大黒さんの金魚鉢

黒金町の住人の独り言は“One”

One voice , one mission , one family

社会の底が抜ける日

2015年06月15日 | 労働者福祉

私の「語り部卒塾プレゼン」テーマは、「労働運動と労働者自主福祉運動の関係性」でした。
1949年、「福祉はひとつ」を合言葉に36の団体・組織が集まり、今の労福協が誕生しました。
先人たちは終戦直後の混乱した社会を、労働者が「助け合い」「支え合う」ことで生き抜いてきました。
そして戦後70年、一見すると豊かな社会になりました。

1年前、静岡県内で10の団体が集まって「フードバンクふじのくに」が誕生しました。
ここには労働団体である「連合静岡」と労働者自主福祉運動を推進する立場の「県労福協」も参画し、中心的な活動を担うこととなります。
活動当初は「この豊かな時代に食事に困るような県民がいるのか?」という率直な疑問が寄せられました。
しかし世の中は私たちが想像する以上に傷んでいました。
その痛みは今後さらに拡大していくであろう実態も目にしました。

なぜこういう社会になったのかをおさらいしてみます。
バブル崩壊の1991年と2011年との比較からみます。
年収200万以下の数は、710万人→1069万人に増加しています。
国民年金納付率は、85.7%→58.6%と大きく減少しています。
未納者は国民年金保険料(1万5千円)を支払うのが経済的に困難(64.5%→74.1%)だとアンケートに答えています。
すなわち老後の年金が受け取れない人々の数は年々大きくなっていくということです。

本来であれば雇用労働者は厚生年金保険に加入しているはずですが、なぜかワーキングプアの多くは国民年金加入者です。
非正規労働者の増加や儲け主義の経営者の増加でこうなりました。
(厚生年金は保険料の半分を事業主が負担する制度)
厚生年金受給者の平均年金月額15万円に対し、国民年金受給者は5万5千円です。
この国民年金給付額では生活は困難ですが、本来的には自営業者のための制度であり、不足分は貯蓄や生涯現役で賄うという制度設計です。

これからも年金未加入者が増加していくとどうなるでしょうか。
生活保護の増加です。
現在、生活保護の4分の3は高齢者と障がい者です。
生活保護世帯は60万世帯→150万世帯、保護者数は101万人→206万人へと大きく増加しています。
社会の底が抜けていく音が聞こえそうです。

「フードバンクふじのくに」は私たちにたくさんの気づきを与えてくれています。
気づけば人は動き出します。
社会心理学者のポール・ピフは、「人は裕福になるにつれ、思いやりが低下する」という社会実験を行いました。
しかし同時にポール・ピフは、「人は気づけば動き出し、思いやりを取り戻す」という社会実験も行いました。
「フードバンクふじのくに」は、私たちの壮大な社会実験かもしれません。