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映画『お隣さんはヒトラー?』

2024年08月03日 23時00分00秒 | 映画関係

[映画紹介]

ポーランド出身のユダヤ人、ポルスキー。    
ポーランドにいた頃、
ナチの強制収容所で、
家族全員を亡くし、
今は、南米コロンビアの田舎で
一人寂しい老後を送っていた。

1960年。
第二次世界大戦終結から15年が経過し、
巷では、アルゼンチンに潜伏していた
ナチの戦犯、アイヒマンが逮捕されたのが話題だった頃、
隣家に一人のドイツ人の老人が引っ越してきた。
境界線の塀のことで揉め、
サングラスを取った男の顔を見た途端、
ポルスキーに戦慄が走る。
ヒトラーだ! 
昔、チェスの世界大会に出た時、
視察に現れたヒトラーを間近に見たことがあるが、
あの時の眼と同じだ。

ポルスキーは、イスラエル大使館に訴えるが、
ヒトラーは戦争末期に自殺したとされているし、
(遺体は焼かれ、確認されていない)
その手の情報はいやというほどもたらされているので、
認知症の老人の勘違いとして相手にされない。

関連本を取り寄せ、
ヒトラーについての情報を集めるポルスキー。
あの男がヒトラーだとしたら、71歳。
年齢的には合致する。


カメラを買い、隣家の監視を続けていると、
隣人の男・ヘルツォークと行き来するようになり、
飲む機会も出て来るが、
関係の資料では、ヒトラーは酒を飲まないという。
なんとか老人のサインを取ろうとしたりするが、うまくいかない。
そのうち、老人がポルスキーの肖像画を描いてくれる言いだす。
肖像画を受け取り、昔ヒトラーが描いた絵と比べると、
筆遣いがよく似ている。
(ヒトラーが青年時代、画家を志して、
 ウィーンの美術学校を受験(不合格)したのは有名な話。)
再び大使館に持ち込むが、またもや相手にされない。

そのうち、夜中に隣家を訪ねて来た不審な男たちが、
老人に向かい、ある動作をするのを目撃し、
疑惑は確信に変わる。
そして・・・

アイヒマンの逃亡などもあり、
ヒトラーが生きている、という話は、時々出て来る。
その中でも、
疑いを抱く隣人が、ホロコーストで家族を失い、
ただひとり生き延びたユダヤ人、というのが
出色の設定
自分から全てを奪った、
あの憎きヒトラー。
一度だけ会った時の「記憶」という証拠に
悩まされる老ポルスキー。

という宿命の二人なのに、
老人同士は、
次第に距離を縮め、親近感まで起こってしまうのだ。

ヒトラーが生きていて逮捕された、という事実はないから、
映画の結末は分かっているが、
では、隣の老人は何者
その結果はネタバレできないが、
そうとは予測していなかった。
分かってみれば、様々な伏線が張り巡らされていたことが分かる。
ヒトラーであるかを確認する最終手段には笑える。

テイストは、頑固な老人同士のコメディー風。
しかし、背後には深刻な戦争の傷跡が存在する。
正体が分かった後、
ヘルツォークの苦悩を
もう少していねいに描いていたら、
もっと味わい深くなったのではないか。

監督は、ロシア出身イスラエル在住のユダヤ人であるレオン・プルドフスキー
ポルスキー役に、デビッド・ヘイマン


ヘルツォーク役を、ウド・キア


この二人の老優の演技がなんとも言えずいい。

近所の住人が
ナチの戦犯だったという類似作品は、
スティーヴン・キング原作の映画「ゴールデンボーイ」
(ブライアン・シンガー監督 1998)がある。


本作とは全く違う、キング風の展開だが。

5段階評価の「4」

シネスイッチ銀座他で上映中。

 



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