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根津美術館、春の芳香

2010-01-19 06:29:32 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵

年始から相変わらず少々立て込んでいる日々。案外気持ちはゆったりしているのだけど。
先週、隈研吾氏のインタビュー前に、彼が改装を手がけた根津美術館に行ってきた。
楡家通りの先にあるエントランスには、竹を配したこんなアプローチがあり
そこを歩く間、とても不思議な、そして心地よい気配が 身体をスッと通り抜けていった。


建物も以前とはがらりと様相が変った。母と数年前に訪れた時は
あの有名なカキツバタの金屏風ばかりが記憶に残ったが、
新しい根津美術館は 硝子越しに臨める庭園と融合した佇まいの美しさに まず目を奪われた。
オリエンタルな展示物を表情豊かに見せつつ、隅々まで見事に均整がとれているのだ。
それも、これみよがしの意匠をこらしてあるわけではなく、あくまでも密やかに。


館内で、やはり下見に来ていたkanon編集部の佐藤さんとばったり! なんだかうれしい。
彼女と一緒に夕暮の庭園を巡り、緑陰に抱かれたNEZUCAFEでコーヒーブレイク。
ふと見ると、赤瀬川原平さんもお茶していた。


翌朝、隈さんの事務所でインタビュー。「クマさん」と呼びかける響きがなんだか面白い。
例えば『反オブジェクト』の冒頭の一文「一言で要約すれば、自己中心的で威圧的な建築を
批判したかったのである」にも顕著なように、ご本人も単刀直入で明晰。
気取らずもったいぶらず、屈託がない。海外を飛び回る多忙な中で取材できたことに感謝!
インタビューは2月末発売予定の『kanon vol.18』をご覧ください。(原稿、これから書くのだけど)


クマさん取材の後は、新宿の「柿傳」(ロゴの書がby川端康成)で対談取材。
この昭和モダニズムなしつらえ、なんだかホテルオークラのメインロビーに似ていると思ったら
手がけたのは同じ谷口吉郎の設計だそう。ちょっと低めのラウンジチェア、大変好みです。



谷口吉郎は金沢の九谷焼窯元の生まれなのだとか。
偶然だが、今週はスパイラルで九谷焼展を観た。
1/20まで開催中の「上出・九谷・惠悟 九谷焼コネクション」だ。
根津美術館で遇った佐藤さんに「面白いからぜひ!」と勧められたのだが、ほんとこれは必見。

九谷の伝統ある上出長右エ門窯の5代目による作品の数々、
どれも伝統を軽やかに飛び越えるアヴァンギャルドぶり。
左はエレガントな髑髏型のお菓子壺、右はキッチュな九谷焼のバナナ!

伝統工芸を受け継ぐ若手の2代目3代目のインタビューをする機会が時折りあるが、
その多くは伝統を継承しながら、時にはそれを壊し、独自の新境地を切り拓いている。
伝統を守ることに命をかける職人と、伝統を新しい価値に昇華する芸術家。
長い目で見ると、伝統を壊すことこそが伝統を守ることになるという逆説もありなのでは、と思う。



今日明日は久しぶりにあたたかくなるようだが、ここのところ恐ろしく寒かった。
よりにもよって、寒波が来てどっと冷え込んだ先週明け、早朝からスタジオ撮影取材だった。


しかも、スタジオが外と同じようにひえひえ! 終日、コートにマフラーをぐるぐるに巻き、
カイロをポケットに握り締めて過ごすこと12時間強。撮影で使った花も人間同様しおしおに。。
スタイリストさんが棄てようとしていたので、その子たちをいただいてきてあたたかな部屋に活けた。

翌朝目覚めたら、萎れうなだれていた花たちが、嘘のようにしゃきっと復活!
ストックというアブラナ科の花で、香りが甘酸っぱく清々しい。
数日前から窓辺にいたオレンジのフリージアとあいまって、一足先に春の芳香。

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