ライオンミドリ la cantine du lionmidori

気の利いたつまみ、おいしいナチュラルワイン、ちょっと珍しいお酒、幸せなチーズ、明日も頑張れる気持ちになるデザート。

ミドリさんのブログ 12 

2018-08-30 11:32:38 | ミドリさんのブログ
ライオンミドリの壁に鎮座する、いつもここで「大きいポスター」と紹介しているポスター。
160㎝×120㎝、実際に見ると「こんな大きなポスターがあるんですか?」と驚かれる方もしばしば、そんな大きさのポスターです。

これは、フランスの地下鉄の駅に掲示されるサイズのもので、
業界では「メトロサイズ」というなんとも素敵な名前がついています。

主人とパリに行った時、地下鉄の駅で隣に歩いていたはずの主人の姿がいきなり見当たらない。
驚いて見回すと、後ろの方で、脚立で作業をしているお兄さんと何やら話している。
なんと、ポスターを張り替えているお兄さんに、その剥がしたポスターをもらえないかと交渉していたのです。

最初は怪訝な顔をしていたお兄さんも、
にっこり笑って、くるくるっとポスターを丸めて渡してくれました。

私はフランス語が全く聞き取れないので後で聞いてみると、
「僕はこの映画が本当に好きなんだ、ぜひ日本に持って帰りたい。」
と言って子犬のような目をするよう心掛けた、との事。

あの慣れた感じは初犯じゃないな・・・

ほとんどのポスターは、パリのヴィンテージポスター屋さん、のような所で入手していますが、
時々こんな風に、駅構内や街中の映画館で手に入れる事もあります。

お気づきの方もいらっしゃると思いますが、このメトロサイズのポスター、ほとんどのものに折り目がついています。
フランスではこのように折ってポスターなどを保管する事が多いらしく最初はびっくりしましたが、
日本よりもこういった紙媒体がアートとしてとても大事にされており、大量の紙製品を効率よく保管するためにそうなったのでないか、と言われているそうです。

時々、折り目のついていないものに出会う事もあり、少々割高ですが探していたものだったりすると迷わず購入します。
しかし、丸めて筒に入れて持ち帰ろうと思っても、機内に持ち込めるサイズ規定から外れてしまうので、結局折りたたんで持ち帰って来ていました。

ところがある年、試しに筒に入れて持ち帰ってみようと試みた主人。
日本の手荷物検査の人とは違って、イカツい検査員が構えているシャルル・ド・ゴールの手荷物検査場。
見るからにサイズ規定外の荷物なので、当然「これは何?」と聞かれ、
主人は「ポスターです、映画のポスター!」と、また子犬の目で訴えてみたそうです。
そうしたら、「しょうがねぇな。」という顔をして通してくれた。

映画に弱く、紙に優しいフランス人!

でも、私は何となく、この折り目も素敵だなぁなんて思っています。
基本的には「折れてたって、ちょっとくらい破けてたって、別に気にしない、素敵なものは素敵。」
フランス人のその感覚。
高級な漆器を何気なく普段使いしている輪島の人とか、大島紬の着物をあちこち縫い直して何十年も着ているおばあちゃんの映像を観た時の感じ。
かっこいいなぁ、こういうのが本物って感じがするなぁ、と思います。

気に入っちゃったから、毎日手の届くところに。目の届く所に。
そうやってアートと言われるようなものも自分の生活の中に溶け込ませている。
大事にしすぎず、一緒に、思い出を刻む。
そして子供たちもまたそれらを見て、そのフォルムを、色彩を、目に焼きつけて、時々ビリビリに破いたり壊したりして、その感性を引き継いでいく。
日常が、楽しくて、豊かで、伸びやかだなぁ!
なんて事を思ったりします。

ライオンミドリのポスターをご覧になる時は、
あぁ、この折り目のついた子、フランス人がよいしょ、と迷いもなく折ったんだ、
そしてここのシェフに見初められてフランスからわざわざやって来たんだ、
おっ、この子は無事にシャルル・ド・ゴールを通過したんだ!
と思って、ほんの少し楽しんで頂けたらと思います。



反対側のホームのポスターを物色している様子。



今年のカンヌ映画祭の公式ポスター。『気狂いピエロ』のワンシーン。折り目付き。
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