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秘花     瀬戸内寂聴

2009年03月12日 09時38分33秒 | Books

     秘 花    瀬戸内寂聴

 久し振りの小説。 小説はこのところ敬遠していたのですが 瀬戸内さんの作品という事で手に取りました。瀬戸内さんというのは 以前 源氏物語が 随分面白かったので良いかなと思ったからです。 2月に長野能を観賞しに行った際、入口で能に関する本が並べられていてその中で私のような初心者の入門には これが良いかなと思ったのです。

 秘花 この言葉は すぐに 世阿弥の父親 観阿弥の言葉ですね。能の大成者 観阿弥、世阿弥のことをもう少し知っておきたかったのですが。

 室町時代 当時14世紀ですが、様々な申楽、田楽、の一座というか流派がある中、観阿弥とその息子世阿弥が 能の真髄を極め大成したとされる。そのきっかけは 当時の最高権力者足利義満の寵愛を世阿弥が受けた事がそれだと。その寵愛とは 義満の若い男の子への男色であった。 やがて男色の相手が 世阿弥から他へ移り行くにつれて、観世座の人気にも次第に翳りが見え始めてくる。

 突然の観阿弥の死、によりその父の言葉を編纂したものが 有名な花伝書といわれる奥義書である。ところがこの書は世阿弥の息子ではなく世阿弥の弟の息子にあげてしまう。その時は世阿弥は 観世座は自分の息子が後継してゆくと思っていたのだが、しかし、世間の人気は自分の息子よりもさきの甥の音阿弥に移ってしまっていた。更に後継と思っていた長男は出先で病死し、次男は観世座の凋落を悲観し、その将来を見限り出家してしまう。そのうち政治の権力者が移り観世座を嫌う将軍義教により72歳という高齢にも拘らず佐渡へと島流しにされる。

 小説ではこの佐渡において世阿弥は亡くなるとなっているが、史実は78歳で放免となり、京に戻りおそらく妻と二人で余生を送りそして80歳で亡くなっている。

 以下 抜粋です

 命には終わりあり。   能には果てあるべからず。

 秘すれば花なり、秘せずは花なるべからず。

 恋は忍ぶ恋こそ最高のもの、二人だけの秘め事だからこそ味が濃くなる。公認された恋など、恋とは呼べぬ。味わいのあるのは禁断の恋と片恋だ。

 秘伝に曰く。そもそも芸能とは、諸人の心を和らげて、上下の感をなさん事、寿福増長の基、かれい延年の方なるべし。

 能という芸は、一般大衆に愛され支持されることを基礎として座が成り立っている。 能を演ずる立場としては、つねに初心のころの新鮮な気分をわすれないように。

 能に仕立てた『葵上』では、六条御息女が嫉妬の鬼になり、おどろおどろしい般若の面をつける。口が耳まで裂け、角を生やした、まさに怨念の凝縮したようなすさまじい鬼面である。心が鬼になる人間の哀切さこそ、能の大きな主題になりえる。


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