人生は、だましだまし 田辺 聖子
以前 NHKの朝ドラで田辺聖子さん原作の“いも たこ なんきん”という番組があったが、その時は毎日見逃がさずにしていた。私は 大阪育ちなので、この大阪弁の世界が懐かしくて居心地が良かったのだ。 さて始めてこの田辺聖子さんの本を始めて手にして、やはり田辺ワールドというような雰囲気を十分楽しませてもらった。
この本は、田辺さんが自分の人生観を箴言として解説、まとめている。箴言というと堅苦しく聞こえるが、そこは田辺ワールドで、今まで関東の世界に移り住んで頭が固くなっていたのがいっぺんにリラックスした。
そのいくつかを紹介します。
“好色な人は男も女も、人生、楽しそうにいきている。”どうですか。なるほどと思うでしょう。
“男は犬に似ている。場所ふさぎでカサ高い割りに、甘えたで、かまってやらないと淋しがってシャックリをしよる。”これもどうです、頷けませんか。
“生きていることがすき、という男は、いい男じゃないですか。”
“男はな、大体が、鈍くさい、未練田らしい、往生際のわるいもんなんじゃ!” 女に振られたときはまさにこの通り。私は何度あったことやら。息子達も同感やろう。
“また電話するわぁ、というのは最高の別れのメッセージである。”
“お世辞いい合ったり、おたがいにそれとなし自慢しあうのが人間のたのしみや。” なるほどなぁ “卑下もせえへんし、威張りもせえへん、というのは、これじょうひんやなあ。せやけど、そんな奴折ったら、飽きるやろ。”
人間のプロ “自分の家族や友人、自分の手に合うほどの仕事を愛し、大切にする。目立たず、人にまぎれ、世にまみれよ ” 小年よ、大志を抱けという言葉があるが、われはもうアラ還。自分の人物のスケールも諦めがついた。余生はこの田辺聖子さんの言葉で随分癒される気がする。
最後に “ま、人生はだましだまし保ってゆくもの、ごちゃごちゃしているうちに、持ち時間、終わるよ。” 78歳時の田辺聖子さんの達観でしょう。