会社を設立するには登記所に対し「印鑑届」が必要です。印鑑届そのものはよく知らなくても、会社の「印鑑証明書」は多くの方がご存知のことと思います。印鑑証明書は、印鑑届がされた印鑑の印影を登記所が証明する書類です。
未だ施行されていませんが、このたび商業登記法改正により、印鑑届は「なくてもよい」ことになりました。その背景として下記リンクの報道のとおり、「印鑑届があるために会社の設立手続きが(外国に比べて)遅い」という認識があります。印鑑届を廃止することで、「通常は最長3日かかる手続きが24時間以内に短縮できる見込み」なんだとか。
それでは、どうして会社設立手続きが早くなければならないのでしょうか?下記リンクの報道のとおり、「(日本の起業率は)英国など欧米より低い。(会社)設立の煩雑な手続きが一因」という認識があるようです。
どちらも嘘ですよ。真っ赤な大ウソ。
会社設立は「登記」が効力要件です。つまり登記がされなければ会社は誕生しません。本日公表されている東京法務局本局の「登記完了予定日」は下記のとおりです。
(クリックで拡大)
4月30日に申請した会社登記(当然、設立の登記も含みます)の完了予定日は、1か月以上先、6月8日です。「通常は最長3日」?どこの世界の話ですか?たかが印鑑の登録に1か月もかかるんですか?スキャナーで読み取るだけですよ。その印鑑が廃止されれば1か月が1日に短縮できるんですか?
「印鑑届のために登記に時間がかかる」なんて、登記所サイドのただの言い訳。それも苦し紛れの、すぐバレる言い訳です。印鑑を廃止しただけで1か月を1日に短縮できるわけがない。つまり登記が遅いのには「別の原因」がある。ごくごく普通に考えればそういう結論になります。
起業率についてはどうでしょうか?「会社設立手続きに時間と手間がかかるから起業しない」?そんなワケないでしょう!(爆笑)ほんの少し考えりゃ誰でも分かることです。だって、どうしても「会社設立に時間がかかってイヤ」なら、個人事業で起業すればいいだけの話でしょう。個人起業しておいて後で法人成りしたっていいでしょう。わが国で、法人起業に比べて個人起業が著しく多いなんてデータありますか?法人であれ個人であれ、わが国は起業そのものが少ない。それが事実です。
わが国の起業率が低いのは、社会のセーフティネットが貧弱で「起業の失敗=貧困、破滅」という図式があるから。起業したくても、怖くてできないんです。背景に、公の起業支援制度(特に資金面)が貧弱であること、個人保証に頼ってばかりの金融制度もあります。
マスコミもさぁ、政府・法務省の言うことをそのままタレ流ししてないで少しは背景を探れよ。せめて関係者に取材してウラ取れよ。日本司法書士会連合会に取材したか?私のところに電話でもすればいくらでも説明してやるぞ。そんなんだからバカにされるんだよ、マスコミ。
無論、(会社設立登記に限らず)登記が迅速化されることには大賛成です。手続きに1か月以上もかかってたんじゃ話になりません。そのためには「印鑑届の廃止」なんて些末なことに無駄な努力をしていないで、本質的な取り組みをして欲しいものです。そのための具体的方法は、また後日。
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