二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2015明治安田生命J2リーグ第24節 京都vsC大阪

2015-07-19 | 蹴球

京都サンガF.C.○1-0●セレッソ大阪
2'伊藤優汰
(↑こぼれ←宮吉拓実)


[警告・退場]
・京都
45+1'駒井善成(C2)

・C大阪
39'関口訓充(C1)
74'吉野峻光(C1)
83'パブロ(C1)


【全体の印象】
京都はキックオフから積極的に仕掛け、磐瀬のフィードを有田がポストで落として宮吉のシュート、こぼれを伊藤が蹴り込んで電光石火の先制。守備面は出足の早いプレスで相手を追い込むと、セレッソのパスコースも限定され、それをカットして反転攻勢。人とボールがよく動いて何度もセレッソ陣内に迫った。終盤、セレッソは放り込んでスクランブルを起こそうとした力任せの攻撃に出るも、京都守備陣は落ち着いて対応。攻守ともに全員が互いに互いを助けながら走り切り、泥臭くも会心の勝利を手繰り寄せた。


【ちょっと語りたくなった】
■石丸清隆×伊藤優汰
 2013年、伊藤優汰は愛媛に期限付き移籍した。監督は石丸清隆。伊藤は大木監督の下で早くから才能を抜擢されてはいたが、戦術理解と守備面に難があった。石丸監督にとってみれば、古巣で格上チーム(当時は…)から借りられた有望株。伊藤にかける期待は大きかったに違いない。だが伊藤には愛媛の練習場が合わなかったのだろうか、怪我を繰り返すシーズンとなり、出場はわずか6試合98分に終わった。
 そんな伊藤が、石丸監督のホーム緒戦でいきなりゴール奪ってみせたのは運命か、それとも肉まつり(2+9=11)の語呂合わせか。常に勝負に出る“ジャックナイフドリブル”で右サイドをぶち抜いては、スタジアムを沸かせる。かつて守備で気を抜いていた彼の姿は、もうそこにはなかった。伊藤は、愛媛では何も成し遂げられなかったかもしれない。だが、石丸監督の思いを誰よりも体現できるプレーヤーとして、欠かせない男になって帰ってきた。

■石丸清隆×原川力
 原川力は、伊藤と入れ替わるように愛媛に期限付き移籍し、昨年1年間石丸監督の下でプレーした。京都では出番を勝ち取れなかったが、五輪代表プレーヤー。レンタルで10番を背負ったことからもその期待値はわかる。石丸監督は当初原川を1トップ2シャドーの2のところ、前目のMFでの起用を構想していたはずだ。ただし、チーム事情から守備的MFに配置されることが多かった。愛媛での原川は、ひと言でいえば無難。積極性がなく、走力に欠け、守備が良い訳でもなく、果敢に攻撃に出て行く訳でもなく…。石丸監督にすれば、期待外れだったに違いない。
 今季京都に復帰しても、原川は相変わらず「若いのに走らない選手」だった。それが、石丸監督就任で別人のように走るようになった。バランス感覚に長けるゆえに大きくポジションを崩すような無茶な走り方はしないが、適切に相手に寄せ、味方が苦しんでいればそれを助け、セレッソが手も足も出ないようなプレッシングのメインキャストとなった。74分、技術の高いフェイントで反転して抜け出し、吉野峻光がイエローで止めたシーンなど見ても、技術力は高い。元々持ち合わせていたテクニックとバランス感覚に、走力と献身性が加われば原川はもう1段、もう2段上に行けるはずだ。愛媛では1段上へと駆け上がれなかった原川のリベンジが始まる。

■石丸清隆×田森大己
 2011年まで愛媛に在籍した田森大己。当時、石丸清隆は当時は愛媛のユースの監督であり、直接の師弟関係はない。石丸の現役時代は、ボランチ。福岡時代には攻撃的な面も見せていたが、京都時代のプレースタイルは派手さはないが堅実なタイプ。きっちりバランスを取れるいぶし銀のプレイヤーだった(その系譜は斉藤大介に受け継がれたはずだ)。
 田森もまさに「いぶし銀」。大木監督時代には大木サッカーの理解者としての田森が優先していたが、今は地味だけど守備に安定感をもたらすスペシャリスト。危険な箇所を察知しては急行できる守備的戦術眼と、周囲を声で動かせるコーチング能力。地味だけどいい仕事をする。石丸監督が、金南一を外して怪我明けの田森を「ぶっつけ本番」で入れてきたことは、このゲームの勝利そしてこのチームの未来を左右する采配だった。地味だけど。田森と組めば、老成感の漂っていた原川だって若々しくイキイキと走れるのだ。石丸監督は、地味縁の下の力持ちがチームには必要なことを知っているはず。自身がそうだったのだから。

■石丸清隆×有田光希
 有田光希は2012年に神戸から愛媛に期限付き移籍し、キャリアハイの14ゴールを挙げている。石丸清隆はこの年までユースの監督。有田が最も輝いていた時期をよく知っている指導者といえば、バルバリッチか石丸清隆だ。
 有田は昨年京都に加入が、チームは何よりもまずエース大黒将志を優先させるチーム作りをした。有田自身は怪我もあり、2014年は不本意なシーズンに終わったが、決意の完全移籍。監督が代わっても、「大黒が軸」という基本方針が変わらない中、有田の出来ることは限られていた。これまで出番がある時はサイドMFで使われていた有田を、石丸監督は解き放った。石丸監督は、有田がハイボールに強く、前線で時間を稼ぐことができ、チェイシングの労を惜しまないFWであることを誰よりも理解していた。有田が相手を引き付けて潰れ、宮吉拓実がシュートを打ち、伊藤が詰めてセレッソ相手に奪った先制点は、有田の良さが遺憾なく発揮されたシーン。献身的な有田が前線で身体を張ることで、チームとして攻撃が回る。有田は、宮吉とも伊藤とも駒井とも相性がいいのも魅力的だ。


 石丸監督は、元愛媛戦士4人それぞれの“本領”を発揮させ、死に体だったチームに息を吹き返させた。戦術的に見ればさほど難しいことはやっておらず気持ち優先な面もあり、チームはまだまだ未完。未完だけに、甘くはないかもしれない。だけど、フレッシュな未完だからこそ、まだまだ面白いチームに伸びてゆく可能性にあふれている。愛媛といえば未完でしょ?