Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『once ダブリンの街角で』

2007-11-17 23:24:45 | Cinema な時間

 

インディーズ映画界で最近話題になっているアイルランド映画『once ダブリンの街角で』(2006 年 監督:ジョン・カーニー)。原題は『once』。たった「1回」が重要なのに、邦題にはまた余計な説明が・・・

アメリカでたった2館での上映から口コミで広がったという作品。この作品が気になったのは、私が足しげくチェックしている韓国の映画サイトでも話題になっており、韓国で上映されたインディーズ映画としては画期的な動員数 (スクリーン数 12 、5 週間、10 万人動員) らしく、絶賛されていたから。制作費は約 1,800 万円だそうだ。

アイルランド、ダブリンの街で、ギター 1 本のストリートミュージシャンの男(グレン・ハンサード)が、チェコ移民の女(マルケタ・イルグロヴァ)と出会い、音楽を通じて心を通わせるという音楽映画

この作品の主人公のハンサードは、アイルランドで国民的な人気を誇るロックバンド「ザ・フレイムス(The Frames)」のフロントマンで、イルグロヴァもチェコの新鋭シンガーソングライター。この作品に流れる楽曲が、本当にこの 2 人が書き下ろしたものというところが、なんとも心憎い。

アイルランドの音楽というと、バグパイプの音色やリバーダンスで流れる伝統音楽とか、U2 ぐらいしか思い起こせないのだけど、この作品の音楽はなかなか味わいのある魅力的なメロディラインが印象的。

ハンディカメラで撮影したような、まるでドキュメンタリーを見ているような映像なので、この 2人のカップルの実話じゃないよね?と思わせるようなリアリティも感じさせてくれる。と思ったら、なんと、実際にこの 2 人は交際しているそうだ。

ミュージカル映画のように唐突に歌い出したりせず、音楽がセリフを代弁するようなストーリーとして構成されているため、音楽の挿入も自然で、ミュージカルがちょっと苦手でも安心。

男がギターで奏でる自作の曲に、女がピアノ伴奏で合わせていく場面や、男が作曲したメロディに女が詩をつけて歌いあげる場面、仲間を募ってスタジオでレコーディングをする様子など、音を作り上げていく過程は盛り上がってなかなか楽しい

男も女も名前がないところも、また意味深。「1回きり」の男女には名前が不要ってことなのかしら。この「1回きり」は、一気に燃え上がってしまう肉体的な意味の1回ではなく、出会いのチャンスは1回、そして音楽も同じ。同じ音ははないということなのかな。触れ合いそうで触れ合わず、交わりそうで交わらず、寄り添いそうで寄り添わず、音楽が 2 人の言葉に取って代わるという手法。感傷的な切なさは控え目で、惹かれあっているはずなのに、手繰り寄せきれない距離感にかえってグッ ときてしまった・・・

さっそく O.S.T.をポチり、毎日ヘビロテで聴いている。日本では先月の TIFF で紹介され、2人とも来日していたのね~。

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