空飛ぶ自由人・2

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映画『ヤング・ウーマン・アンド・シー』

2024年08月07日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

1926年に英仏海峡を泳いで渡った
最初の女性を描くドラマ。

コニー・アイランドの精肉店の娘、
トゥルーディ・イーダリーは、
姉に付いて行ったプールで水泳に目覚める。
オーストラリアのスイマーと対決して勝利を収めるなど、
実力を付けたトゥルーディは、
1924年に開催されたパリ・オリンピックにも出場するが、
船で渡航中、全く練習をさせてもらえなかったため、惨敗。
「やはり女はダメだ」という世論に翻弄される。
当時の女性差別のすさまじさに驚く。
とにかく、女性は男性より劣る存在とされていた。
このままでは、父の精肉店を継いで
結婚するしかないという自分の運命を切り開くために、
英仏海峡を女性で初めて泳ぎ切る挑戦をするが・・・

英仏海峡と言えば、
最狭部のドーバー海峡が最短距離で34キロだが、
南西から北東へ流れる早い潮流に流されるため、
実際に泳ぐ距離は60キロ程と、もっと長い。
水温が低く、体力を奪われ、
夜を徹して泳ぐことによる精神的疲労もきつい。
更に、浅瀬には伴走船が入れないため、
たった一人で孤独に耐えなければならず、
方向を見失って、溺れ死ぬ者が続出した。

記録に残っている中で
最初にドーバー海峡を泳いで渡ったのは、
イギリス人男性のマシュー・ウェッブで、
1875年8月25日にイギリスのドーバーを出発し、
21時間45分かかってフランスのカレーに到着した

記録が公認されるのは
水着だけを着用し、己の力のみで泳いだ場合だけで、
ウェットスーツを着用したり
何らかの補助を用いたりした場合は公認されない。
誰かの手が触れただけで失格とされる。

当時、英仏海峡対横断は、
“強い男性”だけが成し遂げられるとされていた。
女性には不可能だという周囲の声をはねのけ、
女性として挑戦したトゥルーディ・イーダリーの生涯。
トゥルーディは自分の意志を強く持ち、
目標達成のためにはどんなことにも真摯に取り組む努力家。
女性が泳ぐことが一般的でなかった当時、
周りから白い目で見られても諦めず、
姉と献身的なコーチらの力強いサポートを受けながら、
偉業を成し遂げた。

資金を出させるために
有力者と交渉して、
コニーアイランドからニュージャージーまで
時間内に泳いで渡るなど、映画的要素も加える。
最初の海峡横断は失敗。
(その失敗の原因は、いかにもディズニー的。)
再度の挑戦で、周囲の応援に後押しされて成功するまでの
軌跡をていねいに描いて、引き付けられる。
途中、クラゲで一杯の海を泳ぎ切り、
最後の浅瀬でたった一人、
方向を見失ったトゥルーディーを助けたものは・・・
良い意味でアメリカ的な展開に胸が踊り、
感動的だ。

トゥルーディ・イーダリーを演ずるのは、
「スター・ウォーズ」の新シリーズ(エピソード7・8・9)で
主役レイを演じたデイジー・リドリー


これがいい。
明確な意志を持つ女性を演じ切った。
似た映画「ナイアド」(2023) は、
フロリダ海峡を泳いだ60代の女性を描いたものだが、
その主人公が相当クセの強い女性だったのに対して、
若い女性の夢と希望を担う演技が胸を打つ。
やはりこの手の映画は主人公にどれだけ感情移入できるかだが、
デイジーの魅力がそれを成功させた。
また、父親役や先駆者役など、
アメリカにはベテランの良い役者が沢山いる。

トゥルーディの記録は、14時間31分。
それまでの男性の記録を2時間も上回った。
それも、平泳ぎではなく、
クロールで泳いだから。
それだけでも驚異的だ。

最後にニューヨークの大通りでの凱旋パレードが描かれ、
「スポーツ界における女性の地位向上に貢献した」
と文字が出る。
トゥルーディは、その後、
聴力を失い(少女期にかかったはしかのため)
聾唖者の水泳教育に生涯を捧げ、
2003年、98歳で亡くなった。

監督はヨアヒム・ローニング
カメラワーク、人間の描写も的確。
製作は「トップガン」のジェリー・ブラッカイマー

アメリカの良き時代の成功物語として、
胸躍る、よく出来た作品だった。

なお、Wikipediaには、
女性の名前は「ガートルード・キャロライン・イーダリー」と
なっているが、はて。

アメリカでは5月に公開され、高い評価を得たが、
日本では、Disny+の配信でのみ公開。
                                        

 



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