二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2012 J2第42節 京都vs甲府

2012-11-11 | 蹴球

京都サンガF.C.△0-0△ヴァンフォーレ甲府

■崩せない堅陣
 甲府の城福浩監督は、FC東京時代は理想家という印象が強かったが、この日にみせた甲府のサッカーはリアリスト以外の何者でもなかった。守備陣形は最初から最後まで崩れない。リスクを冒さない。その上で京都がボールホルダーになった瞬間に厳しくチェックを入れる。こうして構築した「堅陣」だが、京都が突破できるチャンスは幾度かあった。しかし時間だけが経過してゆく。こうして京都にとって今シーズンずっとつきまとってきた課題が突きつけられたのだ。すなわち「崩せない相手から何とか1点をもぎ取る」という課題。拙評でも散々ダメ出しをしてきたつもりの「あと1点が奪えない」という最大の課題だ。
 理想家・大木武監督が突き詰めて作り上げたこのチームは、自分たちのペースの流れで点が取れれば倍加速的に魅力的なサッカーを現出する。だけども、どうしても1点欲しい場面、特に相手が堅陣を構築してしまっている時に、一撃必殺のような武器がない。イビチャ・オシムが「エクストラキッカー」と呼んでいたような組織からハミ出すスパイシーな選手がいないのだ。去年までは、いた。相手を崩せない時に単騎突撃しかけて風穴を開けるドゥトラがいた。その存在に一番近いのが原一樹なのだが、原はなぜか点を取れなくなってしまった。序盤はある意味「異物」であった故の独特さが得点に繋がっていたような気もするが、原がチームに溶け込むほどに得点力が失われたのは皮肉なことだ。
 城福甲府が構築したJ2最強の堅陣が、最後の最後まで崩れないことを目の当たりにした時、降り続く雨が急に冷たくなった気がした。熱い理想家よりも、冷たいリアリストが正義なのか…。そんな世知辛い現実が降り注ぐ。ともあれ、課題をクリアできなければ「この世界からの卒業」は叶わない。卒業は追試に委ねられることになった。


■そして追試へ
 追試は記念すべき第1回の昇格プレーオフ。初回に参加できるということは、昇格&降格のプロとしての面目躍如か…(苦笑)。リーグ戦3位となったことで最も有利なアドバンテージを手にしたが、正直なところまったく楽観視できない。なぜかといえば、こういうノックアウト方式では「どんな形であれ勝てばいい」と割り切れるチームが絶対に強いから。大木サンガは、残ってるチームの中では一番内容にこだわってしまうチーム。さらに京都は、アドバンテージであるはずの「引き分け」が極端に少ない。単純化すれば、勝つか負けるかのチーム。相手としてはとてもやりやすいチームなのであるが、大分はビハインドを持っているために「点を取らねばならない」という天の配剤。その最初の1点をめぐる駆け引きが全て。果たしてどちらが最初に積極的に奪いにかかるのだろうか。
 そもそも今の京都は「受け」のサッカーをできないチーム。守ろうとして張れる堅陣も戦術も持ち合わせていない。結局は自ら主導権を奪って相手に襲いかかって後手を踏ませるいつのもサッカーしかないだろう。ただ、どうしても奪えない時に点を奪うための別パターンが是が非でもほしいところ。どうせなら苦手な問題を回答して、追試をクリアしたい。


〈京右衛門的採点〉
水谷 6.5 …序盤のピンチをしのぎ、なんとか無失点完封。枠内被決定機も少なかったが。
安藤 6.5 …前に出れば推進力がチャンスを生んだ。攻守に闘志を見せた。
染谷 6.5 …ボールをよく防ぎ、奪取し、素早く展開。大木サッカーの良き体現者。
バヤリッツァ 5.0 …前に出て奪いきれない→危険プレーの悪い形散見。ヒヤヒヤもの。
福村 6.0 …粘り強くフェルを抑え、奪って前に出る場面も。ただ、攻撃はチクハグ。
中山 5.5 …守備でのカバーが目立つ。ただ前に駆け上がる場面少く持ち味出せず。
チョンウヨン 6.0 …力強いカバーリングに惜しいシュート。見せ場は多かった。
工藤 5.5 …飛び出し不発。ボールによく絡んだが、シュートは枠内を捉えず。
内藤 5.0 …攻守で周囲とあまり噛み合わず、左サイドの活力不足を生んだ。
中村 5.5 …決定機も決められず。球際でのコントロールミスなど単純なミス目立つ。
駒井 5.5 …前半の惜しいヘッドなどもあったが、抑え込まれ基点になれず。
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宮吉 4.5 …裏を狙うも効かず。原投入後左サイドに移ると存在感もなくなった。
 原 5.5 …受け手に出し手、いろいろチャレンジしたが不発。すっかり器用貧乏に。
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大木監督 5.5 …全体の内容は悪くないが、1点を奪い取るための戦略が枯渇。