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紫陽花の饒舌

2011-07-08 05:31:28 | Scene いつか見た遠い空

この初夏は、旧交を温めたり、新しいご縁が生まれたり、そんな時間がとても多く。
懐かしい笑顔や新鮮な世界に触れた帰りに、梅雨で洗われた都内の公園をしばしば漫ろ歩いた。
湿った木立の間を抜けながら、ここ2,3か月の間に書棚から発掘しては読み散らした
濫読のかけらが、アブクのようにふつふつ浮かんでくる。

「科学技術が鳴らす警笛の破壊的な音に包まれ、
グローバリゼーションという新たな奴隷制度と貪欲な権力争いに侵略され、
収益優先の重圧の下に崩壊する世界であっても、友情と愛情は存在する」

――アンリ・カルティエ=ブレッソン 1998.5.15
『こころの眼 写真をめぐるエセー』(岩波書店)より

どんな過酷な世界にも、友情と愛情は存在する。
だから私はこうして生きていられる。
 

夏闇の中で出逢う花の色は、どこか青褪めていて、
夕暮れや夜明けの空色がそのまま染み込んだように見える。


そういえば、先日 カラーコーディネーターの人にみてもらったら、
私に合うカラーは四季でいうと青みがかったサマー系なのだそう。
クリアなシルバーやラベンダー、サックスブルー、ローズピンク、オフホワイト…みんなすきな色。
  



すっかり葉桜となった代々木公園のソメイヨシノ(左)にはかわいい実がぷくぷくと。
自力では結実しない筈なので、別の桜の花粉を受粉したらしい。烏のいいおやつになるね。

拙宅のベランダの枇杷の木も今年は去年より豊作に(右)。何度もブログに書いているけど、
12年前に食べて植木鉢に捨てた茂木枇杷の種が、私の背丈より伸びてここまで成長したしだい。
まだ小ぶりの時に烏が味見しに来たけど、2粒と食べなかったので、よほど渋かったのかと
思っていたら、、実がふっくら熟した頃、うっかりしている間に全ての実が忽然と消えていた。
烏の冷静かつ手際のいいシゴトっぷりには、実に学ぶべきものがあるなぁ。(ぽかん)

・・・


少し遡るけれど、6月直前、取材で今年3度目の軽井沢STUDO TORICO合宿に。
到着日はまたもや霧模様。それでも軽井沢は訪れる度に新緑が深まり、花の彩りが増していた。
恒例の星野温泉トンボの湯であったまり、ストーブを囲みながら
キムリエさん&キムナオさんたちと夜更けまでお喋りする時間はとても愉しく。
目覚めは、木立に響き渡る小鳥たちのさえずり。


取材翌日はキムリエさんの案内で雨上がりの旧軽井沢を散策。昔ながらの別荘地の小径には
アジェ風の二股道が多い。アラーキーじゃないけど、“旧軽アジェ”な光景が現れる度、わくわく。
雨に濡れた新緑の間に間に見える別荘は、年季の入った昭和モダンな匂いのするものに魅かれた。


今春逝去したソニー元会長大賀典雄氏が建てた 軽井沢大賀ホールの前を通ると
ちょうどホール内で演奏中だったらしいレクイエムが聴こえてきた(左)。
美智子さんの皇室ロマンスで知られるテニスコートの横には、ヴォーリズなどが設立に尽力したと
いわれる木造の「軽井沢ユニオン・チヤアチ」があり(右)、染み込む光がふうわり柔らかかった。



軽井沢時間ともいうべきゆるやかなときは、東京の街なかに戻ると
魔法がとけてしまうようにあっという間に消えてしまうのだけど、
なにかいい夢を見て目覚めたような清々しい後味だけは、不思議と残る。

・・・

毎年楽しみにしていたギャラリー五峯の北欧アンティークフェアが、今年で終わりと聞き
6月最終日に駆けつけた。大好きなスティグリンドベリやロールストランドなどの掘出物に包まれ、
しばし忘我。『かもめ食堂』に出てくるキノコみたいな柄の絵皿はアラビアのアンティークとか。
ウィンクしているフクロウはリサ・ラーソンの猫より好みだった。刺繍や硝子、陶器オブジェの
モチーフも、蝶や小鳥など小動物系が多く、とにかくツボ。友人への贈り物用に幾つか入手した。
自分用には大好きなグスタフスベリのカップ&ソーサー〈ROSA〉を連れ帰り、家で早速コーヒーを
いれてみた。〈ADAM〉や〈ROSENFALT〉なども愛用しているけど、北欧のアンティークは
実用的なアートだと思っている。実際に使うことでますます魅力が増してくる。

 

・・・
6月は、うれしいことにイタリア料理店にしばしばご縁があり。
VMDの山川さんのお誘いで、神楽坂にできた
「トラットリア フィオリトゥーラ」のオープニングパーティへ。
オープンキッチンを囲むカウンター席が目を引くお店のデザインは、
マリメッコ(表参道)などの店舗を手掛ける小林恭氏とか。ここではなかなか面白い方々と出逢った。
レイちゃん&オーリエさんとも久々に合流した勢いで、表参道に移動して朝までお喋り。



さらにその翌週、赤坂の南イタリア魚介料理店「ラ・スコリエーラ」で行われた、
プロのバリスタさんによるカッフェ教室へ。実際に淹れていただいたエスプレッソを
クレマ、アロマ、ボディ、フレーバー、アフターテイストの5点に留意してテイスティングしたり、
カプチーノにお絵かきしたり。イタリア取材経験も豊富な“Signora”と、すぐに歌いだすバリスタさんの
トークも楽しく、南イタリアの雰囲気溢れるお店でのフレッシュな魚介満載のランチもBuonissimo!!

私の初挑戦お絵かきカプチーノ(右)。奥の性悪そうなウサギは『時計仕掛けのオレンジ』のイメージ。
(実はお絵かきするより、淹れたら一刻も早く飲んだ方が、より美味しくいただけるそうですが)


お店の厨房にあるエスプレッソマシン(左)は、例えるなら「フェラーリ級」のスペックだそう。
それを使ってプロのバリスタさんが淹れるESPRESSOは、鼻に抜ける力強いアロマも
飲み終えた後の余韻も見事。やはり自宅で私が使い込んだビアレッティのマキネッタ(右)で
淹れるMOKAとは全然違う。マキネッタはそれはそれで味わい深いのだけど、
例えるなら、F1とは無縁の少しへこんだ旧型チンクエチェントといったところか。


さらにこの翌週には、上京したキムリエさんやカッシー、レイちゃんと
予約のとれない店の予約がとれたので、久々に「ベットラ」へ。おなかいっぱい。


これはベットラではなく、オーリエさん&レイちゃんと打ち合わせ帰りにお茶した
原宿のラヴァッツアァで食べた南イタリアの名物焼き菓子スフォリアテッラ。
三葉虫みたいな外形だけど、甲羅のような皮はカリッ、中はリコッタチーズがトロリで美味。
…と、まるで食べ歩きライフを送っているかのように見えたら、それは誤解なので念のため。
この蒸し暑い中、日々最もよく食しているのは自宅で作る蕎麦&ソーメンと茗荷&新生姜のピクルス。
シンプルなのが夏の信条です。

・・・

3.11後、自分のなかで時間の流れ方がどこか変わった気がする。
自分の内奥へ内奥へと掘っていく流れと、自分の外にどんどんコミットしていく流れ。
いまはまだうまくつかめないのだけど、もうすぐ身近に新たな動きもある。
続きは週末に。
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