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引っ越しました~
by lotusruby

『許されざるもの』

2007-03-25 23:30:17 | K-Movie Notes


(Image source: nkino)

韓国アートフィルム・ショーケース 第3弾『許されざるもの』(2005年 監督:ユン・ジョンビン)を見に行った。

この作品は2005年10月の釜山国際映画祭で、絶賛を浴び、一躍大注目となった作品。学生の卒業制作作品だったそうだが。

私がこの作品について知ったのは、たまたま「あなたの好きな韓国映画のこんな記事あったよ」と友人が教えてくれた英国の Financial Times 紙(通称FT)の記事。FT といえば、英国の経済専門紙なのだけど、映画評なども掲載されている。そんなところで、この作品が、釜山映画祭で、聴衆からも批評家からも絶賛されたことが紹介されていた。(「Pusan film festival: Movies gather critcal acclaim」 published : Nov. 16, 2005)

厳しい軍隊のシステムが、いかにしてそのシステムに不適応な若者を破壊するかという、悲劇の物語である。物語が、軍隊生活でのほろ苦い記憶を韓国の男性に思い出させる。

「この映画を通して、私たちがすべて忘れて隠そうとした記憶を喚起するつもりです。誰が正しくて、誰が間違っているのでしょうか。これは個々の問題ではありません。この映画では、私たちが感じる憤怒を描きたい。それは、軍隊生活で直接的な暴力を加えた人間に対する単純な怒りではなく、そうした暴力的な状況を作り出す社会制度や構造に対する怒りです。」 (監督ユン・ジョンビン)

この作品は、兵役に服する若い兵士たちの物語。軍隊という一般的な日常とはまったく異質な状況に置かれた若者が2年間どのようにそこで過ごすしているのか・・・

厳しい上下関係から生み出される歪んだ人間関係や、良心や正義が通らない理不尽な体質。そうした状況にうまく適応して世渡り上手な者も居れば、適応できない者もいる。しかし両者とも、精神的・心理的な葛藤が存在する。そして、そんな葛藤をカミングアウトさせることさえ、ある種のタブーのようだ。この作品は、そんなタブーを少し破ってみたのかもしれない。

この兵役が韓国男子を男子たらしめる通過儀礼であり、男性中心といわれる韓国社会のシンボリックな一面でもある。軍隊生活になんとか適応させ無事に除隊する者と、適応できないまま悲劇を迎える者の対比も哀しい

釜山でこの作品が上映された際、エンドクレジットを見た観客が騒然としたそうだが、実は、私もびっくり  した。軍隊生活で何をやってもトロくていじめられるモヤシっ子の新米兵士を演じた役者と監督の名前が同じだったから・・・

この作品、当初170分以上あったらしいが、120分にまとめたそうだ。個人的には、120分でも長いと感じたのだけど、監督が経験した兵役の2年間は、170分でも収まらないのかもしれない。

主演のハ・ジョンウ・・・ かなりイケてる。この人目当てだけで観るには、テーマが重すぎるけど、見て損はない作品。