根に帰る落葉は 南木 佳士
帯に「書くために生きてきたのではなく、生きる揺らぎを書いてきた。」 南木さんは、内科医師であり、40年に渡り、多くの患者の死に立ち会ってきた。医師として、その死が単なる客観的な出来事ではなく、それぞれに様々な思いを抱きながら見送ってきたのであろう。それが、ストレスとなりうつ病を発症することになった。
この時に南木さんの気持ちを整理し、また気持ちを外に向けてくれたのが 文筆 であったのだろう。
「言葉が、体が、しみじみ深呼吸する。」とあるが、どの作品を見ても実に起伏の少ない、まあ地味な流れの作品ばかりである。しかし、そこに地道な生活のこもごもが語られて、読み手に安心感と納得感を覚えさせてくれるのだろう。
「落葉帰根。 おまえも、もう根に帰ったらどうだい、と葉っぱたちに諭されて なんだかうれしくなった。」
ここに、多くの死を、人生の最後を看取ってきたうえでの、南木さんの人生観、死生観が表れている。生への執着はなく、自然と共に、また先祖への帰着も受け入れやすいものである。
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