あまり知られていませんが、一定の森林(山林)の土地を取得した場合、「所有者届出書」を出さなくてはなりません。森林法という法律でそのことが規定されています。罰則もありますので、届出を怠ると過料(一種の罰金)が科される可能性があります。たぶん、それほど厳しく運用されていないと思うので、実際に過料が科された例はほとんどないでしょうが。
この届出義務は、相続で森林を取得した場合でも同じです。というより、森林の売買などまず皆無ですから、所有者の変更はほとんど相続が原因でしょう。
この所有者届出、下記のとおり非常に問題があります。本当に何とかして欲しいです。
問題点1 届出が必要な森林かどうか分からない
所有者届出が必要なのは、およそ森林であれば全部という訳ではなく、「地域森林計画」の対象となっている森林だけです。で、この地域森林計画なるものの範囲が、まるで分かりません。そもそも皆さん、地域森林計画なんて聞いたことありますか?私はこの所有者届出が義務化されるまで聞いたこともありませんでした。世の中の99.9%の人はそんなモン知らないでしょう。「林野行政」に携わっている0.1%の人しか興味関心がないものと思われます。
群馬県では地域森林計画に関する図面をインターネットで一応公開しています。が、まことに奇妙キテレツな図面で、見ても何が何だか分かりません。だいたい、図面上で計画範囲を示されたって、所有者届出の対象森林かどうかなんて分かりませんよ。対象地は地番で公表して欲しいです、地番で。
森林の所有者ならその対象かどうか知っているはず?地元のお父っつぁんはもしかしたら、万が一程度には、知っていたかも知れません。だけど、その肝心のお父っつぁんが死んで相続の場面なんですよ。都会に出て行った息子・娘が知る訳ないでしょう。所有者届出をする、その現実の場面を想定して欲しいものです。
罰則付で義務付けするなら、役所側でその対象範囲を明確にしろと言いたいです。所在・地番を特定して「この土地は所有者届出が必要」と公表すべきです。それができないなら義務付けもするべきではありません。
問題点2 図面が添付書類となっている
森林の所有者届出書には、土地の所在を示す図面を添付しなければなりません・・・と言われたって、森林の図面なんてある訳がありません。図面を作成するために必要なのは?そう、測量です。で、誰が何のために森林を何十万円もかけて測量すると言うのですか?全く測量の機会も動機もありません。したがって、森林の図面なんて所有者は持ってません。市販もされていません。住宅地図とは訳が違うのですよ。
森林の図面を持っているとしたら、むしろ役所側です。上記のとおり、奇妙な地図をインターネット公開しているくらいですからね。図面を持っている役所に「届出」をするに際し、図面を持っていない所有者に図面を添付させる――なんて、矛盾にも程があります。役所は自ら保有している地図を参照すれば良い、それだけの話ではありませんか?
仕方なく法務局備え付けの地図(公図)を添付するのですが、恐らく、役所側でも公図など添付されても意味がないでしょう。森林の公図は周囲に目印・目標になるものが何もないので、いったい「どこの土地」なのか、見てもちっとも分からないからです。それでも他に「図面」らしきものは存在しませんから、役に立たないことが分かり切っている公図を添付してやります。
すると、こう言われます。
役所「あの~周囲の状況が分かる地図はありませんか・・・?」
岡住「それしかありません!」
と、厳しく拒絶します。嫌なら却下しろ、「図面を添付」という届出要件は満たしてるんだ。
以上のような問題点があるのですが、恐らくこれらは解決不可能ですよ。なぜなら、現に役所側が、森林の所在・地番をきちんと把握できていないからです。上記でわざと「(対象地の)所在・地番を公表しろ」と言いましたが、無理でしょうね、把握もしてないんですから。さらに図面上の位置も筆界も地番で確定できず、元々の所有者だって不完全にしか分かっていないでしょう。つまり役所は、自分たちが分からないものを、国民から届出(罰則付)させることで情報収集しようとしているのです。言葉は悪くなりますが、「テメーの不備」を国民に押し付けようとしています。そんな魂胆でいるから、所有者不明土地も相続登記未了土地も増える一方なんじゃないですか?実際のところ所有者届出だって、ほとんど協力が得られていないのではないですか?
以前から頭に来ているこの問題、先日、林野庁の「意見」の窓口に上記趣旨を提出しました。上記よりもさらに「キツく」意見しました。答えは来るかなぁ?「無視する」に3,000点かな。3,000円じゃないよ(笑)賭博は違法です、検察官殿。
【2020.6.19追記】
林野庁から回答が来ました。大意、以下のとおりです。
1対象地の所在地番については令和元年から林地台帳ができたので、それを参照してください。
2図面は何でもいいです。インターネット上の地図におおまかな位置を示したものでいいです。何なら林地台帳に地図が附属しているので、その写しをもらってください。
さて。
林地台帳の整備は朗報ですね。どれほどの精度なのか分かりませんが、今後利用しましょう。今後は、「林地台帳に載っているものは届出する、載ってないものはしない」と峻別してやろうと思います。仮に林地台帳に漏れがあったら、それは役所の責任、こちらは一切関知しません。
それにしても令和元年とは去年じゃないか。所有者届出制度が義務付けされたのが平成24年。こういうのは台帳を整備してからスタートさせるべきで、順番が逆、苦労させられた7年間を返せ。と言いたいところではありますが、一般論として台帳の整備は歓迎すべきですので、黙ってましょう。
地図について。「おおまかなものでいい」←これが困るんですよね。じゃ、これ↓でいいんですかと。「ダメだ」って言うでしょ?
「林地台帳に附属地図があり、写しを取得できる」
だ・か・ら、その林地台帳を持っている先に届出するんだから、地図を持ってる先に届出するんだから、地図の添付は、い・ら・な・い・で・しょ?と言ってるんです。
どこまでも平行線。
【同日、再追記】
早速、当地の林地台帳の閲覧を申請しようとしたら、申請書に次の記載があり、強引に「了承させられる」ようです。
以下の事項を了承する。
・ 林地台帳情報は、森林の土地の所有権等の権利関係の確定に資するものではないこと。
・ 林地台帳情報は、森林の土地の所有の境界の確定に資するものではないこと。
・ 林地台帳情報は、森林の土地の売買等の証明資料として用いることはできないこと。
・ 林地台帳情報の閲覧により得た情報は、申請書に記載した利用目的以外には利用できないこと。
・ 林地台帳情報の閲覧により得た情報を第三者に提供してはならないこと(法人による申請の場合は、内部利用は可)。
チョー逃げてますね(嗤)そんなに自信のない情報なんかと。
それにしても閲覧の様式はあっても、写し交付の様式はないなー、当地では。林野庁がウソをついているのか、当地の市役所が不備なのか。さらにツッコむ必要があります。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます