作者のジルボルトテイラーさんは 37歳の時に 脳動静脈奇形からの出血で倒れた。それまでは神経解剖学者として ハーバード大学、インディアナ医科大学などで活躍されており、まさにその解剖学者が脳卒中を患った訳である。 しかし、ここは 彼女の医者としての好奇心というか、矜持を持って自分の疾患の状況を分析してゆく、その緊張感が読みながらひしひしと伝わってくる。
彼女の言葉で 自分は以前とは違う人間に生まれ変わったと。けれども日々のリハビリの努力で持って、再び社会にカムバックし活躍できるようになったと。
彼女がラッキーだったところもあっただろう。
しかし彼女が云いたいのは、それではない。回復までに必要だった40のこと と記したなかでいくつかピックアップした。
●あなたの身振りや顔の表情が私に伝わっている事を知っていて
●私に直接話して。わたしのことについて他の人と話さないで
●脳は常に学び続けることが出来ると、固く信じて
●励まして欲しい、例え20年掛かろうとも、完全に回復するのだと 期待を持たせて欲しい。
●小さな成功を全て讃えて下さい。それが私を勇気付けてくれます。
●現在の私をそのまま愛して。今では前とは違う脳を持っているのです。
その他に
回復への挑戦に立ち向かう勇気を与えてくれたのは、紛れもなく、こうした無条件の愛と支援であったと。
会話する事はもちろん出来ませんが、訪ねてきた人たちがちょっとのあいだ部屋に入ってきて、私の手を取って優しくゆっくりと、かれらがどんなに私の回復力を信じているかを伝えてくれると、とっても嬉しい。逆に、ものすごく心配よ、という負のエネルギーを発散しながら入ってくる人に対応するのは、とても辛い。与えてくれるエネルギーがどんな種類のもんなのか、責任を持って下さい。極端に神経質で、心配しているか怒ったように見える人たちは、治療には逆効果なのです。
私がすごく大切だと思ったのは、感情が体にどのような影響を与えるかということ。喜びというものは、体の中の感覚だったのです。
最後に 深い心の平和というものは、いつでも、誰でも掴む事ができるという智恵を授かりました。涅槃(ニルヴァーナ)の体験は右脳の意識の中に存在し、どんな瞬間でも、脳のその回路につなぐ事が出来るはずなのです。
彼女は左脳を患い、左脳からの干渉から開放されたのです。すると右脳による涅槃の状況を体験できた。 しかし、やがて脳細胞が新たなネットワークを再構築するにつれ、言葉や運動機能など回復し左脳も再び活動できるようになった。 人間の回復力はすごいものがあるのだなと感心した。 我も諦めてはいけないな。