかもめ第三小学校5年3組&『まぐろ袋ブログ』

どうもこんにちは、富田林薫(とんだばやしかおる)です。
遠洋マグロ漁船乗りです(ぇ?

遥かな思い叶うのか?でも、でも、母なる海は君を呼んでいる!

2004-05-27 11:54:44 | Weblog
「着いた、間違いない、葛西臨海公園水族館。」誰もが眠る丑三つ時。
ピタ、ピタ、と音をたて、小さい影が水族館に忍び寄る。
「長かった、、ここにいるらしいと、この水族館から放流された鮪から噂を聞いて約2年。遠洋マグロ漁船を乗り継いでやっと、やっとここまでたどり着いた。」と、影は呟くとゆっくりペンギンのプールへ近づいていった。
そして小声で呼び掛けた。
「ペン子!ペン子!俺だ、トビ雄だ!ここにいると聞いてきた、助けにきたぞ!」

そう、影はイワトビペンギンのトビ雄。
3年前に泳ぎに出たきり行方不明になった恋人ペン子を探して、はるばる日本の葛西まで旅してきたのである。
もう、それは、それは、大変困難な旅であった。
幾隻もの遠洋マグロ漁船を乗り継ぎ、時にはイルカの背に乗せてもらい、時には海がめの背中にも乗せてもらい、時にはサメに襲われそうになったり、はたまた巨大イカに食われそうになったり、あるいは巨大タコにも食われそうになったり、。
え~、、、海賊船に襲われ有り金全部取られそうになったり、、。
ない!ない!、、、それは、ないって。
などなど、の波乱万丈、千変万化、森羅万象、弱肉強食、2年の冒険のすえようやくたどり着いたのである。
「そいえば、お世話になった遠洋マグロ漁船の氷山 鮪船長はお元気だろうか?」などと、考えながら、また、名を呼ぶトビ雄であった。

「ペン子!いるのか~!ペン子!」
そして、それの呼びかけに一つの返事が!
「トビ雄さん?トビ雄さん?もしかして、あのトビ雄さんなの?」
暗がりからおそるおそる現れた、少し小ぶりのイワトビペンギン。
そう、それは、間違いなくトビ雄の探していた、ペン子であった。
「ああああああ、ペン子!ペン子!間違いなペン子!会いたかった!俺だよ、俺だよ、トビ雄だ!お前を探してここまで旅してきたんだ!」
「ああああああ、あのトビ雄さんなのね!」
近づく2羽。そして、キュキュキュウと鳴きながら抱き合う2羽!
3年の歳月を乗り越えて、再び巡り会う事ができようとは!
ああああああ、感動的!
「ペン子!さあ、一緒に帰ろう!俺たちの生まれ故郷の海に!」
感動に羽を打ち震わせながら、トビ雄が言う。
だが、ペン子は身を硬くし何もかたらない。
「どうしたの?ペン子、、、なぜ何も言わないの?」
不思議に思いトビ雄が尋ねる。
そして、ようやくペン子が口にした言葉は、、、。
「ごめんなさい、、。もう私は自然の海には戻れないわ、、。この3年の水族館暮らしで私の体はすっか弱ってしまったの。もう自然の海で泳ぐ力はないの、、。この狭いプールで人間から餌をもらって暮らす生活に慣れきってしまったのね。」
トビ雄にとって、、、、、驚愕の言葉であった。
「なんだって~!そんな~!そんな~!苦労してここまでたどり着いたのに、、。そんな事になってるなんて~。」
泣きじゃくるトビ雄、跳ね回るトビ雄、バタつかせるトビ雄、ダイブするトビ雄。
その涙は留まることをしらず、トビ雄のほほを滝のように伝うのである。
そして、少し落ち着いたころ。
羽でトビ雄を包みながらペン子が口を開いた。
「本当にごめんなさい、、。私が悪いの、自然を忘れて、安楽な生活を受け入れてしまったの、、。でも、でも、そうするしかなかったのよ~」
ペン子の言葉に、我に返ったトビ雄が言った。
「ごめん、怒ってしまって、、、。そうだよね、そうだよね、。ペンギンに何ができるか?って何もできないよね。受け入れるしかないんだよね、、。」
羽を震わせながら、トビ雄があやまる。
「ねえ、私と一緒にここで暮らさない?漁をしなくても、お魚は食べ放題だし、何もしなくていいのよ。」とペン子。
「ごめん、、、、できないよ、、、、、。あの海を忘れるなんて、、。」
「そう、、、、。」寂しげなペン子の声。
しばし、静寂が2羽を包み込む。
そして、意を決したかのようにトビ雄が言った。
「俺、、、帰るわ、、あの海に帰るわ、、。でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、でも、ペン子逢えてよかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!よかったよ!じゃあ、元気でな!」

くるりと踵を返しトビ雄が遠ざかる。
もう、振り向くことすらせずに、、、。



「トビ雄さん~!!」
追いすがるような、ペン子の声。



そして、。



「人間のばかやろ~~~~~~~~~~~!!!!!」

トビ雄の声が響き渡る、、夜明けまじかの葛西臨海公園であった。



-完-






少々悲しいお話になってしまいましたかなあ~。
でも、水族館は大好きです!
ペンギンも大好きです!

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2 コメント

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グッジョブ (羽鳥)
2004-05-27 18:19:40
天然水族館(白泉社)みたいな話ですな…ちと切ないのが大きな違いですけど。

どうせなら通い夫になったら? トビ雄さん(笑)



ちなみに、小樽の水族館ではかつて水族館で飼育されているメス目当てに野生の雄トドが柵を越えて入りこみ、そのまま住み着いてしまった事があったとか。

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羽鳥さま! (maguro726)
2004-05-31 13:30:17
コメントありがとうございます。

>通い夫になったら? トビ雄さん(笑)

おおぅ!!このアイデア!続編ができそうです!!

小樽の水族館は!すごいですね~!!

野生のトドが住み着いちやうのか!!

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