Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『グリーン・フィッシュ』(DVD)

2007-05-22 00:16:24 | J.J.Y. Filmography


(Image source: nkino)

何でまた今ごろになって『グリーン・フィッシュ(초록 물고기)』(1997年2月 監督:イ・チャンドン)。公開当時話題になり、その年の国内外の映画賞総なめ、名作と語り継がれているのだけど、未見だった。
出演:ハン・ソッキュ、ムン・ソングン、シム・ヘジン

先日、友人がいきなり「ウチにこれあったから、貴女にあげる」と言われ、ちゃっかりいただいた代物。「ひゃ~~ぁ、ウレシイぃぃ」と、満面の笑みを浮かべた私に友人が、「あれっ、シュリの人(=ハン・ソッキュ)のファンだったっけ?」。えっ、いや、違うけど、この作品に今私が ALL IN  している人の下積み時代が・・・とか言っても、四天王ぐらいしか分からない彼女にとってはちんぷんかんぷんだろうし・・・この監督がね・・・とか言ってごまかした。

実はイ・チャンドン監督の作品、多方面から絶賛されている『ペパーミントキャンディ』とか『オアシス』とは個人的に相性があまりよくない(どんな相性なんだか?)。でも、今週には封切りになる、チョン・ドヨン&ソン・ガンホの『密陽』は注目しているので、その前に監督デビュー作のこれをチェックしておこうかと思って・・・

この作品には、ちょっと知った顔がぞろぞろ出てくる。ソン・ガンホは頭の悪そうなワルのチンピラで、『王の男』の狂王チョン・ジニョンは卵売り、イ・ムンシクは見逃しそうなぐらいちょい役のケンカっぱやい不良青年?、ヒロインは「宮」のユル君オンマのシム・へジンだし、そして酔っ払いのキャバレー客がジェヨン・・・と、人に歴史アリ・・・。ハン・ソッキュの実兄ハン・ソンギュも出演している。

チョン・ジニョンのファンサイトで知ったのだけど、チョン・ジニョンは、この作品の助監督としてもクレジットされている。この頃、俳優を諦めて演出に回る決意をしていたらしい。ところが監督から突然ハン・ソッキュの三番目の兄という役で出演するように言われたのだとか。

そして、チョン・ジェヨンは、キャバレーの酔っ払い客の
役。後ろ姿がほとんどで、キャバレー店内が薄暗く、顔も正面からはロクに映っておらず、声で分かったけど、あっけなくハン・ソッキュにボコボコに・・・お客様なのに。哀れ・・・。この間約30秒。
 
 

で、作品はというと・・・前半は、やっぱりこの監督との相性は悪いわー、と思いながら早送りにしようかとも思ったけど、端役のジェヨンを見逃したら、この映画を観た目的の半分が・・・(笑)。

↑このジェヨン登場後あたりから、後半の話は面白くなってくるので、この30秒シーンはターニングポイント的な場面かもしれません(無理やりこじつけ? )。

除隊したマクトン(ハン・ソッキュ)は、除隊したものの就職したあてはなく、家族(母、兄3人(長兄:脳性まひ障害者、次兄:刑事、三兄:卵売り)、妹)は日々の生活に追われバラバラに暮らしている。マクトンには夢や希望もなく、汽車の中で出逢った女ミエ(シム・ヘジン)との縁で、言われるがままに、アンダーグラウンド組織の世界に足を踏み入れる。たったひとつの夢は、家族が一緒に暮らし食堂を経営すること。組織のボス テゴン(ムン・ソングン)の信任を得て、ボスの情婦ミエにほのかな恋心を抱きながらも、組織に身を投じて、破滅へ・・・

韓国ノワールによく見る世界でもあり、アンダーグラウンドの世界と、一般庶民の家族のリアルな生活とか平行線で描かれているところが面白い。マクトンの家族はバラバラに暮らしていたのに、皮肉にもマクトンが裏の世界で果てることによって、家族は再び結束することになる。マクトンは小さな夢を叶えたわけだが、その夢の構図に自分の姿がないことに気付かなかったことが哀れでもある。

この作品が公開されたのが今から10年前。時代背景的には、この映画が公開された1997年の後半に韓国は前代未聞の経済危機に陥るので、そのちょっと前の作品。そんな世相を反映してか、登場する人物キャラにあまり覇気とか生気、活気が感じられず、何かに呑み込まれそうな予感のする作品。

この作品の公開前にどれほどのノワール作品があり、公開後の作品群との比較を語れるほど見識もないのだが、私が観てきた韓国映画のノワールというのは、この作品の後のものばかり・・・ さほどこの作品から何か新鮮なものを感じることができなかったのは、『グリーンフィッシュ』が韓国ノワールのマイルストーンなのかと思ったりする。

10年前の作品でも、最近の作品でも、相変わらずヤクザたちは穴掘って人を脅迫するし、組織内で頭角をあらわすために手を汚すこともいとわないのも同じ。「若さ」が無駄に費やされる。ヤクザのシステムは変わることがなくて、システムそのものの存在感も変わっていない。

ちょっと前にトピにあげた『卑劣な街』は、どこにも救いのない世界が哀しかったのだけど、『グリーンフィッシュ』には、大きなものに呑みこまれそうでいて、まだ救いがどこかに残っているような気がして少しだけ安心できた