老後は京都で !

京都の町中(堺町六角)と東京(青山)を気ままに行き来する二地域居住を実践中。 

「光悦」(松本清張作)(その2)

2008年10月21日 | 江戸時代の京都

<「光悦」(松本清張作)(その1)より、続く>

松本清張さんの、「光悦」、という小説は、

京都の北、鷹ヶ峰の麓の、いわゆる、光悦芸術村に住む、刀剣の鍔、鞘飾りの細工などに携わる鋳金師の、独白というかたちで、

本阿弥光悦その人や、光悦を囲む芸術家たちとの関わりを、描いている。

京都・鷹ヶ峰の麓の一帯が、徳川家康その人から、下賜された、というのは、有名な話だが、

そうした将軍家や、板倉勝重ら幕府要人との関係、烏丸光広や松花堂昭乗など公卿衆との交わり、

角倉素庵や茶屋次郎四郎、尾形宗柏(光琳の祖父)など、京の豪商との交友など、

本阿弥光悦は、彼が生きた、江戸時代初期という時代の、有力なパワーすべてと、強力なパイプを持っていた。

幕府=権力、貴族=権威、豪商=富(金力)、それらすべてとコネクションがあったのだから、鬼に金棒だったろう。

光悦は、そうした力を背景に、俵屋宗達など、周囲の芸術家や芸工たちを、自在に操った、というのだ。

清張は、宗達が描いてきた絵のうち、何枚かを、宗達の前で、平然と破り捨てる、光悦の姿を、描いている。

書など一部を除いて、直接自らの手によらず、

もっぱら、アート・ディレクターとして、世に君臨し、後世に名を残した、本阿弥光悦という人の、日本芸術史上の特異性は、

なるほど、こうした力を背景に、可能であったのか、と、松本清張さんの、「光悦」、という小説は、読む者を納得させる。

なお、この「光悦」、という作品は、松本清張さんが、日本史に名をとどめる芸術家たちを描いた、「小説日本芸譚」という、歴史小説集(新潮文庫)に収録されており、

この小説集には、「光悦」のほか、

「運慶」、「世阿弥」、「千利休」、「雪舟」、「古田織部」、「岩佐又兵衛」、「小堀遠州」、「写楽」、「止利仏師」が収録されている。

小説日本芸譚 (新潮文庫) 小説日本芸譚 (新潮文庫)
価格:¥ 460(税込)
発売日:2008-04

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コメント (2)
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