錯乱坊の彷徨える日々

フィールドでの出会いに癒しを求めて…

展翅標本の油抜き(本編)

2016年02月06日 | 昆虫・植物
ここに掲載している内容はチェリー自身が個人的に行っている方法であって、こににアップしている薬品や手順を用いたとしても完璧な修復を保証するものではありません。
従いまして、ここにアップした方法を用いたとして「標本が変色した!」とか、または「破損した!」等というクレームは一切受け付けませんのでトライされる方は参考例の一つとして頂き、あくまでも自己責任の下で取り組まれてください。


それでは、本題の油抜きに・・・


えー・・・、この標本はエナメル針を使用していましたのでピンセットを使って標本から抜き取ります。
理由はというとエナメル針の表面をアセトンが腐食させてしまうためで志賀針のようなステンレス針だと抜き取る必要はありません。
また、胸部に油が回っている標本であれば少し力を加えると抜けるのですが、油が出ていない標本だと胸部を崩してしまう恐れがあるので注意が必要です。


油が回ってしまった標本をアセトンに漬け込みますが、場合によっては腹部を落として別々の容器を用いてアセトンに漬けた方が良い場合もあります。
特に腹部の大きな我であったり、油の滲みが酷い場合は腹部を落として漬け込んだ方が油の抜けが良いようです。
※腹部の大きな大型のアゲハやタテハチョウなどの場合は油がアセトンへ移ると、標本から出た油でアセトンが黄色く色づく場合もありますので、これも一つの目安になるかもしれません。


アセトンへ漬け込んだ標本から油がアセトンへ流れ出て脱脂を終えると、この手作り展翅板の登場です。


ピンセットなどを用いて展翅板へと乗せると表面張力の働きで展翅板の天板に張り付きます。
が!アセトンは揮発性が強いので、このまま乾燥させると羽が反り返ります。
そこで乾燥が完全に終えるまでパラフィン紙なとで押さえておきます。


さて、ここからが油を抜く際の一番の問題点なのです。
先ずは、画像をご覧ください。
アセトンに漬け込んで油が抜けたのは良いのですが胸部の背面や腹部の鱗粉がポマードべったりのように寝てしまっています。
こうなると油は抜けても標本は台無しです。
そこで、次なるアイテムの登場です。


以前にも紹介してた、これ!
この黄色の手印で示した一口コック(金具)の一方にエアーホースをつなぎ、観賞魚飼育に使うエアーポンプへと接続します。
後は、そのエアーポンプの差し込みをコンセントにつなぐと、理屈からして赤いノズルの先からエアーが出ますよね。
でも、このエアーの吐出量が多かったりすると標本を壊したりしますので黄色の手印で示したコックを利用して吐出量を調整します。


一口コック(金具)のバルブを調整し吐出量を固定したら赤いノズルを少し離した場所から近づけていく。
ここで吐出量が多いようだと、一口コックのバルブを少し閉めて吐出量を減らします。
そして再び鱗粉が寝てしまっている標本の腹部に近づけると、あら不思議!これまでポマードを塗っていたようにペタ~っとなっていた鱗粉がフワフワになっちゃいます。
※ちなみに、ここは微量の吐出量で十分ですので決してスプレー式のエアーダスターなどを用いない事をお勧めします。


まぁ、仕上がりはこんな感じ・・・
どうですか?
胸背部や腹部の油は綺麗に抜けてるでしょ。


で、この一連の作業を終えると新しい針と差し替えです。
でも・・・
体の中に微量のアセトンが残っている可能性があるのでエナメル針は使わずに志賀のステンレス針に差し替えました。


はい、これで油が滲んでいたオオシモフリスズメの標本を全て復活させることができました。
手間はかかったけど、右列の3頭は黒化した異常型ですから何が何でも復活させないと・・・
そう思いませんか?(笑

でも、今日の記事は長かったなぁ・・・
そして、最後までお付き合い頂き本当にありがとうございました。

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