3月23日(金)。
うちの熱帯獣医学センターに5ヶ月間いた、ウガンダ、マケレレ大学の学生で修士課程をやっているクリスティンが、無事検査と分析を終え、日曜日にウガンダに帰ることになった。
真面目な彼女は、朝早くから仕事を始め、よく終バスが来る7時まで頑張っていた。土日もよく来て仕事をしていた甲斐があって、予定より早く検査も終わったそうだ。先月はポスター発表までこなして、短期間のうちに立派な仕事を成し遂げた。
彼女はもともと分子生物学専攻で、アフリカ眠り病を起こす寄生虫の遺伝子を増幅するPCRという検査をしていた。
ヒトの眠り病には主に2種類あって、これまで東アフリカと西アフリカで分布が分かれていたのだが、これが丁度ウガンダで、内戦後NGOの支援も相まって、里帰りする人と一緒に、寄生虫に感染している牛を大量に東から西へと送り込んでしまった。このせいで、東側の寄生虫は西へ西へと広がっていき、検査も治療法も異なる西の寄生虫とクロスオーバー直前の状態にある。
昨年から今年に掛けて、このクロスオーバーが危ぶまれ、重要な感染源である牛に寄生虫を殺す薬を投与しているのだが、彼女はこの牛をモニターするため検査していたのだ。
PCRに長けている彼女も、全て一人で出来るわけではない。センターで唯一のルガンダ語の話し相手である僕に、よくポスターの作り方やら、統計分析やらを聞いてきたので、その度に一緒に作業してあげた。何しろ、いつも締め切り直前に駆け込んでくるので、とっさの問題解決には悩まされたこともあったが、振り返ってみるとドタバタで面白かった。様々なドタバタのお陰で、データが満足に揃っていない状態での分析はいい経験になった。重要な研究結果だけに、教える自分とクリスティンが一番最初に、現場で何が起きているか知ることになるのだ。
その彼女が、今日涙をにじませて僕の部屋に最終日の報告にやって来た。しばらく皆といたので、別れが惜しいのだという。僕にも会えなくなると言ったが、ウガンダですぐ会うのだし、彼女も指導教官のスーから、修士課程終了後は博士課程でエディンバラに来るように伝えられていたので、悲しむことなど何もないのだが。
しかし、その感情の豊かさと純粋さが、ウガンダの人らしい。冗談をかかさず、誰とも仲良くやって行ける。ウガンダでの日々を思い出した。
彼女が言っていたのは、頑張って努力し続ければ、きっとそれ相応の道が開けるということ。あの涙も、心の底から一生懸命取り組んだからこそ出てきたのだと思う。
帰国日の日曜の朝、彼女の布団と枕、マグカップを預かるため会いに行くのだが、きっとまた最後までドタバタしているんだろう。正直言ってこちらも寂しくなるが、とても良い出会いが出来て良かった。
うちの熱帯獣医学センターに5ヶ月間いた、ウガンダ、マケレレ大学の学生で修士課程をやっているクリスティンが、無事検査と分析を終え、日曜日にウガンダに帰ることになった。
真面目な彼女は、朝早くから仕事を始め、よく終バスが来る7時まで頑張っていた。土日もよく来て仕事をしていた甲斐があって、予定より早く検査も終わったそうだ。先月はポスター発表までこなして、短期間のうちに立派な仕事を成し遂げた。
彼女はもともと分子生物学専攻で、アフリカ眠り病を起こす寄生虫の遺伝子を増幅するPCRという検査をしていた。
ヒトの眠り病には主に2種類あって、これまで東アフリカと西アフリカで分布が分かれていたのだが、これが丁度ウガンダで、内戦後NGOの支援も相まって、里帰りする人と一緒に、寄生虫に感染している牛を大量に東から西へと送り込んでしまった。このせいで、東側の寄生虫は西へ西へと広がっていき、検査も治療法も異なる西の寄生虫とクロスオーバー直前の状態にある。
昨年から今年に掛けて、このクロスオーバーが危ぶまれ、重要な感染源である牛に寄生虫を殺す薬を投与しているのだが、彼女はこの牛をモニターするため検査していたのだ。
PCRに長けている彼女も、全て一人で出来るわけではない。センターで唯一のルガンダ語の話し相手である僕に、よくポスターの作り方やら、統計分析やらを聞いてきたので、その度に一緒に作業してあげた。何しろ、いつも締め切り直前に駆け込んでくるので、とっさの問題解決には悩まされたこともあったが、振り返ってみるとドタバタで面白かった。様々なドタバタのお陰で、データが満足に揃っていない状態での分析はいい経験になった。重要な研究結果だけに、教える自分とクリスティンが一番最初に、現場で何が起きているか知ることになるのだ。
その彼女が、今日涙をにじませて僕の部屋に最終日の報告にやって来た。しばらく皆といたので、別れが惜しいのだという。僕にも会えなくなると言ったが、ウガンダですぐ会うのだし、彼女も指導教官のスーから、修士課程終了後は博士課程でエディンバラに来るように伝えられていたので、悲しむことなど何もないのだが。
しかし、その感情の豊かさと純粋さが、ウガンダの人らしい。冗談をかかさず、誰とも仲良くやって行ける。ウガンダでの日々を思い出した。
彼女が言っていたのは、頑張って努力し続ければ、きっとそれ相応の道が開けるということ。あの涙も、心の底から一生懸命取り組んだからこそ出てきたのだと思う。
帰国日の日曜の朝、彼女の布団と枕、マグカップを預かるため会いに行くのだが、きっとまた最後までドタバタしているんだろう。正直言ってこちらも寂しくなるが、とても良い出会いが出来て良かった。