二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第41節 福岡vs京都

2012-11-04 | 蹴球

アビスパ福岡●0-2○京都サンガF.C.
          23'駒井善成
          46'中村充孝

■原点
 大木武監督が京都サンガを率いて2年。昇格レースクライマックスに差し掛かったこの場面だからこそ、思うことがあるのである。それは、このチームが最も得意とする戦い方とは何だろう?ということ。ある意味、2年間の集大成のような「ラスト2節」には、ぜひとも最大の持ち味を発揮してほしいと思うからだ。
 京都のサッカーはよく「パスサッカー」という言葉で単純化される。だが、果たしてそれは核心を突いているのだろうか?パスを繋ぐことよりももっと大きな特徴を見落としてないだろうか?と。答えは「否」。ボールの奪い方と、奪ってからのスピードこそが、このサッカーの最大の持ち味だと、拙者は思ってやまないのである。奪い方とは、とにかく高い位置からプレスをかける。一度を奪いきれなくても、次の人間が予測して奪う。ボールサイドに人数をかけるのも、全てはこのプレスのため。奪ってからのスピードとは、せっかく奪う時に人数をかけているのだから、そこで細かく小刻みに繋いでいけばテンポが上がる。奪う→攻めるが一体化したこの反転速攻にこそ大木サッカーの原点があるのだと、強く思うのだ。パス交換はそれを具現化する手段にすぎない。
 既にリーグ戦の目標を失い、遅きに失した監督解任まで行ったアビスパ福岡とのこの試合で奪った2ゴールは、この「原点の輝き」が満ち溢れていた。とにかくプレスが速く、1人、2人と連動してボールを奪う。奪ったらそのまま攻撃に転じる。1点目は工藤浩平が奪ったボールのこぼれ球を即座にチョンウヨンが展開し、中山博貴がヒールで繋いで、中村充孝が駒井善成にラストパス。4人を経由して駒井に渡るまでほんの数秒しかかかっていない。もちろん、駒井の落ち着いたドリブル&シュートも見事だが、この奪ってからのスピードにこそ最大の強みがあった。2点目は安藤淳の前向き鋭いインターセプトから。安藤のスルーに工藤が抜け出してシュート、弾かれても中村がしっかり詰めていた。これもスピード感に満ちていた一撃である。
 ざっくりまとめてみると、
 ・人数をかけるプレッシング(奪えなくても次で奪う)
 ・奪ってからのスピード(人が追い越す、沸き出す)
 ・(結果的に)攻撃は最大の防御

この3つの“原点”は、ブレていないと再認識。どんな形でも勝てればいいのだけれど、自分たちの強みを表現して勝てたことは、きっと次への自信に繋がるだろう。


■次節、決勝戦
 2012年、京都サンガは「決勝戦」から始まった。1月1日に天皇杯決勝でFC東京に敗れ、2位。それから11ヶ月、長かったようで短かったリーグ戦の末に、次節再び大一番を迎えることになった。それは、昇格レースの「決勝戦」。勝てば昇格、負ければアウト。そういうトーナメントのファイナルと同等のゲームが何の因果か再び巡ってきたのである。直接戦う相手はヴァンフオーレ甲府だが、別に甲府と決勝を争う訳でないのが悩ましい。だがこの際、湘南以下の他チームの動向はどうでもいいだろう。「試金石」という言葉がある通り、甲府に勝てるか勝てないかは、来シーズンJ1で戦える価値があるチームかそうでないかの試金石。奇しくも大木監督にとって古巣であり、城福監督とは同じ富士通の元同僚。お互いによく特徴を知る選手も多く、2005年にも最終節で当たり甲府の初昇格に繋がったなど本当に因縁も深い。
 甲府と城福監督は、エースダヴィを欠くものの“J1チーム”にふさわしい真っ向勝負をしてくれるだろう。対する京都も「原点」を信じて戦い抜いてくれることだろう。お互いに逃げることなく、強みをぶつけ合って、2012年J2の最高峰の戦いが繰り広げられることを、切に願う。
 こいねがわくば、元日国立で掴みきれなかった「決勝戦」に、美しい虹がかからんことを。



〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …守備機会は少なかったがピンチは好セーブで最後列からチームを鼓舞。
安藤 7.0 …速い出足、鬼気迫るプレス、前への推進力は圧巻。
染谷 6.5 …素晴らしいカバーで堅守を支えるも、肩を負傷し途中交代。
バヤリッツァ 6.5 …高さに滅法強く、完封。ただ、前に出てでかわされる場面も…。
福村 6.5 …守備に徹しカバーリング能力の高さを発揮。前線へのフィードもよかった。
中山 7.0 …中盤の底で相手ボールを絡め取り、ピンチの芽を摘み続けた。
チョンウヨン 6.5 …広い範囲でのボール奪取が目立ち、前への展開も適切。
工藤 6.5 …素晴らしい前線への飛び出しで攻撃を牽引。あとは決定力さえあれば…。
内藤 6.0 …鋭いプレスと一瞬の抜け出しが光る。チャンスを生かしきなかったのは残念。
中村 6.0 …独特のセンスを発揮して1アシスト1得点。強さも目立ったが、ボールロストも。
駒井 6.5 …得点も見事だが、クサビの動きも存在感抜群。ガス欠することなく走りきった。
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酒井 6.5 …急な出番も落ち着いた対応が目立つ。ミスなく完封ミッションを遂行した。
宮吉 ――
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大木監督 6.5 …選手が終始自信あふれるプレーを遂行できたことが、評価の全て。