二条河原の楽書

京都サンガF.C.を中心にJリーグを楽な感じで綴るサッカー忘備録(予定)

2014 J2第19節 熊本vs京都

2014-06-22 | 蹴球

ロアッソ熊本●1-4○京都サンガF.C.
20'澤田崇
          45'大黒将志
          (assist田村亮介)
          55'大黒将志
          (assist山瀬功治)
          65'大黒将志
          (assist山瀬功治)
          78'伊藤優汰
          (assist――)

■代行森下の守備面
 3日前にバドゥ監督が解任となり、森下仁志監督代行が指揮を執った緒戦。注目したのは、ボールを奪いにかかるところ、いわゆる球際の強さ。序盤こそコンパクトにボールサイドに人が集まってプレスをかけていたように見えたが、前半を通じて球際が強かったのは圧倒的に熊本だった。奪われて裏に走り込まれるショートカウンターを怖れて最終ラインはズルズルとラインを下げ、間延びした京都は前監督の時と同様プレスがかからなかった。バイタルエリアにもぽっかりと穴を空け、何度もシュートを浴びた。
 森下代行自身は「攻撃も守備も自分たちから仕掛けるアグレッシブなサッカー」を掲げていたが、守備はアグレッシブではなかった。熊本に決定力があれば早い段階で勝負が決していたかもしれないが、幸運にもフリーキックからの1失点で済んだ(このセットプレーは、相手を褒めるべきもの)。就任からわずか3日で守備組織までは手が回っていなかった感はあるが、もっとラインを高く保てば、去年まで機能していたハイプレスは発揮できるはず。よく言われる大木サッカーの遺産とは、最後まで完成しなかった攻撃面ではなく、網を狭めて絡め取るアグレッシブな守備の方なのだ。

■代行森下の攻撃面
 ただ、森下代行が立て直しに時間のかかる守備よりもまず走力を重視した意図もよくわかった。押しまくられた前半終了間際、プロデビューの田村亮介は味方にボールを預けた後、脇目もふらず左サイドを疾走。工藤浩平はボールを受ける前からこの「走力」を見ており、田村目掛けて長いパスを通した。田村の走力と前に仕掛けるガムシャラさが生んだ同点ゴールは、森下代行の起用意図の通りだっただろう。
 攻撃面では、難しいことは要求しないオーソドックスなものだった。シンプルなボール捌きを続けるうち、2つの縦関係がシンクロし始める。1つは1トッブの大黒将志とトップ下の山瀬功治。後半になると大黒がサイドに逃げた後に山瀬が入り込むシーンが増え、熊本のマークが剥がれ出す。もうひとつは途中投入の伊藤優汰と右サイドバックに下がった駒井善成。伊藤の前に仕掛ける意識とキレ味は出色の出来で、後半になって運動量がガタ落ちした熊本の守備陣を切り裂く。背後から伊藤を操り、伊藤の背後をカバーし続けたのが駒井。2人のコンビネーションは偶然の産物だったかもしれないが、ともあれ伊藤の2点目、3点目、4点目に絡む活躍は、森下代行の掲げた「自分たちから仕掛けるアグレッシブさ」そのものだった。

■代行森下の未来
 試合後「代行森下」コールに応えた森下代行。今後どこまで指揮を執るのかは不明だが、緒戦は上々の出来だった。確かに受けに回った時の守備は不安定で、熊本の決定力不足と後半からの運動量激減という“運”に助けられた部分もあった。がしかし、まずできることを整理して選手が思い切って走るようにまとめた手腕は評価すべきこと。また、味方が能力を発揮しやすいように伊藤の陰になった駒井、中盤で黒子に徹した田森大己、ひたすらに辛抱強く守った酒井隆介などの滅私な働きがあったことも、組織の再構築という意味では見逃せない。
 森下代行はジュビロ磐田で監督業を一度“失敗”している。だけれども、失敗から学んだ者は成長できる。磐田での失敗、コーチとしての失敗、それらと向き合って気づいたものをチーム再建に生かしてほしい。それはきっと指導者としての未来につながっていく。今はそう思うのみでございます。


〈京右衛門的採点〉
オ  6.5 …ハイボールとクロスボールへの強さが際立ち、ピンチを何度も阻止。勇敢だった。
磐瀬 5.5 …丁寧な繋ぎで前線によく進出。守備面は背後を狙われ、競り合いにも負ける。負傷交代。
酒井 5.5 …前半はカウンターを怖れて下がりすぎ。熊本の抜け出しはスピードでカバー。
バヤリッツァ 5.5 …ラフプレーから失点につながるFK献上。前で刈り取るも、半端な位置取りは気になる。
福村 5.5 …前半は高い位置を取って不安定。後半は自重気味で守備のバランスが整えた。
田森 6.0 …前半劣勢の中でもギリギリの所は身体を張った。後半はシンプルな繋ぎも出て安定。
工藤 6.0 …1点目に繋がったフィードなど、全体の動きを把握できていた。終盤でも運動量落ちず。
駒井 6.5 …前半は空回り気味。右SBになってからは献身的に動き、伊藤をサポート。決定機も阻止。
山瀬 6.5 …相手の寄せが早い時間帯は苦しんだが、緩まると大黒を援護射撃の動き冴える。
田村 6.0 …左サイドを疾走し、仕掛けこじ開けてからの1点目アシスト。守備は危うい場面多発。
大黒 7.0 …類い希なるシュート意識で奪った3得点。駆け引きしながら抜け出た3点目はまるでスアレス。
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伊藤 7.0 …前への仕掛けの意識でゲームの流れを激変。シュートも見事。守備意識も高かった。
中山 6.0 …トップ下に入り、相手が疲れたところにドリブル、ミドルのボディブローをかます。
横谷 ――
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森下監督代 6.5 …難しいことは要求せず、選手に力を発揮させた。守備の整備は必要。